貿易交渉報道2018年10月

TPP11 年内発効か 関税 4月 2年目水準に
米国を除く11カ国によるTPPの新協定(TPP11)が年内に発効する可能性が出てきた。各国の国内手続きが順調に進んでいるためだ。発効されれば、農林水産物の82%で関税を撤廃し、重要品目でも関税削減や輸入枠を設定する。牛肉の関税は現在の38・5%から1年目27・5%に削減。豚肉の高価格帯の従価税も4・3%から2・2%に下がり、米は特別輸入枠を設定する。日本農業は、過去最大の市場開放を迎える。
TPP11の手続きは国内で協定などの議会承認を受け、取りまとめ役のニュージーランド(NZ)に通知する。6カ国の通知が完了してから60日後に発効する。メキシコと日本、シンガポール、NZは既に手続きを終えた。オーストラリアとカナダも議会承認を終えており、最終的な手続きが11月1日までに完了すれば、12月末発効の条件が整う。
茂木敏充経済再生・環太平洋連携協定(TPP)担当相は26日の閣議後会見で、両国の手続きが近く終わるとの見通しを示し、「年明け早々までの発効がほぼ確実になった」と述べた。
関税率などは年内に発行すれば1年目の水準が適用され、2019年4月から2年目の水準になる。その後、毎年4月に切り替わる。
牛肉は、段階的に削減し、16年目に9%になる。セーフガード(緊急輸入制限措置)の発動数量は発効時が年間59万トン。発動時の税率は現行の50%から1年目に38・5%に下がる。豚肉は差額関税制度を維持した上で、低価格帯の従量税、高価格帯の従価税を段階的に下げ、最終的に従量税50円だけになる。
発効と同時に、牛豚の経営安定対策(マルキン)を法制化し、補填(ほてん)率を8割から9割に引き上げる。牛マルキンは18年度に限り予算措置で引き上げた。
参加国は発効に合わせ閣僚級の「TPP委員会」を開き、協定の運用ルールを決める。第1回は日本開催が有力。国内手続きを終えて60日経過した「締約国」がメンバーになる。
日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)は、早ければ2月1日にも発効する。
2018年10月27日
日米貿易交渉 過去の協定が最大 対欧は発効急ぐ 臨時国会首相所信表明
第197臨時国会が24日、召集された。安倍晋三首相は所信表明演説で「日本は自由貿易の旗手」として、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の早期発効を目指す考えを示した。環太平洋連携協定(TPP)並みの大規模な市場開放となるため徹底した議論が求められる。日米貿易交渉は、農産品の市場開放は「過去の経済連携協定で約束した内容が最大限」と強調。ただ、過去の協定では一部品目でTPPを上回る譲歩をしており、日米交渉でもその可能性がある。
政府は、臨時国会に日欧EPAの承認案を提出する。首相は日欧EPA発効で和牛やブリ、日本酒の輸出関税が即時撤廃され「日本の農林水産物にチャンスが広がる」とした。「農家の不安にもしっかり向き合い、安心して再生産ができるよう、十分対策を講じていく」とも語った。
日米は9月の首脳会談で貿易協定交渉入りに合意した。首相は演説の中で、この協定を「日米物品貿易協定」と呼び、国内に慎重論が強い自由貿易協定(FTA)交渉とは異なるとの立場を改めて示した。米国側は、従来の経済連携協定以上の市場開放要求をちらつかせる。生産現場からはTPPを下回る水準を求める声も多く、国会審議の焦点になりそうだ。
「農林水産新時代」を掲げ、米の取引価格の回復や輸出拡大、生産農業所得増加などを実績に挙げた。中国向け精米輸出施設の追加で合意したことを踏まえ、米の対中輸出拡大に意欲を示した。
西日本豪雨や北海道地震、台風などの被害が相次ぐ中、政府は復旧対策を盛り込んだ補正予算案を編成。「ハウスの再建や果樹の植え替えなどの営農再開に向けた支援」に力を入れるとした。
