米国の大寒波で必需品不足 燃料・食 頼れるのは? 特別編集委員 山田優

 米国南部が100年ぶりという寒波に襲われている。米メディアによると、被害の中心地テキサス州では、400万人以上が停電の中、猛烈な寒さや吹雪にさらされた。水道管は破裂。物流や交通は乱れ、小売り店頭から食料や水などの日用品が消えて混乱が続く。

 農業被害も出ている。以前、取材で訪ねた同州ダラス近郊の「WAGYU」繁殖農家に連絡すると、牛が雪の中に閉じ込められ、出産直後の子牛が凍死の瀬戸際に追い込まれていた。火で雪を溶かし、飲み水を確保しつつ牧場の片隅までくまなく回り、大切な子牛の保護に追われていると話した。

 同州に数カ月間住んでいたことがある。夏の激しい暑さの代わりに、冬の寒さはそれほどでもない。家畜は全て放牧され、舎飼いがなかったことが被害を拡大した。地球温暖化が記録破りの寒波をもたらしたと米メディアは解説する。

 住民の命や財産が脅かされ、同州のアボット知事は先週の水曜日、発電燃料となる天然ガスの州外移送を停止し、地元発電所に優先して回すことを命じた。同州は天然ガスや石油が豊富。普段は地下資源ビジネスで潤っているものの、いざとなれば身内が最優先だ。

 あおりを受けたのが国境線を挟んだメキシコだ。ただでさえ寒波で天然ガス輸入が混乱していたところに、テキサス州の輸出規制が追い打ちを掛けた。停電で主要産業の自動車工場の操業が止まるなど、メキシコ経済への打撃も広がった。

 木曜日に記者会見したメキシコのロペスオブラドール大統領の口調は思ったより穏やかだった。

 「寒さに震えるテキサス州の人たちの事情はよく分かる。私たちは報復なんかしない」と静かに語り掛けた。国民には「夜の明かりを減らしてほしい」などと冷静に節電を求めた。

 左派に属する同大統領は、以前から地下資源産業の行き過ぎた規制緩和が国民生活を脅かすとして、長く続いた外資優先の政策転換を主張してきた。非常時に相手国が自分本位の行動をするのは想定の範囲だったのだろう。国民の不満をあおるのではなく、理詰めでエネルギー部門の安全保障の大切さを説明しようとする姿勢には好感が持てた。

 関係の結び付きが強い隣国であっても、生活必需品不足が深刻になれば、「持てる国」は全く遠慮なく自分たちの事情を優先する。天然ガスであれ、ワクチンであれ、マスクであれ、そして食料であれ、本当に不足した時に頼りになるのは誰か。地球規模で相次ぐ気象災害や感染症の拡大が止まらない中、私たちはよく考える必要がある。

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