農業所得の向上 施策検証し目標設定を

 農業所得が伸び悩んでいる。菅義偉首相は国会で、農業政策では所得の確保を重視する考えを表明した。実現には、農業所得向上の目標を定め、現行の施策を検証した上で達成への総合戦略を策定・実践し、着実に成果を上げることが政府には求められる。

 菅首相は国会で、自らの農業政策の理念について「活力ある地方をつくる、そう考えた時に大事なのは一定の所得を上げられる農業だ」と表明。そうならなければ「若者が職業として農業を選ばず、地方に住み続けることも難しくなる」と理由を説明した。

 しかし農業所得は減少に転じた。日本全体の農業所得に相当する生産農業所得は2015年から3年連続で増え17年は3・8兆円になったが、その後は2年続けて減り19年は3・3兆円。増減の要因で大きいのは野菜の作柄による価格の変動だ。1経営体当たりの農業所得も同じ動きをしている。規模拡大が進み経営費もその分増えたが、18、19年はそれに見合うほどには収入が増えなかった。

 安倍晋三前首相は18年の通常国会での施政方針演説で、生産農業所得の増加は「攻めの農政」の成果と強調。質疑で、政府が目標に掲げる農業・農村の所得倍増も「十分に実現可能性がある」と述べた。

 同目標では、13年の農業所得2・9兆円と、加工・直売や輸出などの農村所得1・2兆円を、25年までにそれぞれ3・5兆円、4・5兆円に増やすとした。実績は、農業所得が3・3兆円(19年)、農村所得が2・1兆円(18年)。農業所得は作柄に左右され、農村所得は伸びが不十分である。目標達成は不透明だ。

 菅首相は先の発言に続けて、安倍内閣の官房長官として農業所得確保のために米の生産調整の見直しや農協改革などに取り組んだと説明。結果が伴っているか検証が必要だ。米の生産調整の見直しでは、国による生産数量目標の配分や達成メリット措置を18年産から廃止。結果として、適正生産量の面積換算対比で3年連続過剰作付けとなり、20年産の米価は続落している。

 また、農業者の所得増大などを目標にJAグループは自己改革に取り組み、生産資材価格の引き下げなど成果を上げている。一方、農協改革で政府は、JA全中の一般社団法人化など制度改正を行った。改正農協法の施行から5年が経過し、農業所得にどう影響したか説明が必要だ。

 菅首相は「農業所得を向上させる。そうした環境を私はつくりたい」とも述べた。もっともだ。結果が伴うよう、政策の立案・決定過程で生産現場の実態と意向を十分踏まえるとともに、品目ごとなど施策の効果を検証できる所得目標を設定し、進捗(しんちょく)を管理すべきである。
 

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