農政

[新型コロナ] 4都県で緊急事態宣言 全飲食店 夜8時まで時短 外食業界 疲弊が加速
新型コロナウイルス感染再拡大を受け、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県は、飲食店に要請している営業時間短縮を午後8時までと、さらに前倒しする。8日から酒類を提供する飲食店、12日からは全飲食店に拡大する。年末年始の時短より一層厳しい措置は疲弊する飲食店や食材の卸業者を休廃業に追い込む恐れが強まり、外食業界の不満が強まっている。
「自己判断」に不信募る
東京都は時短要請に応じる飲食店への協力金を1日5万円に増額し、従来の事業者単位から店舗単位での支給を検討している。
都内で「和食日和おさけと」を5店舗展開する山口直樹社長(39)は、協力金増額が決まれば、全店舗を一時休業する方針だ。1都3県の時短拡大や菅義偉首相の緊急事態宣言の検討表明後、キャンセルが相次いだ。午後7時の酒類提供中止で、「店を開けておく意味はない」と判断した。政府や都が「要請」の形で時短を迫ることに対し、「休業してくれというべきだ。飲食店の自己判断というやり方は卑怯(ひきょう)」と憤る。
協力金が支給されない大手外食チェーンは要請に応じるところが多い。居酒屋などを展開するコロワイドやファストフードの日本KFCホールディングス、牛丼大手の吉野家は、政府の緊急事態宣言発出と同時に、対象地域の店舗の時短を実施する方針。「お客さんは午後6時すぎから来るのに、午後7時で酒類提供ストップでは営業にならない」(大手外食)と不満が募る。
そのため、一部の大手では既に時短要請に応じない店舗もあり、「個人経営の飲食店の中には協力金を受け取った上で、午後10時に外灯を消し、こっそり営業しているところもある」(同)、「時短で感染が防げるのか疑問だが、口にできない」(別の大手外食)と、不公平感が強まっている。
時短や休業は飲食店の経営だけでなく、食材の仕入れ先から生産者まで影響が波及するのは避けられない。神奈川県の黒岩祐治知事は4日夜の1都3県知事のウェブ会議で、「飲食店への時短要請に伴って、仕入れ先の関連業者も影響を受けている」と述べ、卸業者などへの支援を国に働き掛ける考えを示した。
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2021年01月06日
鳥インフル 3割で移動制限解除 発生想定し演習実施を 農水省
過去最大規模の被害となっている高病原性鳥インフルエンザについて、今季14県19市町で発生した34例のうち、4日までに3割に当たる11例で移動制限区域(発生農場から半径3キロ圏内)が解除された。移動制限は防疫措置が完了して21日後から解除できる。農水省は、大規模な農場での発生が相次ぐことを受け、都道府県に大規模農場での発生を想定して演習をするよう呼び掛けた。
4日までに移動制限が解除されたのは、香川県東かがわ市で発生した今季2例目と、福岡県宗像市の9例目、兵庫県淡路市の10例目、宮崎県日向市と都農町、都城市、小林市の11、12、15、18、19例目、奈良県五條市の16例目、大分県佐伯市の20例目、和歌山県紀の川市の21例目──の11例。新たな発生がなければ、今月中旬には、香川県三豊市での12例分も含め、ほとんどの移動制限が解除される見込みだ。
過去最多の殺処分羽数となった千葉県いすみ市の今季32例目の農場では、12月24日の発生確認後、当初より早い今月2日に約114万羽の殺処分が完了。羽数の多さから防疫措置の完了には時間がかかる見通しだ。
岐阜県美濃加茂市で2日に確認した34例目の農場は、4日午後2時時点で約5万羽の殺処分が完了。5日には防疫措置を完了させたい考えだ。
今シーズンは、数十万羽規模の養鶏場での発生も相次ぐ。農水省は昨年末、各都道府県で最大の飼養規模の農場で発生したことを想定して机上防疫演習をするよう通知を出した。飼養衛生管理基準の資料も再配布し、防疫対策の徹底も訴えている。
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2021年01月05日
岐阜で鳥インフル 疑似患畜を確認 今季14県目全国で34例目
農水省と岐阜県は2日、同県美濃加茂市の採卵鶏農場で、鳥インフルエンザの疑似患畜を確認したと発表した。高病原性と確認されれば、今季14県目、全国で34例目の発生となる。県は発生農場の約6万8000羽を殺処分する。
1日に発生農場が鶏の元気がないと県に通報し、同日中に簡易検査で陽性を確認。2日にH5亜型と判定した。
同省は2日、鳥インフルエンザ防疫対策本部を開催し、疫学調査チームの派遣などに着手。県は防疫措置を進める他、発生農場周辺の消毒を強化し、主要道路に消毒ポイントを設置する。
