自分の腕で地域守る リンゴ+狩猟+ジビエ 免許取り二人三脚 広島県庄原市の白根夫妻
農園は1980年代、父の和幸さん(75)が始めた。会社員だった浩治さんは、2008年に就農して09年に経営を継いだ。就農時の2・3倍となる約3ヘクタールで「ふじ」「シナノスイート」など30品種、約1600本を管理する。
規模を拡大する中、増えるイノシシやヒヨドリなどの被害に悩まされた。猟師に駆除を頼んでいたが、高齢化による人手不足や離れた園地で時間の制約があった。
地元で園地や田畑を荒らす鳥獣の被害に危機感を募らせた浩治さん。12年に知り合いの猟師の勧めで狩猟免許を取得し、駆除に乗り出した。浩治さんは「園地を守るのに必死だった」と振り返る。浩治さんの影響を受けた加奈さんは、15年に銃の免許を取得した。
当初は園地の2、3カ所に箱わなを仕掛けたが、ほとんど捕獲できなかった。ベテラン狩猟者から仕掛け方や場所、野生動物の特性などを聞き、研究を重ねて捕獲数を少しずつ増やしていった。
近隣からの駆除依頼も増えた。わなにイノシシがかかると、浩治さんに連絡が入り現場に向かう。銃で仕留め頸(けい)動脈を素早くナイフで切断して血を抜く。臭みを残さないため、肉に余分な血が回らないように心掛ける。
先輩猟師から里山を守る仕事の責任や鳥獣の尊厳、命の尊さを学んだ浩治さん。20年からジビエのブランド化を進める市の施設の職員とイノシシを仕留める。鮮度を保ち、施設で食肉に加工。21年7月には、地域の資源を有効に利用しようと食品衛生責任者の資格を取得した。
2人が捕獲して施設で加工したロース、バラなど5種類の肉を販売する。加奈さんの提案で、幅広い料理に使える細切れを加えた。浩治さんは「鳥獣と向き合い、狩猟で地域の農業・農地を守りたい」と話す。加奈さんは「新商品の提案などジビエ販売に力を入れ、地域を元気にしたい」と笑顔を見せる。