コロナ禍の仲卸 業務用苦戦で直接販売に活路
■ドライブスルー@広島 接触、最小限に
農水省によると、中央卸売市場での青果や花き、食肉を扱う仲卸業者数は2019年度で2884。5年で394(12%)減った。地方卸売市場では、同じ期間で354(13%)減の2321となった。小規模業者などが、経営難や後継者不足で廃業に追い込まれている。20年以降は新型コロナ禍で、業務用の販売が低迷するなど経営は一層厳しくなっている。
生き残りをかけて商機を見るのが、消費者への直接販売だ。広島市中央卸売市場の生花仲卸・佐伯生花は、同市場で扱う生鮮品を市場近くで引き渡す「ドライブスルー市場」を7月から利用する。同社は、結婚式などイベント需要が軒並みなくなり、売り上げはコロナ前より2割落ちた。新たな販路獲得で業績の回復を狙う考えだ。
同市場は、インターネット予約サイトを運営する道乃屋(広島市)が手掛ける。開市は1カ月に2回。事前にサイトで注文を受け付け、支払いを済ます。車で訪れた客に商品を手渡すだけと、接触を最小限に抑えた。1回に30人超が利用している。
同社の伊藤道恵代表は、広島市中央卸売市場の水産仲卸の社員でもある。コロナ禍の副業で、自身の所得確保と「同じ境遇の仲卸を助けたい」との思いで起業した。
佐伯生花は洋切り花や花鉢を1100円から販売する。同社の他、青果仲卸など計4社が出品。品目を指定しない「おまかせセット」が人気で、仲卸は需給に応じ商品を組み合わせられる。佐伯生花の佐伯裕子専務は「自社でサイトを立ち上げるのはノウハウが必要で難しい。新たな販路で鮮度の高い花をPRしたい」と話す。
■産直ECサイト@長野 注文1カ月200件
長野県内の卸売市場で青果仲卸を手掛ける長野大同青果は6月から、産直ECサイト「農家直売どっとこむ」の運営を始めた。県産農産物や加工品の販売サイトだ。20の生産者や加工業者が出品し、ブドウやクルミなど約180点をそろえる。利用登録数は約2500人で、1カ月に200件の注文がある。
量販店向けに卸す同社の業績は、昨年度は好調だった一方、コロナ下2年目の本年度は鈍い。新たな収益源の確保に向けて、他社から同サイトの事業継承を決意した。このサイトの運営を通じて「新規生産者の獲得につながった」(込山裕章社長)ケースも出ている。