岐阜県は採卵鶏の農場数が90戸で全国5位、羽数は524万羽で16位となっている。発生農場から3キロ圏内(移動制限区域)では6戸が約12万羽を、3~10キロ圏内(搬出制限区域)は26戸が約100万羽を飼養する。
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2021年01月03日
日英EPAが発効
日本と英国の経済連携協定(EPA)が1日、発効した。農産物の関税は、日本と欧州連合(EU)のEPAと同じ税率を適用。日欧EPAで輸入枠を設けた25品目については、英国に輸入枠を新設しない。ブルーチーズを含むソフト系チーズ、ココアや小麦粉の調整品など10品目は、日欧EPAの輸入枠が余った分に限り、英国産にも低関税を適用する。
牛肉や豚肉など、日欧EPAでセーフガード(緊急輸入制限措置)を設定した品目は、英国とEUから輸入量の合計が日欧EPAの発動基準数量を超えた場合、英国に発動する。日欧EPAと同様に、米は関税削減・撤廃の対象から除外した。
日本からの農産物輸出は、牛肉や茶など主要な関心品目で、日欧EPAと同様に英国側が関税を即時撤廃した。
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2021年01月01日

畜産物輸出最多ペース アジア圏家庭向け伸び 鶏卵で顕著
日本から海外への畜産物の輸出額が過去最高ペースで推移している。世界的な新型コロナウイルスの感染拡大でレストラン向けの需要が激減する中でも、アジア圏を中心に家庭消費向けで大きく伸ばした。落ち込んでいた牛肉も盛り返してきており、各国の消費環境の変化に応じた販売戦略が功を奏している。
財務省の貿易統計によると、2020年1~11月の牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵の輸出額は前年同期比6%増の327億円。過去5年で2倍超に急伸した。全体の8割近くを占める牛肉は同4%減の251億円となったが、回復傾向にある。鶏卵が同114%増の42億円、豚肉が同50%増の15億円と大きく伸びた。
鶏卵の伸びの背景には、香港向け輸出の急拡大がある。全体の9割超を占める香港向けの20年の輸出額は41億円。前年から2倍に増加した。現地の情勢に詳しい香港貿易発展局は「すき焼きブームで日本産は生食できることが認識され、新型コロナ下では、自宅で卵掛けご飯を楽しむ人が増えた」と指摘する。
豚肉も、銘柄豚を中心に自宅でのしゃぶしゃぶ人気が高まったという。
牛肉は欧米向けが急減し、4月は前年同月比44%減の14億円にまで落ち込んだものの、6月以降回復。直近の11月は同14%増の32億円となった。アジアを中心に、これまでレストランでの消費が主流だった和牛を、家庭消費向けに売り込む動きが活発化している。
ディスカウント店「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは、海外店舗で家庭向けの和牛商品を強化した。11月に香港にオープンした店舗では、ステーキやしゃぶしゃぶ用の和牛が売り上げ上位を独占し、「今後も伸びが期待できる」とみる。
政府は、30年の日本産農林水産物・食品の輸出額5兆円の達成に向け、牛肉は19年の297億円から25年に1600億円、鶏卵は同23億円から同63億円に増やす目標を掲げる。今後、生産者や輸出業者らが連携して輸出促進に取り組むモデル産地の育成や、マーケットインの考えに基づいた販路開拓などを通じ、輸出拡大につなげていく考えだ。
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2020年12月31日

[新型コロナ] 技能実習生 再就労 7割食農分野 「コロナ解雇」受け皿に
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で解雇されるなどした外国人技能実習生を対象に一度限りの職種変更を認める「特定活動」の資格へ移行した約7割が、農業や食品製造業を新たな職種に選び、就労先を見つけていたことが分かった。法務省出入国在留管理庁が調べた。実習生の再就労の実態が明らかになるのは初めてで、世界的な社会・経済不安の中でも「食」を巡る産業が雇用の受け皿となっていることを裏付けた。
外国人技能実習機構によると、政府が緊急事態宣言を発令する直前の2020年3月時点で入国していた、もしくは入国予定だった実習生は計36万6167人。……
2020年12月30日
三重の養豚場で豚熱
三重県は29日、同県伊賀市の養豚場で豚熱が発生したと発表した。国内の養豚場での発生は25日の山形県に続き、61例目となる。県は感染拡大防止のため、この農場が飼養する豚6600頭を殺処分する。
