食品残さリサイクル飼料化 加熱新基準でセミナー 中央畜産会など
2021年02月23日
中央畜産会と全国食品リサイクル連合会は19日、食品残さでつくるエコフィードの製造業者や養豚農家に向けて「食品リサイクル飼料化セミナー」をオンラインで開いた。4月から加熱の新基準が施行されるのを前に、手続き面での注意点や、栄養成分変化などについて農水省や有識者らが説明した。
新基準では、生肉などが混入している可能性があるものについて「攪拌(かくはん)しながら90度、60分以上かこれと同等以上の加熱処理」が必要となる。……
新基準では、生肉などが混入している可能性があるものについて「攪拌(かくはん)しながら90度、60分以上かこれと同等以上の加熱処理」が必要となる。……
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農地所有法人要件 無理筋の緩和を許すな
農地所有適格法人の議決権要件緩和の是非を巡る規制改革推進会議での検討は、期限まで1カ月余りとなった。同会議が意見を聞いた農業関連法人からは、法人買収や農地転用へ懸念が指摘された。同会議には、株式上場の解禁を視野に要件緩和に誘導しようとの思惑が透けて見えるが、無理筋である。
推進会議の検討課題は、農業法人が円滑に資金を調達する方策である。政府が規制改革実施計画に盛り込み、今年度中に検討し結論を出すとした。
同適格法人の要件について推進会議では①2分の1未満としている農業関係者以外の議決権制限の緩和②株式上場の解禁──の是非が焦点化。農外出資を拡大しやすくするのが狙いだ。これらを認めれば一般企業が経営を支配し、農地を事実上取得できるのと同じになる。
農水省の調査では、農業法人の資金調達の主体は融資だった。同省は、出資による資金調達の課題として、農外議決権を2分の1未満まで認めていることと議決権のない株式の活用が知られていないことを挙げる。これは、現行制度の下でも出資を増やせることを示している。
推進会議の農林水産ワーキンググループ(WG)が昨年12月に行った農業関連法人3社からの意見聴取でも、農業は制度資金が充実し、融資で資金を調達しやすいとの見方が強かった。一方、議決権要件などを緩和すると同適格法人が買収され農地が不正転用されるケースが出てくる可能性とその対策の必要性や、外国資本に支配されれば食料安全保障上問題になることなどについて指摘があった。
WGの委員からも質問の形で、敵対的買収で外国企業に買われることや、企業撤退後の農地荒廃への懸念が示された。
しかしWG座長の佐久間総一郎日本製鉄顧問は、意見聴取後に「選択肢として、上場していく道をもう少し整備することが重要」とまとめた。親会議の推進会議でも「(制度資金は)補助金。これは長続きしない、競争力がつかない」と、出資拡大方策へのこだわりを見せた。
国家戦略特区の兵庫県養父市で認めている企業の農地取得特例の全国展開を関係閣僚の慎重論や与党の反対論を無視し、特区諮問会議の民間議員がごり押ししようとしたことと重なる。
われわれは、農家や、農業者主導の同適格法人といった地域に根差した農業経営に農地所有は限るべきだと主張してきた。農地は地域の貴重な資源であり、農地や水の利用調整をはじめ地域と調和し、農業振興や、自らの暮らしの場である農村の維持・活性化への役割発揮が所有者には求められるからだ。
同適格法人の議決権要件などの緩和は、一般企業による経営支配に加え、農地の資産価値に基づく投機の対象化や、実質的経営者が分からなくなることなどにつながる恐れがある。資金調達の方策は、法人の要件とは分けて論議すべきである。
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2021年02月24日
米5カ月連続下落 15年9月以来の下げ幅 消費者物価
総務省が19日発表した2021年1月の全国消費者物価指数(15年=100)によると、食料品は前年同月比で0・1%下落し、指数は105・5だった。3カ月連続の下落。米類は過剰感から2・2%下落した。5カ月連続の下落で、下落幅は15年9月以来の大きさだった。
