3酒蔵が競演「吉野正宗」 ふるさと納税返礼品に 奈良・吉野町
奈良県吉野町で町や生産者、酒蔵が協力して、新たな日本酒のブランド「吉野正宗」を誕生させた。遊休農地を活用して酒造好適米を栽培し、それを原料に造る。3者が遊休農地の増加を食い止めようという思いを込めて生み出した。町では今秋、ふるさと納税の返礼品に採用、広く売り込んでいく。
同町では高齢化や人口減少による遊休農地の増加が深刻化している。歯止めをかけようと町は2014年、遊休農地活性化プロジェクトを始動。遊休農地で酒造好適米を栽培し、それを原料に地元の酒蔵が日本酒を造る取り組みが始まった。
酒造好適米の生産を担うのは3軒。品種は短稈(たんかん)で倒れにくく栽培しやすい晩生品種「吟のさと」で、9793平方メートルで栽培する。いずれも引き受け手がなく、遊休化が危ぶまれた農地という。JAならけんは、米生産者に対する営農指導や米の品質検査などを行う。
生産者の山口絆会営農組合に所属する一人は「今年はJAの協力もあり、昨年より多くの収穫量が確保できた。地元を盛り上げるために協力していきたい」と話す。
一方、酒造りを手掛けるのは北岡本店、北村酒造、美吉野醸造という三つの酒蔵だ。いずれも100年以上の歴史を持つ老舗。各蔵ともに30、40代の蔵元や杜氏が中心となり、「吟のさと」を使い、同じ「吉野正宗」というブランド名の日本酒をそれぞれ10月に完成させた。いずれも精米歩合60%で造られた純米吟醸酒だが、各蔵の特徴がしっかり出た味わいに仕上がっている。
同町は10月下旬に「吉野正宗」をふるさと納税の返礼品に加えた。各蔵の「吉野正宗」3本が入った飲み比べセットで、中井章太町長は「この取り組みが農家のやりがいにつながり、町の魅力や若い世代が頑張っていることを知ってもらえたらうれしい」と期待を込める。(ならけん)