県によると28日朝、農場から飼養する豚20頭が死亡していると通報があった。県中央家畜保健衛生所が検体を遺伝子検査して陽性を確認し、29日に国の検査でも陽性となり、患畜と判明した。
三重県の養豚場での発生は2019年7月のいなべ市(国内32例目)以来2例目。県内では同年10月から、全農場で飼養豚への予防的ワクチン接種を始めていた。
農水省は同日、防疫対策本部を持ち回りで開き、殺処分などの防疫措置や発生農場周辺で消毒作業を強化すること、疫学調査チームを派遣することなどを確認した。
冬季は野生のイノシシが餌を求めて行動範囲を広げる時季で注意が必要だ。相次ぐ豚熱の発生を受け、宮崎大学農学部の末吉益雄教授は「冬は山で餌が少なくなり、人里近くにも現れやすい。イノシシと人や車との交差汚染に特に気を付ける必要がある」と指摘する。
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2020年12月30日
餅による窒息 コロナ下注意 運動不足で筋力衰え 高齢者リスクさらに
餅を食べる機会の多い正月三が日に、窒息による死亡事故が多発しているとして、消費者庁が注意を呼び掛けている。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、特に高齢者は運動不足が懸念されており、専門家は「口の中の筋力が衰え、窒息の危険が高まっている」と指摘する。
同庁が2018、19年の厚生労働省の人口動態調査を独自に分析したところ、餅による65歳以上の窒息死亡事故は2年間で計661件発生。このうち4割が1月に集中し、正月三が日の発生件数は127件だった。男女別では、男性が女性の2・6倍と多かった。年齢別では80~84歳が168人で最も多く、85~89歳160人、75~79歳108人と続く。
東京都内で高齢者の栄養指導をする米山久美子管理栄養士は「高齢者はコロナ下の外出自粛で運動不足となり、全身の筋力が低下している。かむ力、のみ込む力も弱まっている」と窒息リスクの高さを指摘する。餅を食べるときは①小さく切る②喉を潤す③よそ見をせずゆっくりよくかむ──ことを注意点に挙げる。
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2020年12月30日
21年産米 目安削減17万トンどまり 需給均衡「36万トン」と隔たり 本紙調べ
日本農業新聞は28日、道府県の農業再生協議会などが示した2021年産主食用米の「生産の目安」をまとめた。同日までに示した41道府県の目安の合計は、20年産が作況100だった場合の生産量と比べ約17万トン減にとどまった。農水省は需給均衡に向け同36万トンの削減が必要だとしているが、目安の段階から大きな落差が生じている。このまま目安に沿って作付けを進めても、需給改善は難しい。
全都道府県の再生協などに聞き取った。……
2020年12月29日
かんがい6割ピンチ 世界食料農業白書 水不足、アジア顕著
世界のかんがい農地の6割以上が水不足に困っている。国連食糧農業機関(FAO)が年次報告書の「世界食料農業白書2020」で明らかにした。アジアなどで大きな問題になっているとして、各国に干ばつに強い品種開発や効率的に水を利用する技術開発などを呼び掛けている。
報告書によると、世界のかんがい農地の62%に当たる1億7089万ヘクタールが水不足に直面している。その大半(1億4400万ヘクタール)がアジア地域だ。例えば、シリアやイエメンなどアジア18カ国では、かんがい農地の全域、インドでは9割以上が水不足となっている。
水不足の要因としてFAOは、地球温暖化によって多発する干ばつや、大量の水を必要とする畜産飼料の生産拡大などを挙げている。さらに、人口の増加、所得水準が上がり、水を大量に消費する生活習慣への移行もあるという。対策として、干ばつに耐性のある品種開発や、穀物飼料を給餌する畜産生産から放牧への転換が重要だと指摘する。また、食肉や乳製品だけでなく青果物も摂取することで、栄養バランスを保ち、水の節約にもつながるとしている。
FAOは、水不足がこのまま続くと国連が掲げている2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)の実現が難しいと警鐘を鳴らす。その上で、「効率的に水を利用することが、SDGsの達成を可能にする」と強調する。
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2020年12月28日
農政アクセスランキング
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[新型コロナ] 4都県で緊急事態宣言 全飲食店 夜8時まで時短 外食業界 疲弊が加速