生鮮野菜は3・6%上昇と、3カ月ぶりにプラスとなった。……
2021年02月20日
きょうは茂吉忌
きょうは茂吉忌。医者にしてわが国を代表する歌人である。斎藤茂吉の代表作は「死にたまふ母」の連作であろう▼〈みちのくの母のいのちを一目見ん一目みんとぞただにいそげる〉。山形県の農家の三男に生まれ、早くして養子に出された。東京で精神科医として名を成したが、母への思慕はやみ難い。母危篤の知らせを受け詠んだ歌である。死の床にある母への絶唱歌は〈死に近き母に添寢のしんしんと遠田のかはづ天に聞ゆる〉。カエルの鳴き声は茂吉の慟哭(どうこく)である▼コロナ禍で、親の死に目にも会えない人の心中はいかばかりか。茂吉は若い頃、スペイン風邪にかかった。発熱や肺炎に加え、せきや倦怠(けんたい)感の後遺症に悩まされた。同郷の歌人に宛てた手紙は医者らしい予防策をつづる。「直接病人に近づかざること」に始まり、マスク着用、塩水うがいなどを列挙。熱が出たら絶対安静とある▼茂吉のもう一つの顔が旺盛な食欲。作家の嵐山光三郎さんは「もの食う歌人」と称した。大のウナギ好きで知られた。病院の焼失、夫婦関係など私生活では苦労が絶えなかった。嵐山さんは、食べることを生きる力に変えたと書く▼〈あたたかき飯(いい)くふことをたのしみて今しばらくは生きざらめやも〉。食べて生きて歌に昇華させた70年の人生だった。
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2021年02月25日
輸入食品 分けて販売 コロナ検出相次ぎ対策 中国
中国では、輸入食品を国産と分けて保管・販売する卸売市場やスーパーが増えている。中南米産やアジア産の冷凍食品の搬送資材や包装資材から、新型コロナウイルスが相次いで検出され、感染防止策として国家市場監督管理総局(SAMR)が呼び掛けているためだ。
海関(税関)総局の公表によると、1月14日現在、全国から129万5692件のサンプルを抽出、調査したところ、47件から新型コロナウイルスの陽性反応が出た。昨年11月の13件から3倍以上も増えた計算だ。
この動向を踏まえ、SAMRは輸入食品の管理を強化するテレビ会議を開き、食品輸入業者や農産物卸売市場、ショッピングモール、スーパー、生鮮食品の電子商取引などに対し、全面的な調査を行う必要性を強調した。感染防止策として、輸入食品に対し、入荷の専用ルートや保管場所、販売ブースの設置を呼び掛けている。
北京の農産物卸売市場の関係者は「これまで同じ品目は、仕入れ先に関係なく、同じブースに並んでいた。しかし現在は、輸入物は専用ブースで販売することになった。国産をPRする良いチャンスではないか」とみている。
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2021年02月21日

豪雪地帯の除雪ボランティア コロナ乗り越え作業 新潟県「スコップ」
日本海側を中心に記録的な豪雪に見舞われている日本列島。例年なら全国から多くの除雪ボランティアが駆け付けるが、今冬は新型コロナウイルス禍を受け、思うように動けない状況が続く。「除雪に来てくれるのは本当にありがたいが、一方で感染の不安もある」と、受け入れ側もジレンマを抱える中、都市と農村をつなぐ善意の活動をつなげようと奮闘する地区もある。(雫石征太郎)
もっと活動したいが…
新潟県糸魚川市の市街地から山あいに沿って車を30分ほど走らせると、次第に雪景色が広がる。23戸が暮らす柵口(ませぐち)集落に着く頃には、2メートル超の雪の壁が道路両脇にそびえ立つ。周辺に温泉やスキー場があり、場所によっては積雪3メートルを超える。
近年は高齢化が進んで住民だけで除雪するのは難しく、雪で倒壊する空き家も増えてきたという。
山梨県の石川宏さん(67)ら除雪ボランティア「スコップ」のメンバーは22日、集落の高齢者宅周辺の除雪作業に汗を流した。感染対策を徹底し、マスクを着けながらの作業となった。「息苦しいけど、困っている人の助けになればうれしい」。石川さんらは、木造家屋におしかかる雪をスノーダンプやスコップを使って手際よく片付けていった。