政府は外国人材受け入れ拡大に向けて、新たな在留資格創設を盛り込んだ入国管理法改正案を臨時国会に提出する方針。「即戦力となる外国人材を受け入れる」とし、生活環境の確保などに取り組む考えを示した。
農林業に続き、水産業の改革にも切り込む姿勢を示した。
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2018年10月25日
年内手続き完了へ 来年2月にも発効 日欧EPA
日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が来年2月1日にも発効する見通しであることが23日、分かった。外務省幹部が自民党外交部会で、EU側の手続きが12月中旬にも完了するとの見通しを明らかにした。日本は臨時国会での承認を目指す。日本とEUが12月中に手続きを終え、互いに通知した日の「翌々月の初日」に発効する。米国を除く11カ国によるTPPの新協定(TPP11)は1月中旬にも発効する。大型協定が相次ぎ発効し、日本農業は過去にない大きな市場開放を迎える。
日欧EPAは、安倍晋三首相とユンケル欧州委員長は18日の首脳会談で、年内の手続き完了に向けて努力することで一致している。
日欧EPAは輸入農林水産物の82%で関税を撤廃。TPP並みの市場開放となる。重要品目ではチーズなどの乳製品や、豚肉、菓子、ワインなどEU産の競争力のある産品の市場を開放する。臨時国会では十分な審議時間の確保や、合意内容を巡る政府側の丁寧な説明が求められそうだ。
TPP11は6カ国以上の国内手続きが終わってから60日後に発効する。メキシコ、日本、シンガポールが完了している。
オーストラリアは議会承認まで完了。ニュージーランドも近く議会の手続きを終える。政府関係者によると、ベトナム、カナダが今年11月中旬までに国内手続きを完了する予定だ。
2018年10月24日

米国、TPP復帰見込み薄 水準見直し うやむや
米国を除く11カ国による環太平洋連携協定の新協定(TPP11)が来年1月に発効する公算が大きくなる中、協定の見直しがうやむやになったまま発効する恐れが出てきた。日本政府は、日米交渉開始などで米国のTPP復帰が見込めなくなった場合、TPP11の乳製品の低関税輸入枠や牛肉・豚肉などのセーフガード(緊急輸入制限措置)を見直すとしていた。米国とは物品貿易協定(TAG)交渉開始で合意したが、政府はTPP11の見直し時期を明確にしていない。
TPP11交渉で、日本は将来の米国復帰を前提に、元の12カ国によるTPPで約束した農産物の市場開放水準をそのまま容認した。
例えばバター・脱脂粉乳の低関税輸入枠は、米国の参加を前提に設定した7万トンのまま。牛肉のセーフガードも、本来なら輸入量の4割を占める米国分を差し引かなければ輸入急増を食い止められなくなる恐れがあるが、日本は交渉妥結を優先し修正を求めなかった。
TPP11は、米国のTPP復帰が見込めなくなった場合、参加国の要請に応じて協定の見直し協議をすると定める。日本政府は、この規定に基づき、日米自由貿易協定(FTA)の交渉開始などの際、低関税輸入枠やセーフガードの見直しを求めると説明していた。
日本はTPP11の早期発効へ、各国に国内手続きを急ぐようハッパを掛ける。だが、肝心の協定の見直し時期は「米国の新たな通商政策の動向などを見極めながら判断する」(TPP等政府対策本部)と口を濁す。
TPP11が発効すれば、日本の工業製品の最大の輸出先である米国の参加を前提に、やむなく認めた農産物の市場開放の水準が米国を除く11カ国に適用される。
野党農林議員は「早期に見直しをしないなら、約束違反だ。政府は見直し時期をはっきりさせるべきだ」と追及の構えだ。
2018年10月23日
臨時国会24日開幕 通商政策が焦点
臨時国会が24日に召集される。政府は、西日本豪雨や北海道地震などの被災農家の再建対策費を含む2018年度第1次補正予算案の成立や、EUとのEPAの承認を目指す。農林水産関連の政府提出法案は、地理的表示(GI)法改正案と水産改革を盛り込んだ漁業法改正案の2本となる見通しだ。会期は12月10日までの48日間。