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「自己判断」に不信募る
東京都は時短要請に応じる飲食店への協力金を1日5万円に増額し、従来の事業者単位から店舗単位での支給を検討している。
都内で「和食日和おさけと」を5店舗展開する山口直樹社長(39)は、協力金増額が決まれば、全店舗を一時休業する方針だ。1都3県の時短拡大や菅義偉首相の緊急事態宣言の検討表明後、キャンセルが相次いだ。午後7時の酒類提供中止で、「店を開けておく意味はない」と判断した。政府や都が「要請」の形で時短を迫ることに対し、「休業してくれというべきだ。飲食店の自己判断というやり方は卑怯(ひきょう)」と憤る。
協力金が支給されない大手外食チェーンは要請に応じるところが多い。居酒屋などを展開するコロワイドやファストフードの日本KFCホールディングス、牛丼大手の吉野家は、政府の緊急事態宣言発出と同時に、対象地域の店舗の時短を実施する方針。「お客さんは午後6時すぎから来るのに、午後7時で酒類提供ストップでは営業にならない」(大手外食)と不満が募る。
そのため、一部の大手では既に時短要請に応じない店舗もあり、「個人経営の飲食店の中には協力金を受け取った上で、午後10時に外灯を消し、こっそり営業しているところもある」(同)、「時短で感染が防げるのか疑問だが、口にできない」(別の大手外食)と、不公平感が強まっている。
時短や休業は飲食店の経営だけでなく、食材の仕入れ先から生産者まで影響が波及するのは避けられない。神奈川県の黒岩祐治知事は4日夜の1都3県知事のウェブ会議で、「飲食店への時短要請に伴って、仕入れ先の関連業者も影響を受けている」と述べ、卸業者などへの支援を国に働き掛ける考えを示した。
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2021年01月06日

2
21年産米 作付け転換へ10アール4万円 水田交付金 深掘り支援拡充
農水省は14日、2021年産米の需給均衡に向けた対応策を示した。水田活用の直接支払交付金の「前倒し対策」を20年度第3次補正予算に盛り込み、輸出・加工用米、麦・大豆、野菜への転換に、10アール当たり4万円を助成。同交付金には21年度予算で前年同額の3050億円を計上し、転作を拡大した場合の加算措置などを拡充する。計3400億円の予算を確保し、「過去最大規模」の転換を後押しする。
前倒し対策は、3次補正予算に290億円を盛り込んだ「水田リノベーション事業」。……
2020年12月15日

3
「水田リノベ」要件示す 低コスト化取り組み 農水省転作支援
農水省は、2021年産の転作支援策として20年度第3次補正予算に盛り込んだ「水田リノベーション事業」の交付要件となる、低コスト生産などの取り組みを示した。輸出・加工用米は、直播(ちょくは)や疎植、温湯種子消毒など15項目から三つ以上を選ぶ。取り組んだ面積10アール当たり4万円を交付する。
輸出・加工米 3項目以上選択
麦は重要病害虫の防除など10、大豆は難防除雑草対策など14、野菜・果樹など高収益作物は生物農薬の導入など11項目……
2020年12月23日

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[新型コロナ] 技能実習生 再就労 7割食農分野 「コロナ解雇」受け皿に
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で解雇されるなどした外国人技能実習生を対象に一度限りの職種変更を認める「特定活動」の資格へ移行した約7割が、農業や食品製造業を新たな職種に選び、就労先を見つけていたことが分かった。法務省出入国在留管理庁が調べた。実習生の再就労の実態が明らかになるのは初めてで、世界的な社会・経済不安の中でも「食」を巡る産業が雇用の受け皿となっていることを裏付けた。
外国人技能実習機構によると、政府が緊急事態宣言を発令する直前の2020年3月時点で入国していた、もしくは入国予定だった実習生は計36万6167人。……
2020年12月30日

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畜産物輸出最多ペース アジア圏家庭向け伸び 鶏卵で顕著
日本から海外への畜産物の輸出額が過去最高ペースで推移している。世界的な新型コロナウイルスの感染拡大でレストラン向けの需要が激減する中でも、アジア圏を中心に家庭消費向けで大きく伸ばした。落ち込んでいた牛肉も盛り返してきており、各国の消費環境の変化に応じた販売戦略が功を奏している。