新潟県が事務局を務める「スコップ」は、除雪や都市との交流拡大などを目的に、1998年度から活動を始めた。登録者数は2021年1月時点で2134人に上り、6割が県外在住だ。特に東京都など関東圏が半数を占める。記録的少雪だった19年度の活動実績はないが、18年度は6市町(7地域)で10回行い、延べ174人が参加した。
大雪となった20年度はコロナ禍を受けほとんどが受け入れを中止し、柵口集落が初の活動となった。緊急事態宣言が発令された地域や感染者が多い地域のメンバーは対象外とし、石川さんを含め県内外の11人が参加した。県地域政策課の安藤由香主事は「毎年受け入れている地域もあり、今年も除雪の需要はあるはず。ボランティアをきっかけに土地のファンになったという都市住民もいるだけに残念だ」と話す。
「スコップ」は地域住民との交流も活動の一環と位置付ける。しかし柵口集落では“密”になる懇親会は行わず、メンバーは、前日の21日に屋外で開かれる地域のイベント「かまくら祭り」に参加。道路脇の雪の壁に穴を開けて明かりをともす「キャンドルロード」の設営も手伝い、イベントに花を添えた。
同集落区長を務め、水稲を2ヘクタールで栽培する土田茂さん(64)は「スコップに来てもらったのは3回目で、ボランティアの力は本当にありがたい。コロナ対策など慣れない部分はあったが、受け入れることができてほっとしている」と、安堵(あんど)の表情を見せた。
高齢化深刻 交流事業は不可欠
国土交通省によると、糸魚川市を含む全国201市町村が特別豪雪地帯に指定されている。
同地帯の人口を1965年と2015年で比べた場合、32・8%減少している(全国では同28・1%増)。高齢化率も33・1%(2015年)と右肩上がりで、全国の26・6%に比べ深刻だ。
新潟県内の除雪作業中の死傷者は、今冬は242人に上る(22日現在)。うち65歳以上が146人と半数以上を占めた。土田さんは「除雪は高齢者にとって負担が大きいが、過疎化で作業の担い手は減る一方」と指摘。地域のにぎわいのためにも、コロナ禍が終息するよう願っている。
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2021年02月25日
営農の新着記事

東海桜 挿し木で生産期間短縮 岐阜県立国際園芸アカデミー2年 西村さん
岐阜県可児市の県立国際園芸アカデミー花き生産コース2年生、西村莉穂さんが、鉢植えで開花期が早い東海桜を挿し木し、生産期間を大幅に短縮させることに成功した。桜は実生苗や接ぎ木苗が使われることが多く、商品化までに数年かかる。ソメイヨシノより……
2021年02月26日
営農技術アイデア大賞 黒壁さん(北海道)に栄冠
日本農業新聞は24日、「営農技術アイデア大賞2020」の審査会をオンラインで開き、大賞に北海道新篠津村の黒壁聡さん(64)が考案した、水稲育苗箱の運搬器具「はこらく」を選んだ。自作した金属の枠で3、4枚重ねた育苗箱を挟み込み、まとめて持ち運ぶ仕組み。機械化できていなかった育苗箱の運搬に、効率化の道を開いた点が評価された。
黒壁さんは水稲農家でシーズンには約8000枚の育苗箱を使う。……
2021年02月25日

20年度全国農大校プロジェクト 大臣賞に田中さん(大阪)
全国農業大学校協議会は24日、2020年度全国農業大学校等プロジェクト発表会・意見発表会の結果を発表した。最高位の農水大臣賞には、大阪府立環境農林水産総合研究所農業大学校2年の田中麻綾さんの「『高齢者生きがいづくり』につながる、高齢者によるぶどう栽培方法の検討」が輝いた。
田中さんは生きがいを持った高齢者が減少する現代で花蕾(からい)から大きな房ができる喜びは心を豊かにするきっかけになると考えた。……
2021年02月25日
ジャガイモシロシスト 抵抗性品種「フリア」の効果確認 北海道の産地 21年度に本格導入へ 農研機構
