助っ人到着に安堵
災害ボランティアセンターを運営する町社会福祉協議会などによると、大規模な土砂崩れが起きた同県酒田市や広範囲で浸水した秋田県由利本荘市に比べて報道が少なかった他、町内の宿泊施設が少ないことなどが影響したとみられる。幸い地元紙でボランティア不足が大きく報じられて希望者が増加した。
酒田市災害ボランティアセンターでは、発災1カ月を経た今なおボランティアを募集している。8月29日までに240件(取り下げ除く)の依頼が寄せられたが、作業完了は半数にとどまるという。
遊佐町でボランティアをする時田美保子さん(64)は「『ありがとう』と言ってもらえる。ボランティアができるのは幸せなこと」と参加を促す。
光る社協の経験値
遊佐町などのセンターでアドバイザーを務める千川原公彦さん(ウェザーハート災害福祉事務所代表)は「それぞれの社会福祉協議会が被災地へ応援に赴いていた経験が生きている」と指摘する。
遊佐町社協でも、水害があった宮城県大崎市で支援活動をした経験を生かし、運営のマニュアル案を用意していたことが奏功した。
各社協では、ニーズの掘り起こしにも注力する。流れ込んだ泥を放置すると住宅を傷める恐れがあることなど、被災者が見落としがちな点を説明して要望をくみ上げている。
発災当初は要望がなくても、時間がたち、疲れが出ることもあるので、複数回呼びかけることも大事だ。千川原さんは「ボランティアになじみのない地域も多い。積極的に出向いて聞かないと、『間に合っています』で終わってしまう」と語る。
<取材後記>
「うちはボランティアを頼んでいないよ。男手があるからな」。そう語るのは71歳と72歳の兄弟。自宅が浸水し片付けに追われる。「もっと被害が大きかった所がある」と語るが、疲れは隠せない。
災害ごみの仮置き場ではシルバー人材センターで働く高齢者が汗を流す。水害前に受けていた作業を待ってもらい、人手を繰り合わせているのが実情だ。
災害発生時の取り組みには、自助・共助・公助の三つの力があると言われる。水害被災地を歩くと、自身や家族による自助、地域住民による共助は、高齢者によって支えられていることが分かる。
10年後、20年後に災害が起きたら、どうなるのだろうか。人口減が進む地方の課題を、まざまざと見せつけられた思いがした。
(山口圭一)