マイバッグ招く万引!? 疑ってかかるのも…悩める直売所 レジ袋有料化1年
「レジ袋の有料化が万引被害に大きく影響している」と話すのは、山形県鶴岡市にある産直あぐりの叶野由佳店長。地域の19直売所で組織する庄内直売組織連絡会議でも話題に上るという。
同店は、特産のサクランボなど果樹が人気だ。贈答需要が高く、従業員6、7人でレジ打ちや棚の整理、問い合わせ、発送業務などに当たる。万引抑止も兼ねて利用者に声を掛けるようにしているが、手が回らないことがあるという。
「万引するのはごく一部。利用者を疑っていると思われるのもつらい」と葛藤を打ち明ける。ほとんどは、マイバッグを畳んだ状態で買い物をし、精算後に広げるという。
同店は、防犯カメラの増設を検討中だ。だが「直売所は地域の交流拠点。温かみのある店の雰囲気を壊したくない。費用面でも限界がある」とジレンマを抱える。
一方でJA鶴岡の農産物直売所「もんとあ~る」は、防犯カメラの映像を証拠に万引犯の摘発につなげた。産直課は「犯行時間の映像を複数人で確認し警察に通報した」と話す。防犯カメラの刷新で画像が鮮明になったことも奏功した。
■声掛け 抑止に効果
直売所は委託販売の形態を取るため、出荷会員から申し出がない限り被害の把握が難しい。全国農産物直売ネットワークの森岡亜紀事務局長は「直売所に絞った被害の実態が把握されていない」と指摘する。
その上で、「多くの直売所で導入されている販売時点情報管理(POS)システムを活用し、実験日に商品ロス率を調べる方法が考えられる」とした。
「客へのあいさつといった声掛けは、万引防止に効果がある。出荷会員も納品や補充時に実践してほしい。店も活気づく」と森岡事務局長は助言する。
■高齢者の摘発 割合増加
警察庁は2019年、9万3812件の万引を認知。5万5337人を摘発した。摘発人員は減っているが、65歳以上の高齢者の割合は上昇傾向で19年は4割だった。
森岡事務局長は「複数の直売所から昨年7月以降、万引が増えたと聞く」と話す。
都市農山漁村交流活性化機構が3、4月に行った調査でも「万引の増加など客のモラル低下」を運営の課題とした直売所は23%。17年度の調査から10ポイント上昇している。