政府は補正予算案を11月上旬までに成立させたい考え。提出法案はできるだけ絞り込んで成立を目指すが、与野党がぶつかる対決法案が少なくない。答弁慣れしていない新閣僚に対し、与党内からは早くも会期内成立を危ぶむ声が出ている。
日欧EPAで、日本は農林水産品でTPP並みの82%の関税を撤廃する。政府は、国内手続きを終えた米国を除く11カ国によるTPPの新協定(TPP11)と共に発効を急ぐ。農産物の大幅な市場開放に踏み出すだけに、現場への影響を含め徹底審議が求められる。
日米首脳会談で合意したTAG交渉も論点になりそうだ。政府は「包括的なFTAとは異なる」と説明するが、米国側はサービスを含む幅広いFTA交渉やTPP以上の農産物の市場開放要求を示唆。日米の認識の違いが露呈しており、野党はこうした矛盾点を追及する構えだ。
漁業法改正案は、これまで地元漁協を優先してきた漁業権制度の見直しを含む。企業などの新規参入を促す狙いもあり、激しい論戦が予想される。
外国人労働者の受け入れ拡大に向けた、出入国管理法改正案も焦点となる。新たな在留資格の新設が柱で、農業を含め、深刻な人手不足に悩む現場の要請は大きいが、移民政策につながりかねないとの指摘もあり、大きな議論を呼びそうだ。
2018年10月22日
日米物品貿易協定 米政権が議会通知 1月中旬にも交渉入り
トランプ米政権は16日、日本との貿易交渉に入ることを議会に通知した。早ければ日米物品貿易協定(TAG)交渉が来年1月14日から可能になる。交渉開始の30日前には米国政府が議会に交渉方針を示すことになっており、12月15日にも具体的にどの分野に照準を当てるかが明らかになる。米国通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は上下両院に提出した文書で自動車、農業、サービス分野を中心に市場開放が不十分だと指摘。日本への圧力を強める姿勢を鮮明にした。
米国の貿易交渉の手続きを定めた大統領貿易促進権限(TPA)法では、交渉開始の90日前までに議会に通知することを政府に求めている。USTRは、正式な交渉開始の30日前までに交渉の詳しい目的を公表することにもなっている。
ライトハイザー代表は通知文書で、「自動車や農業、サービスなどの主要分野の輸出は数十年間、多くの関税や非関税障壁によって困難を強いられてきた」と指摘。その上で、「関税と非関税障壁の両方に対処し、公平でよりバランスの取れた貿易を成し遂げる」と対日交渉での関税と非関税障壁の改善に意欲を表明。実質的な自由貿易協定(FTA)交渉とも取れる認識を明記した。
日米共同声明では農業分野を巡り、「過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限」との日本の立場を明記した。ただ、交渉を担当する茂木敏充経済再生・環太平洋連携協定(TPP)担当相は、「全体としてはTPPが最大限」としつつも一部品目でTPP以上の譲歩の可能性を否定していない。
米国のパーデュー農務長官は日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)以上の譲歩を要求。農業分野をはじめ交渉は予断を許さない状況となっている。
交渉入りに向けた議会通知を受け、米国の農業団体からは、歓迎の声が上がった。全米豚肉生産者協議会(NPPC)は、米国の追加関税措置に対する中国やメキシコの報復関税で、輸出が打撃を受けてきたことに触れ「日本と貿易協定を結べば、我慢が報われる」とし、豚肉市場の開放に強い期待を示した。
トランプ政権は同日、EU、英国との貿易交渉入りの意向も通知した。
2018年10月18日
TPP11 来年1月発効の公算 「来月にも手続き完了」 茂木担当相