ジャガイモの品種「フリア」が、難防除害虫のジャガイモシロシストセンチュウの土中密度を大幅に減らせることを、農研機構・北海道農業研究センターが確認した。2015年に同線虫が見つかり、今年2月時点でも道内468ヘクタールで発生している。産地のJAでは効果的な対策として21年度から本格導入を見込む他、同センターはさらに経済的に有望な品種開発を目指す。
2021年02月24日

ビールかすで大幅増収 黒大豆 最大5割 岡山市の若手農家グループ
岡山市の若手農業者クラブ「アグリドリームSETO」は、黒大豆の栽培でビールかすを施すと、慣行栽培に比べて10アール当たりの収量が最大で5割増えることを確かめた。化学肥料との組み合わせで生育が早まり、大粒の割合も増えた。土壌の養分バランスの改善で課題だった連作障害の対策にも期待する。
同クラブは同市東区瀬戸町の若手11人で構成する。地元のキリンビール岡山工場から出るビールかすを土づくりに活用し、2020年産に市の助成を受けて試験した。……
2021年02月24日

「南農ナシ6号」育成 病害に強く高糖度 長野県
長野県は、中生品種の梨「南農ナシ6号」を育成した。黒斑病や黒星病といった病害に強い。高糖度で果汁が多く、すっきりとした甘味としゃきしゃきした食感が特徴。県では県オリジナル品種「南水」につなぐリレー品種として期待を寄せる。
県南信農業試験場が育成した。……
2021年02月24日
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2021年02月23日

酪農に欠かせぬパートナー ヘルパー確保へ環境改善 北海道で運動 全組合に就業規則整備
北海道で酪農ヘルパーが安心して働けるよう、労務管理の改善を呼び掛ける運動がスタートした。道内86の全ての酪農ヘルパー利用組合で就業規則を整備。酪農家の働き方改革や規模拡大に伴う人手不足対策につなげる。都府県でも酪農ヘルパーが逼迫(ひっぱく)する中、酪農ヘルパー全国協会は運動は全国のモデルになるとみている。(尾原浩子)
北海道酪農ヘルパー事業推進協議会が、職場のルールを明確にするため就業規則整備率100%運動を始めた。就業規則が既にある場合は、雇用実態や働き方改革に対応しているかの点検を実施。ない場合は就業規則を作成する。新型コロナウイルス禍でヘルパーの確保が難しくなったことを踏まえ、環境整備に乗り出した。
協議会によると、2019年8月時点で道内の酪農ヘルパーは832人。必要数に比べ156人足りない。働き方改革関連法のうち、有給休暇5日以上の取得は酪農ヘルパー利用組合にも適用されることも踏まえ、労働環境を改善してヘルパーの確保や定着につなげたい考えだ。
道内では酪農家1戸当たり年間平均23日、酪農ヘルパーを利用する。稲作や畑作などと比べ酪農家の労働時間は2倍以上で、酪農家の後継者対策にも酪農ヘルパーは欠かせない存在だ。
農水省は来年度、新たに待遇改善に取り組む組合を支援する「酪農経営安定化支援ヘルパー事業」を始める。協議会は事業を活用し、「酪農ヘルパーを職業の一つとしてPRしていく。地域を挙げて環境改善を進めたい」(事務局のJA北海道中央会)とする。
酪農ヘルパーの不足は道内だけでなく全国的な課題だ。酪農ヘルパー全国協会によると、ヘルパーは必要な人数に比べて2割程度足りない。就業規則の整備を呼び掛けているが、地域を挙げて整備を目指す運動は先進的という。
JAオホーツクはまなすが事務局の「酪農ヘルパー組合はまなす」は、就業規則を整備し、ボーナスなど給与体系も改善してきた。関東での就農フェアやハローワークなどで酪農ヘルパーを募集。現在、13人が100戸の酪農家で作業を担う。
20年ほど前は、冠婚葬祭や子どもの行事などで搾乳ができない場合、近所の酪農家の応援などで対応した。しかし、近年は1戸当たりの経営規模が拡大し、手伝う余裕がなくなってきている。
