食と農の意識調査 自給率向上 機運醸成を

 食料自給率の数値を知らない国民が8割に上ることが、日本農業新聞の調査で分かった。一方で、自給率向上を求める人には国産応援志向がある。食料の6割を輸入に頼る危うさを共有することが、農業振興への国民合意につながることがうかがえる。一層の取り組みを政府に求めたい。

 本紙年間キャンペーン報道「フードエイジ」の一環で、「食と農の意識調査」として実施。10代から70代以上の1114人から回答を得た。

 自給率38%(カロリーベース、2019年度)の認知度は低かったが、今よりも「上げるべき」は8割だった。自給率の低さを知ることで食料確保への潜在的な不安が表面化し、引き上げが必要との意思をもたらしたと言えそうだ。

 世界の人口は増え続け、地球温暖化で自然災害のリスクも高まっている。新型コロナウイルスの感染拡大で、海外では、農場での出稼ぎ労働者の不足や加工施設の停止、食料の輸出規制や物流の遅れなどが発生した。これらは、日本がいつでも安定的に食料を輸入できるという保証はないことを示している。

 自給率の向上には国内生産の拡大が必要であり、生産基盤の強化が急務である。一方で、国産の増産には消費拡大が欠かせない。調査では、食品を買う際に意識していることで最も多かったのは「価格の安さ」だった。しかし輸入品との価格競争に陥り、再生産を確保できる水準が維持できなければ、国内の生産基盤は強化どころか弱体化する。再生産可能な価格水準への理解を得ることが、消費拡大の課題の一つである。

 その克服の鍵は、まず自給率向上の必要性への理解である。自給率向上を求める人は、国産が「今の価格水準でも」または「やや上がっても」も応援したいとの割合が高い。食料安全保障の実現策でも「行政による農家への支援強化」を求める人が多い。

 回答者からは「この調査を目にするまでは深く考えず、価格重視で購入してきた。農業支援のことも官民で真剣に考えないといけないと思った」(男性50代後半)という声が寄せられた。

 国産の価値を高めることや生産者と消費者の距離を縮めることも重要である。消費者が国産に求めているのは、回答が多い順に「生産の安定継続」「おいしさの向上、安全・安心の確保」「もっと価格を安く」などだった。安定生産・供給や品質向上、コスト削減など生産者や産地の努力を、生産現場からもっと発信することが求められる。

 政府は自給率を45%に引き上げる目標を定めている。達成に向けて、自給率の認知度の低さを深刻に受け止め、向上への機運を国民全体で高めることに力を尽くすべきだ。

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