茂木敏充経済再生・環太平洋連携協定(TPP)担当相は16日、米国を除く11カ国によるTPPの新協定(TPP11)の発効に必要な各国の手続きが11月中に完了するとの見通しを明らかにした。完了すれば60日後の来年1月に発効する公算。日本は重要品目も含めた農産物の大幅な市場開放を迎える。
TPP11は、6カ国が国内手続きを終えて60日後に発効。現在はメキシコ、日本、シンガポールが完了している。
茂木担当相は、TPP参加の駐日大使らと会談し「一日も早く国内手続きを完了してほしい」と要請。11月中旬のアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議までにめどを付けたいとした。
各国大使らは議会審議などの進捗(しんちょく)を説明。茂木担当相は記者会見で「11月中にも6カ国の国内手続きが完了するとの見通しを得ることができた」と強調。ニュージーランド、ベトナムなどが完了するとみられる。
TPP11の農業分野では、米国を含む当初の内容を維持。日本は輸入する農林水産物の82%の関税を撤廃する。重要品目では、牛肉は関税38・5%を最終的に9%に削減、乳製品は7万トンの輸入枠を新設。麦や豚肉、砂糖なども市場開放する。1月発効の場合、関税率は発効時に1年目の水準、4月から2年目の水準となる。
国内対策の一環で、発効と同時に牛豚の経営安定対策(マルキン)を法制化、補填(ほてん)率を9割に引き上げる。加糖調製品を調整金の対象にする。
日本は欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)も臨時国会での承認を目指しており、EU側の手続きが済めば、TPP11と近い時期に発効することになる。
個別品目は交渉次第 TPP超譲歩 可能性を示唆
茂木敏充経済再生・TPP担当相は16日の閣議後会見で、日米物品貿易協定(TAG)交渉の農林水産物の扱いについて、個別品目は「どうするか、今の段階で決まっているわけではない」と述べ、交渉次第との見方を示した。個別品目ではTPPの水準を超える譲歩の可能性を示唆した。この発言が与野党に波紋を広げている。
同日の会見で、茂木担当相は「全体的」な譲歩の範囲として「最大限のものはTPP」と言及。個別品目での交渉に含みを持たせた。
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2018年10月17日

「一部品目 TPP超え」 与党困惑、野党批判強める 担当相発言に波紋
日米物品貿易協定(TAG)交渉の農林水産品の扱いを巡り、茂木敏充経済再生・環太平洋連携協定(TPP)担当相の発言が波紋を広げている。一部品目でTPP以上の譲歩を示唆。16日の閣議後会見でも含みを持たせる発言をした。与党には懸念が広がり、野党は批判を強めている。
茂木氏はテレビ番組で、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)を念頭に、品目によってはTPP以上の譲歩を「否定しない」と述べた。16日の会見でも個別品目を「どうするか今の段階で決まっていない」と述べた。
吉川貴盛農相は同日の会見で「農林水産品でそれ(TPP)以上の状況はない」とした上で、茂木氏の発言は「全体としての話をされた」と述べるにとどめた。
自民党TPP・日EU・日米TAG等経済協定対策本部長の森山裕国会対策委員長は「われわれの理解は、今までの経済連携協定を超える市場開放はないということだ」と強調した。乳製品などで、日欧EPA並みの市場開放を認めるなら、米国は日欧EPAと同様に除外しないといけないとして、「いいとこ取りはあり得ない」とくぎを刺す。
野村哲郎農林部会長は「党への説明はなかった。なぜこうした発言をするのか」と困惑。「政府がどう交渉を進めようとしているのか見えない。農家が不安にならないような交渉をすべき」と訴える。
立憲民主党の佐々木隆博副代表は、共同声明の文言を巡る政府の説明に対し、「目先のごまかしで乗り切ろうとした姿勢が今の事態を生んでいる。米国の圧力に、押し込まれる」と懸念する。
