国連食料サミット 国民合意の日本提案に

 国連食料システムサミットが9月、米国ニューヨークで開かれる。新型コロナウイルス禍で脆弱(ぜいじゃく)性を露呈した食料の生産供給網の再構築や、気候変動対応などがメインテーマになる。今後の貿易ルールに影響を及ぼすことが考えられる。日本は国民合意の提案を策定し、積極的に関与すべきだ。

 同サミットは持続可能な開発目標(SDGs)を2030年までに達成するための「行動の10年」の一環。グテレス国連事務総長が主催する。各国の首脳や閣僚、有識者、科学者、市民代表らが参加する。

 SDGsには17の目標があるが、「貧国をなくす」と「飢餓の撲滅」はコロナ禍で達成が危ぶまれる状況だ。飢餓人口は増加に転じた。国連は同サミットを「全てのSDGsを達成するための世界の旅の分岐点になる」と協力を呼び掛ける。

 主な課題は①量・質両面からの食料安全保障②食品ロスの削減など食料消費の持続可能性③環境に調和した農業生産の推進④農村地域の収入確保⑤食料供給システムの強靭(きょうじん)化──だ。それぞれでゲームチェンジャー(状況を変える突破口)となる提案を各国に求めている。日本は現在、農水省が「みどりの食料システム戦略」の取りまとめ作業を進める。夏にローマで開かれる準備会合に向け、5月の策定を目指す。

 多岐にわたる課題の中で、特に注視すべきなのは環境対応だ。地球温暖化の国際ルール「パリ協定」と連動する形で、農業・食料分野での積極的な貢献を意識した議論になりそうだ。米国の同協定復帰や日米の温室効果ガス「2050年実質ゼロ」表明により弾みがつき、その波は農業にも及ぶとみるべきだ。世界の同ガス排出量の4分の1を農林業関連が占めている。

 気候変動対応で世界をリードする欧州連合(EU)の動きが出色だ。昨年5月、「農場から食卓へ(Farm to Fork)」と題した新戦略を打ち出した。肥料農薬の使用抑制や畜産飼料の脱輸入依存、有機農業の拡大などで数値目標を設定、一段と環境重視型農政にかじを切った。「地球の健康を守りながら食の安全を保障する新しいシステム」(欧州保健衛生・食の安全総局)とし、市民の支持を得られると自信を見せる。

 EUはこうした規律を2国間貿易協定などに適用する姿勢だ。これに対し米国は「農業生産を低下させ小売価格の上昇をもたらす」(農務省)と批判、さや当てが始まっている。日本も「諸外国が環境や健康に関する戦略を策定し、国際ルールに反映させる動きが見られる」(農水省)と注視。みどりの食料システム戦略づくりを急ぐ。

 その際重要なのは、国民の関心の高まりだ。政府は農業者、消費者、企業、市民社会を巻き込んで、望ましい食料生産流通の将来像について合意形成に尽くすべきだ。それでこそ日本の提案に「魂」が入るだろう。

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