食生活に「+ジビエ」 全国フェア1000店参加 独自メニューや狩猟・解体体験
事業主体「ぐるなび」
フェアのコンセプトは「プラスジビエ」。「ヘルシー」「農業を守る」など12のキーワードから、それぞれの志向に合わせて暮らしにジビエを取り入れることを提案する。農水省の事業を活用し、飲食店検索サイトなどを運営するぐるなびが事業実施主体を担う。
山梨県富士河口湖町にある、屋外施設で宿泊できるグランピング施設「星のや富士」は、県内で捕獲された鹿肉を余すところなく使ったコース料理の提供に加え、地元猟師と連携した狩猟体験ツアーを企画。ジビエの背景にある地域の鳥獣害や狩猟者の減少といった課題も伝える。
12月中旬まで行うツアーでは、捕獲から解体、食べるまでの一連の流れを見学、体験してもらう。参加者からは「『いただきます』の意味を改めて考えるきっかけになった」「都市部ではできない体験だ」などの声が寄せられているという。
松野将至総支配人は「ジビエを食べてもらうだけでなく、食材とするための狩猟や、本質となる自然との共生など、背景を知ってもらうことに価値がある」と力を込める。
愛知の高校生 鹿肉カレーPR
発信力の高い若手世代もフェアに参加する。愛知県のカレーハウスCoCo壱番屋8店舗では、豊田市の獣肉処理加工施設と共同開発した「とよた里山鹿肉欧風カレー」(650円)を販売。授業でジビエについて学んだ地元・県立足助高校の生徒がPRを担う。
「シカしか勝たん」をキーワードに、インターネット交流サイト(SNS)で商品情報を拡散。同高3年の安藤翔吾さん(17)は「山に住む人の生活を獣害から守りながらその過程で奪った命を無駄にしないという、環境と命の循環の二つに貢献できる取り組みを同年代に発信したい」と意欲を語る。
コロナで需要に逆風
国内では、鹿やイノシシの捕獲頭数や獣肉処理施設での処理数が増え、ジビエの利用量も増加傾向にある。一方、新型コロナウイルス禍による外食需要の減退で鹿肉の販売量が減少。農水省によると、直近の2020年度に処理した野生鳥獣のうちジビエでの利用量は、前年度から1割減って1810トンだった。
新型コロナが収束傾向にある中、フェアは消費拡大の起爆剤として期待がかかる。フェアの特設サイトでは、ジビエ提供店の検索ページや、全国各地で企画されるジビエ関連のキャンペーンなども紹介する。
ぐるなびは「美容や健康、持続可能性への貢献など、それぞれの『ちょっといいこと』を見つけてジビエを生活に取り入れてほしい」と呼び掛ける。フェアは来年2月28日まで。