山口市で続出 “凶暴化”する猿 3週間61人けが 農作業中4人被害
7月に襲撃急増 網戸開け侵入も
市農林水産部に20日発足した対策本部によると、現場(旧小郡町)は新興住宅地やオフィス街、田園、中山間地が広がる。野生の猿も生息するが、人を襲ったことはなかった。
市消防本部が最初に救急搬送したのは4月8日。対策本部によると、襲撃は7月から急増し、0~90代の男女が腕や足、顔などを引っかかれたり、かまれたりした。逃げる際に転倒し、打撲を負ったケースもある。集団でなく1匹で襲っているのが特徴だ。
8日には民家の網戸を開けて侵入した1匹が、1階で寝ていた0歳女児の足を引っ張っているのを母親が発見。追い払った際に女児の右足をひっかいて逃走した。25日には県立山口農業高校で女性職員が校舎内にいた1匹に襲われた。
当初は同一個体の犯行と見られたが、26日夕に業者が麻酔銃で4歳の雄1匹を捕獲した後も被害が発生。捕獲直後の午後6時半ごろ、農作業をしていた70代女性が背後から飛びつかれ、太ももや指をかまれるなどした。市は複数の猿が襲っていると断定。JA山口県も情報収集を進める。
遊びたいだけ? 遭遇時は逃げろ
ニホンザルの雄には犬歯があるが、現時点で被害者が深くかまれたケースはない。対策本部の担当者は「被害状況から食べ物を狙っていないようだ。足に抱きつくなど、じゃれつこうとしたと受け取れるケースもある」と語る。一方で「猿を見かけたら安全な場所に逃げて」と呼びかける。
野生の猿に餌付けをしている高崎山自然動物園(大分市)によると、ニホンザルから人間に伝染する危険な病気はないが「かまれたら水で傷口を洗うこと」と指摘する。「犬歯のある雄が本気でかみつけば、肉をえぐる大けがになる。(捕獲されたような)4歳から6歳の猿は人間でいえば10代の好奇心旺盛な年頃。人に興味を抱いて近づいた可能性がある」とみる。