国民民主党の篠原孝元農水副大臣は、米国のパーデュー農務長官が日欧EPAの水準以上を求める考えを示したことを引き合いに出し、「閣僚の発言は重い。『EU相手のものよりも譲れ』と言う米国の圧力に屈し続けている証拠だ」と批判した。
2018年10月17日
日米関税交渉 一部はTPP超えも 可能性否定せず 茂木担当相
茂木敏充経済再生・環太平洋連携協定(TPP)担当相は、日米物品貿易協定(TAG)の農林水産品の扱いを巡り、一部品目でTPPの水準を超える譲歩をする可能性について、「否定しない」との認識を示した。欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)で、TPPより譲歩した品目があることを念頭にした発言とみられる。日米共同声明にある農林水産品の譲歩の「最大限」の解釈を巡り、議論を呼びそうだ。
14日夜に放送されたテレビ番組のインタビューで述べた。TAG交渉入りで合意した日米共同声明では、農産品を巡る日本の立場について「過去の経済連携協定」の譲歩が「最大限」と明記しており、茂木担当相は「パッケージとしては、これまで以上のことはできないと明確に(米国に)伝えてある」と説明した。
「過去の経済連携協定」について、担当相は「率直に申し上げると、TPPが最大限ということは間違いない」と述べた。
一方、日欧EPAでは、TPPで関税を維持した品目でも輸入枠を設けて撤廃するチーズなど、TPP以上の譲歩といえる品目がある。
TAG交渉での個別品目について、担当相は「米国側と議論することは出てくると思う」と述べ、TPP以上の水準になる可能性をにじませた。共同声明に、TPPの表記がなかったのは「米側の好みもある。トランプ大統領はTPPという言葉が好きではないようだ」と述べ、米国側に配慮した結果との考えを明らかにした。
トランプ政権はTAGを巡り、米国を除く11カ国によるTPP11だけでなく日欧EPAを強く意識する。米国のパーデュー農務長官は、TAGで日欧EPA以上の譲歩を日本に求める姿勢を強調。ライトハイザー米国通商代表部(USTR)代表は茂木氏との閣僚級貿易協議(FFR)で多国間交渉を重視する日本側に対し、日欧EPAを引き合いに2国間交渉を求めてきた経緯がある。
2018年10月16日
自民 TPP等 対策本部長に森山氏
自民党は15日、通商交渉の責任者となる「TPP・日EU・日米TAG等経済協定対策本部長」に森山裕国会対策委員長を充てる人事を決めた。日米のTAG交渉の本格化を見据え、TPP交渉でまとめ役を担ってきた森山氏を引き続き本部長に据え、政府・与党一体で交渉に対応する狙い。農林部会長は、野村哲郎参院議員の再任を正式に決めた。
同日の臨時総務会で、党の本部長や部会長などの人事が了承された。日米間でTAG交渉の開始で合意したことなどを踏まえて、従来の「TPP・日EU等経済協定対策本部」を改称。森山氏が本部長を続投する。
森山氏は党TPP対策委員長、農相、衆院TPP特別委員会与党筆頭理事などを歴任。一貫してTPPやEUとのEPAなどに携わり、国内農業対策の予算獲得などに手腕を発揮してきた。
地方創生実行統合本部長には河村建夫氏、人工知能未来社会経済戦略本部長には塩谷立氏が、それぞれ再任された。一方、政務調査会などの組織改革の一環として党の農林水産業・地域の活力創造本部は廃止となる。
他の部会長は次の通り。
▽内閣第1=猪口邦子▽内閣第2=平将明▽国防=山本朋広▽総務=赤間二郎▽法務=長谷川岳▽外交=松下新平▽財務金融=越智隆雄▽文部科学=赤池誠章▽厚生労働=小泉進次郎▽水産=伊東良孝▽経済産業=西村明宏▽国土交通=伊藤忠彦▽環境=渡嘉敷奈緒美
2018年10月16日
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TPP11 年内発効か 関税 4月 2年目水準に
