"ご長寿"ブドウ守れ 市が重文指定、地域のシンボルに 広島県竹原市
市のブドウ栽培は歴史が古く、1870(明治3)年に「甲州」の苗を植えたのが始まりとされる。「長寿ぶどう」は「キャンベルアーリー」で、1918(大正7)年に植えたとみられる。
「長寿ぶどう」の園主だった川口典彦さんが2020年に亡くなり、管理が不十分となった。枯死の危機に市の職員が、若手生産者らに声をかけ、5人で「長寿キャンベルを守り活(い)かす会」を結成。保存に乗り出した。
会長の貞森雅之さん(50)は「ブドウの品種は20年ほどで更新する。なぜ、残したかは分からない」と話す。海岸に近いが海側に山があり、強風被害を受けにくい地形も奇跡的に残った要因とみる。
「ピオーネ」「シャインマスカット」など30種類のブドウを家族4人で栽培する貞森さん。「最初は草が腰より高く生え、整備が大変だった」と話す。ブドウの管理作業が重なるためメンバーで時間をやりくりし、草を刈り、防草シートを敷くところから始めた。
商品作物としては異例の樹齢となる「長寿ぶどう」。現存する4本のうち3本が重要文化財だ。手厚い世話もあり、今年は多くの花が咲き、房を付けた。カラスやイノシシによる被害を防ぐための対策を講じ、今年は試験的に数房の収穫を検討する。6月には樹木医を呼び、樹勢の回復・維持を考えた。
会は結成して1年。「長寿ぶどう」の存在は地域に伝わり、住民に保存への機運が高まりつつあるという。23年以降の本格的な収穫を目指し貞森さんは「長寿ぶどうを残すため活用法も考えたい」と語る。(広島・三原)