財務省の貿易統計によると、2020年1~11月の牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵の輸出額は前年同期比6%増の327億円。過去5年で2倍超に急伸した。全体の8割近くを占める牛肉は同4%減の251億円となったが、回復傾向にある。鶏卵が同114%増の42億円、豚肉が同50%増の15億円と大きく伸びた。
鶏卵の伸びの背景には、香港向け輸出の急拡大がある。全体の9割超を占める香港向けの20年の輸出額は41億円。前年から2倍に増加した。現地の情勢に詳しい香港貿易発展局は「すき焼きブームで日本産は生食できることが認識され、新型コロナ下では、自宅で卵掛けご飯を楽しむ人が増えた」と指摘する。
豚肉も、銘柄豚を中心に自宅でのしゃぶしゃぶ人気が高まったという。
牛肉は欧米向けが急減し、4月は前年同月比44%減の14億円にまで落ち込んだものの、6月以降回復。直近の11月は同14%増の32億円となった。アジアを中心に、これまでレストランでの消費が主流だった和牛を、家庭消費向けに売り込む動きが活発化している。
ディスカウント店「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは、海外店舗で家庭向けの和牛商品を強化した。11月に香港にオープンした店舗では、ステーキやしゃぶしゃぶ用の和牛が売り上げ上位を独占し、「今後も伸びが期待できる」とみる。
政府は、30年の日本産農林水産物・食品の輸出額5兆円の達成に向け、牛肉は19年の297億円から25年に1600億円、鶏卵は同23億円から同63億円に増やす目標を掲げる。今後、生産者や輸出業者らが連携して輸出促進に取り組むモデル産地の育成や、マーケットインの考えに基づいた販路開拓などを通じ、輸出拡大につなげていく考えだ。
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2020年12月31日

6
緊急事態宣言 ガイドライン順守を コロナ感染防止で農水省
農水省は緊急事態宣言の再発令を受け、農家に新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた業種別ガイドラインの順守を呼び掛ける。ガイドラインは大日本農会のホームページに掲載。日々の検温や屋内作業時のマスク着用、距離の確保などの対策をまとめている。感染者が出ても業務を継続できるよう、地域であらかじめ作業の代替要員リストを作ることも求める。
ガイドラインは①感染予防対策②感染者が出た場合の対応③業務の継続──などが柱。予防対策では、従業員を含めて日々の検温を実施・記録し、発熱があれば自宅待機を求める。4日以上症状が続く場合は保健所に連絡する。
ハウスや事務所など、屋内で作業する場合はマスクを着用し、人と人の間隔は2メートルを目安に空ける。機械換気か、室温が下がらない範囲で窓を開け、常時換気をすることもポイントだ。畑など屋外でも複数で作業する場合は、マスク着用や距離の確保を求める。
作業開始の前後や作業場への入退場時には手洗いや手指の消毒を求めている。人が頻繁に触れるドアノブやスイッチ、手すりなどはふき取り清掃をする。多くの従業員が使う休憩スペースや、更衣室は感染リスクが比較的高いことから、一度の入室人数を減らすと共に、対面での会話や食事をしないなどの対応を求める。
感染者が出た場合は、保健所に報告し、指導を受けるよう要請。保健所が濃厚接触者と判断した農業関係者には、14日間の自宅待機を求める。保健所の指示に従い、施設などの消毒も行う。
感染者が出ても業務を継続できるよう、あらかじめ地域の関係者で連携することも求める。JAの生産部会、農業法人などのグループ単位での実施を想定。①連絡窓口の設置②農作業代替要員のリスト作成③代行する作業の明確化④代替要員が確保できない場合の最低限の維持管理──などの準備を求める。
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2021年01月09日

7
岐阜で鳥インフル 疑似患畜を確認 今季14県目全国で34例目
農水省と岐阜県は2日、同県美濃加茂市の採卵鶏農場で、鳥インフルエンザの疑似患畜を確認したと発表した。高病原性と確認されれば、今季14県目、全国で34例目の発生となる。県は発生農場の約6万8000羽を殺処分する。
1日に発生農場が鶏の元気がないと県に通報し、同日中に簡易検査で陽性を確認。2日にH5亜型と判定した。
同省は2日、鳥インフルエンザ防疫対策本部を開催し、疫学調査チームの派遣などに着手。県は防疫措置を進める他、発生農場周辺の消毒を強化し、主要道路に消毒ポイントを設置する。
