コロナと農業経営 際立つ小農の堅実さ 木之内農園会長 木之内均

木之内均氏

 1年半前には、新型コロナウイルスで世界中がこんなに振り回されると誰が予想できただろう。

 農業の世界は自然相手のため、一般的な産業よりもリスクが多いことは日頃から意識しており、それなりのリスクヘッジはしているつもりであった。しかし、私はコロナで自らの農園もこんなにダメージを受けるとは予想もしていなかった。

 考えてみれば、畜産の世界では鳥インフルエンザ、豚熱、口蹄疫(こうていえき)など、すぐ身近で起きていることであり、これが人で起きた時のことを考えていなかったのだと、改めて考えさせられた。
 

いち早く6次化


 私の農園では6次産業化が騒がれるはるか前から農産加工や観光農園に着手していた。そのため、天候や農産物相場による経営の不安定要因はかなり解決し、農業法人としても安定した状況になっていた。5年前の熊本地震の時も多くのボランティアの方々や行政支援のおかげでなんとか立て直し、さらなる創造的再建の道に乗ったばかりだった。

 農業は、人にとって最も重要な社会の基盤産業のため、大もうけもできない代わりにつぶれにくい特徴がある。しかし、世の中がお金中心になり、生活もゆとりが出てきた現代、単なる食料生産では利益率が低く、規模拡大や後継者が確保できる持続可能な夢のある経営に発展しにくいため、多くの篤農家や農業法人が6次化を目指してきた。加工を伴った供給の安定化や通年での計画出荷による収入の平準化、流通の工夫による高級ブランド化や利益率の向上など、6次化で得られるメリットも多い。

 規模拡大に伴い、外国人実習生に頼ってきた雇用も各地で影響が出ているようだ。私の農園も6次化にはいち早く取り組んで法人化につなげ、規模拡大してきたことで安定させてきた。
 

多角経営に逆風


 ただ、今回ばかりはこのことが裏目に出た。観光農園は緊急事態宣言により直接影響を受けたと同時に、近年インバウンド(訪日外国人)の獲得を中心に営業戦略を組んでいたことが全く止まってしまったのだ。

 加えて、地域から指定管理で直売所やレストラン経営を担い、観光農園との連携を模索することで地震後のV字回復を狙った経営戦略はまともに裏目となり、指定管理も諦めざるを得ない状況となり、地域に多大な迷惑をかけてしまった。

 このような状況の中、周りを眺めると本来の農業としての生産に軸足を置き、着実に進めてきた経営体か、むしろ家族経営の影響が少なく力強く生き残っているように見える。

 6次化や大規模化は担い手不足と高齢化に悩む日本農業としては決して間違った方向ではないと感じるが、中山間地のような条件不利地域で小規模でも必死に努力を続ける家族経営も、この変化の速い想定外のことが連発する時代の中では重要であると改めて考えさせられた気がする。

 きのうち・ひとし 1961年神奈川県生まれ。九州東海大学農学部卒業後、熊本・阿蘇で新規参入。(有)木之内農園、(株)花の海の経営の傍ら、東海大学教授、熊本県教育委員を務め若手育成に力を入れる。著書に「大地への夢」。
 

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