[農と食のこれから いのちの現場](2) <山梨・小菅村のわな猟> 生きるため…巡る命

わなにかかり、逃げようとする雄鹿に近づく青柳さん(左)と鈴木さん

 男性2人の後を追い、深く積もった落ち葉に足を取られながら45度の斜面を登る。春の風が木立を渡り、尾根を吹き上がった。その先に座り込んでいた角のある鹿が2人の気配に気付き、立ち上がった。慌てて逆方向に駆け出したが、右前脚にかかったわなから伸びるワイヤに引き戻された。マスク姿の2人が慎重に間合いを詰めていく。

 青柳博樹さん(46)と鈴木一聡さん(36)。山梨県小菅村で活動しているくくりわなの猟師5人のうちの2人だ。自然体験ツアーや鹿の管理捕獲などを行う民間企業「boonboon(ブンブン)」の社長と社員。

 標高2000メートルから600メートルの山懐にある人口700人弱の小菅村は、平地が少なく、斜面に集落が連なる「天空のまち」だ。畑も斜面をそのまま耕しているのだが、いずれも高さ2・5メートルの電気柵で囲われていることに驚く。まるで「監獄の耕作地」だ。

 理由は鹿やイノシシ、猿などの「食害」から農作物を守るため。ソバやジャガイモ、ホウレンソウなどの野菜を自給している村の死活問題だ。イノシシや猿は電気柵でなんとか防げるが、鹿は高さ2メートル以上も跳び越える脚力を持つ。青柳さんと鈴木さんの主任務も鹿の捕獲だ。

 村人の命をつなぐ「食」を守るため、動物の命を奪う。人間にとって「害獣」に違いないが、動物に人への悪意はなく、生きるための本能にすぎない。だから、命を奪った鹿は余すところなく利活用する。ブンブンの社是だ。……
 
(「農と食のこれから いのちの現場(2)」の全文は5月5付日本農業新聞の紙面をごらんください)

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