米国を除く11カ国によるTPPの新協定(TPP11)が年内に発効する可能性が出てきた。各国の国内手続きが順調に進んでいるためだ。発効されれば、農林水産物の82%で関税を撤廃し、重要品目でも関税削減や輸入枠を設定する。牛肉の関税は現在の38・5%から1年目27・5%に削減。豚肉の高価格帯の従価税も4・3%から2・2%に下がり、米は特別輸入枠を設定する。日本農業は、過去最大の市場開放を迎える。
TPP11の手続きは国内で協定などの議会承認を受け、取りまとめ役のニュージーランド(NZ)に通知する。6カ国の通知が完了してから60日後に発効する。メキシコと日本、シンガポール、NZは既に手続きを終えた。オーストラリアとカナダも議会承認を終えており、最終的な手続きが11月1日までに完了すれば、12月末発効の条件が整う。
茂木敏充経済再生・環太平洋連携協定(TPP)担当相は26日の閣議後会見で、両国の手続きが近く終わるとの見通しを示し、「年明け早々までの発効がほぼ確実になった」と述べた。
関税率などは年内に発行すれば1年目の水準が適用され、2019年4月から2年目の水準になる。その後、毎年4月に切り替わる。
牛肉は、段階的に削減し、16年目に9%になる。セーフガード(緊急輸入制限措置)の発動数量は発効時が年間59万トン。発動時の税率は現行の50%から1年目に38・5%に下がる。豚肉は差額関税制度を維持した上で、低価格帯の従量税、高価格帯の従価税を段階的に下げ、最終的に従量税50円だけになる。
発効と同時に、牛豚の経営安定対策(マルキン)を法制化し、補填(ほてん)率を8割から9割に引き上げる。牛マルキンは18年度に限り予算措置で引き上げた。
参加国は発効に合わせ閣僚級の「TPP委員会」を開き、協定の運用ルールを決める。第1回は日本開催が有力。国内手続きを終えて60日経過した「締約国」がメンバーになる。
日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)は、早ければ2月1日にも発効する。
2018年10月27日

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臨時国会24日開幕 通商政策が焦点
臨時国会が24日に召集される。政府は、西日本豪雨や北海道地震などの被災農家の再建対策費を含む2018年度第1次補正予算案の成立や、EUとのEPAの承認を目指す。農林水産関連の政府提出法案は、地理的表示(GI)法改正案と水産改革を盛り込んだ漁業法改正案の2本となる見通しだ。会期は12月10日までの48日間。
政府は補正予算案を11月上旬までに成立させたい考え。提出法案はできるだけ絞り込んで成立を目指すが、与野党がぶつかる対決法案が少なくない。答弁慣れしていない新閣僚に対し、与党内からは早くも会期内成立を危ぶむ声が出ている。
日欧EPAで、日本は農林水産品でTPP並みの82%の関税を撤廃する。政府は、国内手続きを終えた米国を除く11カ国によるTPPの新協定(TPP11)と共に発効を急ぐ。農産物の大幅な市場開放に踏み出すだけに、現場への影響を含め徹底審議が求められる。
日米首脳会談で合意したTAG交渉も論点になりそうだ。政府は「包括的なFTAとは異なる」と説明するが、米国側はサービスを含む幅広いFTA交渉やTPP以上の農産物の市場開放要求を示唆。日米の認識の違いが露呈しており、野党はこうした矛盾点を追及する構えだ。
漁業法改正案は、これまで地元漁協を優先してきた漁業権制度の見直しを含む。企業などの新規参入を促す狙いもあり、激しい論戦が予想される。
外国人労働者の受け入れ拡大に向けた、出入国管理法改正案も焦点となる。新たな在留資格の新設が柱で、農業を含め、深刻な人手不足に悩む現場の要請は大きいが、移民政策につながりかねないとの指摘もあり、大きな議論を呼びそうだ。
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日米物品貿易協定 米政権が議会通知 1月中旬にも交渉入り