岐阜県は採卵鶏の農場数が90戸で全国5位、羽数は524万羽で16位となっている。発生農場から3キロ圏内(移動制限区域)では6戸が約12万羽を、3~10キロ圏内(搬出制限区域)は26戸が約100万羽を飼養する。
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2021年01月03日
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鳥インフル 3割で移動制限解除 発生想定し演習実施を 農水省
過去最大規模の被害となっている高病原性鳥インフルエンザについて、今季14県19市町で発生した34例のうち、4日までに3割に当たる11例で移動制限区域(発生農場から半径3キロ圏内)が解除された。移動制限は防疫措置が完了して21日後から解除できる。農水省は、大規模な農場での発生が相次ぐことを受け、都道府県に大規模農場での発生を想定して演習をするよう呼び掛けた。
4日までに移動制限が解除されたのは、香川県東かがわ市で発生した今季2例目と、福岡県宗像市の9例目、兵庫県淡路市の10例目、宮崎県日向市と都農町、都城市、小林市の11、12、15、18、19例目、奈良県五條市の16例目、大分県佐伯市の20例目、和歌山県紀の川市の21例目──の11例。新たな発生がなければ、今月中旬には、香川県三豊市での12例分も含め、ほとんどの移動制限が解除される見込みだ。
過去最多の殺処分羽数となった千葉県いすみ市の今季32例目の農場では、12月24日の発生確認後、当初より早い今月2日に約114万羽の殺処分が完了。羽数の多さから防疫措置の完了には時間がかかる見通しだ。
岐阜県美濃加茂市で2日に確認した34例目の農場は、4日午後2時時点で約5万羽の殺処分が完了。5日には防疫措置を完了させたい考えだ。
今シーズンは、数十万羽規模の養鶏場での発生も相次ぐ。農水省は昨年末、各都道府県で最大の飼養規模の農場で発生したことを想定して机上防疫演習をするよう通知を出した。飼養衛生管理基準の資料も再配布し、防疫対策の徹底も訴えている。
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2021年01月05日
9
エコフィード新基準 加熱処理を拡大、厳格に 豚熱対策 4月から運用
農水省は、食品残さから製造する飼料「エコフィード」の新しい加熱基準などをガイドラインにまとめ、2021年4月から運用を始める。豚熱やアフリカ豚熱の感染拡大を防ぐ対策の一環。新基準では対象となる食品残さの種類を広げ、加熱処理を厳格化する。
加熱処理の対象は「生肉などが混入している可能性があるもの」から「肉を扱う事業所等から排出されるもので、肉と接触した可能性があるもの」に拡大。加熱基準は「70度30分以上または80度3分以上」から「攪拌(かくはん)しながら90度60分以上または同等以上」に厳しくした。加熱処理の記録作成と2年間の保管も求める。
調理済みのハムやソーセージなどの肉加工品も原則、新たな加熱基準の対象とする。ただし、食品製造段階で中心温度が70度で30分以上加熱されたと確認できる場合や、豚以外の家畜の飼料で豚用とは別の製造ラインで作る飼料は対象外となる。
飼料製造業者だけでなく、食品残さを自ら収集して豚に与える農家も、新基準の加熱処理が求められる。加熱処理が必要な残さは、農場内の衛生管理区域内に持ち込まないことも定めた。
これまで食品残さの飼料利用は通知で規定していたが、今回の見直しで省令により規定し制度化した。違反した場合は、罰則の対象になる。
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2021年01月07日

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日英EPAが発効
日本と英国の経済連携協定(EPA)が1日、発効した。農産物の関税は、日本と欧州連合(EU)のEPAと同じ税率を適用。日欧EPAで輸入枠を設けた25品目については、英国に輸入枠を新設しない。ブルーチーズを含むソフト系チーズ、ココアや小麦粉の調整品など10品目は、日欧EPAの輸入枠が余った分に限り、英国産にも低関税を適用する。
牛肉や豚肉など、日欧EPAでセーフガード(緊急輸入制限措置)を設定した品目は、英国とEUから輸入量の合計が日欧EPAの発動基準数量を超えた場合、英国に発動する。日欧EPAと同様に、米は関税削減・撤廃の対象から除外した。
日本からの農産物輸出は、牛肉や茶など主要な関心品目で、日欧EPAと同様に英国側が関税を即時撤廃した。
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2021年01月01日