管内の滝上町で60頭を飼育する同組合の長屋辰之介組合長は「酪農家の一人一人が意識改革し、作業員ではなく、パートナーなんだと感謝するような受け入れをしたい」と話す。希望すれば就農も支援。「就農者や酪農ヘルパーがいると、次の移住者につながり好循環ができる」と見据える。
3年前から働き、大阪府八尾市から移住した酪農ヘルパーの瓦渚紗さん(23)は「就業規則が整備されていると安心して働ける。働く上では酪農家との意思疎通が一番大切。やりがいがある仕事だと、都会の人にも知ってほしい」と話す。
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2021年02月22日

白未熟粒米の発生予測 早期対策へ 花を解析、 特許出願 新潟県農総研
新潟県農業総合研究所は、採取した稲の花のサンプルから白未熟粒の発生率が予想できる診断技術を開発した。見た目では分かりづらい高温障害のリスクをいち早く判断し、品質が低下する前に水管理などの対策実施につなげる狙い。診断技術は現在、特許出願中だ。……
2021年02月21日
和子牛 5年ぶり60万円台 枝肉下落が影響 20年
2020年に全国の家畜市場で取引された和牛子牛の平均価格が前年を1割下回り、5年ぶりに1頭60万円台となったことが、日本農業新聞の調べで分かった。新型コロナウイルス禍による枝肉価格の下落が影響した。現在は再び上昇し1頭80万円に迫るが、価格の乱高下は高齢の繁殖農家の離農や肥育農家の経営圧迫につながりかねない。価格安定に向けた対策が改めて求められている。
農畜産業振興機構のデータを基に本紙が調べた。20年に全国103市場で取引された黒毛和種の子牛は前年比0・6%減の31万228頭で、平均価格は同12%安の67万3808円だった。
新型コロナ禍による枝肉価格の低迷で、購買者である肥育農家の資金繰りが悪化し、子牛価格も5月に前年比2割安の約59万円に下落。6月以降も10月まで60万円台での取引が続いた。再生産が難しい価格ではないが、急激な下落で「高齢繁殖農家が離農するきっかけになりかねない」(市場関係者)との声も多かった。
枝肉相場が回復し、子牛価格も現在は前年を上回る高値で推移しているが、今後の動向は楽観視できない状況だ。「景気悪化で消費者の節約志向が強まり、年明け以降スーパー向けの和牛の販売に苦戦している」(大手食肉メーカー)との声もあり、和牛の消費環境には不透明感が漂う。
肥育農家の経営が悪化し、再び子牛価格が大幅に下がれば、離農の加速による生産基盤の弱体化につながる。全国肉牛事業協同組合は「和牛の消費拡大と、子牛の価格下落時に繁殖農家をしっかり支えられる両輪の対策が重要」と提起する。
[解説] 価格安定へ基盤強化を
2020年の子牛価格の下落は、肥育経営の苦境の表れだ。コロナ禍による和牛の販売環境の急激な悪化に、高値で導入した牛の出荷が重なり、多くの生産者が赤字に陥った。
今後、肥育農家の資金繰り対策として措置されていた肉用牛肥育経営安定交付金制度(牛マルキン)の生産者負担金の納付や、コロナ禍で借り入れた資金の返済などが始まれば、さらに厳しくなる。肥育農家の経営悪化は子牛価格に直結する。両者が共存できる安定した子牛価格の実現へ対策を急ぐべきだ。
子牛価格はこれまで、頭数不足による高値が続いてきた。輸出やインバウンド(訪日外国人)需要で枝肉相場が高かったことで、肥育農家も高値の子牛を買い支えることができた。だが、コロナ禍で様相が変わった。和牛の外食需要は低迷が長期化している。国内の家庭消費は活発化しているが、安価な輸入牛肉との競合は激しい。
再生産を可能にしつつ消費者が求める価格で安定的に和牛を供給していくためには、基盤となる子牛の安定供給が欠かせない。繁殖農家の戸数はこの5年で2割弱減ったが、畜産クラスター事業などを活用した増頭が進み、繁殖雌牛の数は増加傾向にある。この流れを止めないことを前提に、家庭消費の高まりなど、消費の変化に合わせた和牛生産の在り方を、国、業界が一体となって考えていく時だ。
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2021年02月20日