トランプ米政権は16日、日本との貿易交渉に入ることを議会に通知した。早ければ日米物品貿易協定(TAG)交渉が来年1月14日から可能になる。交渉開始の30日前には米国政府が議会に交渉方針を示すことになっており、12月15日にも具体的にどの分野に照準を当てるかが明らかになる。米国通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は上下両院に提出した文書で自動車、農業、サービス分野を中心に市場開放が不十分だと指摘。日本への圧力を強める姿勢を鮮明にした。
米国の貿易交渉の手続きを定めた大統領貿易促進権限(TPA)法では、交渉開始の90日前までに議会に通知することを政府に求めている。USTRは、正式な交渉開始の30日前までに交渉の詳しい目的を公表することにもなっている。
ライトハイザー代表は通知文書で、「自動車や農業、サービスなどの主要分野の輸出は数十年間、多くの関税や非関税障壁によって困難を強いられてきた」と指摘。その上で、「関税と非関税障壁の両方に対処し、公平でよりバランスの取れた貿易を成し遂げる」と対日交渉での関税と非関税障壁の改善に意欲を表明。実質的な自由貿易協定(FTA)交渉とも取れる認識を明記した。
日米共同声明では農業分野を巡り、「過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限」との日本の立場を明記した。ただ、交渉を担当する茂木敏充経済再生・環太平洋連携協定(TPP)担当相は、「全体としてはTPPが最大限」としつつも一部品目でTPP以上の譲歩の可能性を否定していない。
米国のパーデュー農務長官は日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)以上の譲歩を要求。農業分野をはじめ交渉は予断を許さない状況となっている。
交渉入りに向けた議会通知を受け、米国の農業団体からは、歓迎の声が上がった。全米豚肉生産者協議会(NPPC)は、米国の追加関税措置に対する中国やメキシコの報復関税で、輸出が打撃を受けてきたことに触れ「日本と貿易協定を結べば、我慢が報われる」とし、豚肉市場の開放に強い期待を示した。
トランプ政権は同日、EU、英国との貿易交渉入りの意向も通知した。
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米国、TPP復帰見込み薄 水準見直し うやむや
米国を除く11カ国による環太平洋連携協定の新協定(TPP11)が来年1月に発効する公算が大きくなる中、協定の見直しがうやむやになったまま発効する恐れが出てきた。日本政府は、日米交渉開始などで米国のTPP復帰が見込めなくなった場合、TPP11の乳製品の低関税輸入枠や牛肉・豚肉などのセーフガード(緊急輸入制限措置)を見直すとしていた。米国とは物品貿易協定(TAG)交渉開始で合意したが、政府はTPP11の見直し時期を明確にしていない。
TPP11交渉で、日本は将来の米国復帰を前提に、元の12カ国によるTPPで約束した農産物の市場開放水準をそのまま容認した。
例えばバター・脱脂粉乳の低関税輸入枠は、米国の参加を前提に設定した7万トンのまま。牛肉のセーフガードも、本来なら輸入量の4割を占める米国分を差し引かなければ輸入急増を食い止められなくなる恐れがあるが、日本は交渉妥結を優先し修正を求めなかった。
TPP11は、米国のTPP復帰が見込めなくなった場合、参加国の要請に応じて協定の見直し協議をすると定める。日本政府は、この規定に基づき、日米自由貿易協定(FTA)の交渉開始などの際、低関税輸入枠やセーフガードの見直しを求めると説明していた。
日本はTPP11の早期発効へ、各国に国内手続きを急ぐようハッパを掛ける。だが、肝心の協定の見直し時期は「米国の新たな通商政策の動向などを見極めながら判断する」(TPP等政府対策本部)と口を濁す。
TPP11が発効すれば、日本の工業製品の最大の輸出先である米国の参加を前提に、やむなく認めた農産物の市場開放の水準が米国を除く11カ国に適用される。
