石川県の能登半島地震は11日、発生から10日が過ぎた。しかし、同県によると、被災自治体の人手不足は解消されず、半島の西側に集中する孤立集落には国道の寸断で食料などが十分に届いていない。日本で初めて世界農業遺産に指定された輪島市の「能登の里山里海」のシンボル、白米(しろよね)千枚田に無数のひび割れが確認されたが調査も未定だ。被害の全容は依然見えず、被災者の疲労も限界に来ている。
総務省は2016年4月の熊本地震を機に、被災自治体が全国の自治体に応援要員の派遣を直接要請する「対口(たいこう)支援」制度を導入。11日現在、44都道府県から職員507人が被災3県に派遣され、その大半が奥能登で活動中だ。
しかし、石川県危機対策課の担当者は「被害の大きい輪島市や珠洲市などの人手不足は解消されていない」と打ち明け、こう続けた。「本当はもっと要請したいのだが」
同省によると、派遣要員は避難所の運営や罹災(りさい)証明書の交付業務が主目的とされる。県によると輪島市や珠洲市などでは、国の「プッシュ型」輸送で市町の拠点には食料など生活物資が十分に届いているが、そこから孤立集落に運ぶ人員がいないという。
奥能登では停電や断水が続き、宿泊施設も少ない。応援職員は派遣先の自治体職員と同様に役場の床やソファなどで睡眠を取っており、受け入れ自治体からは「現状ではこれ以上の派遣は求められない」といった声が上がる。
陸上自衛隊と国土交通省が道路の緊急復旧を進めているが、孤立集落の解消は見通せない。総務省応援派遣室は「国も応援職員のサポートをしっかりしながら、(さらに必要な)300~400人は増やしたい」という。
世界農業遺産「白米千枚田」被害か
国交省北陸地方整備局は2日、ヘリコプターで道路や河川の被災状況を確認。千枚田の中央付近を走る国道249号の亀裂も撮影した。路面に3カ所の亀裂と、棚田や畔にはひび割れたような無数の跡が見える。
輪島市観光課にある白米千枚田景勝保存協議会事務局は「もしかしたら田が崩落している所があるかもしれない。今年の作付は見通せない」と懸念。担当者は「今は人命優先」とし、現地調査は道路復旧と避難者支援が落ち着いてからになると言った。
千枚田付近では地震当時、訪れていた観光客約40人が孤立。5日、警視庁や大阪府警などのヘリで救出されている。