野党農林議員は「早期に見直しをしないなら、約束違反だ。政府は見直し時期をはっきりさせるべきだ」と追及の構えだ。
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年内手続き完了へ 来年2月にも発効 日欧EPA
日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が来年2月1日にも発効する見通しであることが23日、分かった。外務省幹部が自民党外交部会で、EU側の手続きが12月中旬にも完了するとの見通しを明らかにした。日本は臨時国会での承認を目指す。日本とEUが12月中に手続きを終え、互いに通知した日の「翌々月の初日」に発効する。米国を除く11カ国によるTPPの新協定(TPP11)は1月中旬にも発効する。大型協定が相次ぎ発効し、日本農業は過去にない大きな市場開放を迎える。
日欧EPAは、安倍晋三首相とユンケル欧州委員長は18日の首脳会談で、年内の手続き完了に向けて努力することで一致している。
日欧EPAは輸入農林水産物の82%で関税を撤廃。TPP並みの市場開放となる。重要品目ではチーズなどの乳製品や、豚肉、菓子、ワインなどEU産の競争力のある産品の市場を開放する。臨時国会では十分な審議時間の確保や、合意内容を巡る政府側の丁寧な説明が求められそうだ。
TPP11は6カ国以上の国内手続きが終わってから60日後に発効する。メキシコ、日本、シンガポールが完了している。
オーストラリアは議会承認まで完了。ニュージーランドも近く議会の手続きを終える。政府関係者によると、ベトナム、カナダが今年11月中旬までに国内手続きを完了する予定だ。
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NAFTA合意 カナダ 乳製品で譲歩 米、対日交渉に注力
米国は、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉でカナダと合意した。カナダが譲歩した形だ。米国はカナダ、メキシコと2国間交渉に持ち込み、要求を押し通した。NAFTAの交渉にめどが立った米国は今後、今後、日米物品貿易協定(TAG)交渉を控える日本への優先度を高める可能性が高い。NAFTA同様、2国間交渉で圧力を強めてくる可能性がある。
米国通商代表部(USTR)が9月30日、合意内容を公表した。両政府はメキシコの新政権が誕生する12月1日までの署名を目指す。米国の通商交渉ルールを定める大統領貿易促進権限(TPA)法では、署名60日前までに協定の内容を公表する必要があり、9月30日が期限となっていた。
乳製品では、カナダが用途別に設定している乳価の一部分類を廃止する。カナダは国産乳製品の競争力強化のため、海外産乳製品と競合する原料の乳価を安く設定する仕組みを2017年に始めた。一方、米国側は輸出減少につながるとして強く反発し、分類の廃止を要求していた。
米国は当初、カナダが酪農政策の根幹に位置付ける「供給管理制度」を問題視していたが、同制度は維持された。
トランプ政権は、メキシコ、カナダと2国間で協議を進め、域内の自動車の部品調達割合の引き上げの他、一定割合を賃金の高い地域で生産することを義務付けることや、対米輸出枠の設定などを勝ち取った。2国間交渉にこだわる戦略が成果を残している格好だ。
日本は首脳会談で、米国と2国間で農産品を含む全物品を対象にしたTAG交渉を始めることで合意。年明けにも交渉が始まる可能性がある。NAFTAを決着させたトランプ政権内では今後、日本の優先度が高まる見込み。2国間で圧力を強めるのは必至だ。
トランプ大統領が「NAFTA」の名称変更を求めていたことを踏まえ、新協定は3カ国の頭文字を取って「USMCA」と名付けている。
2018年10月02日
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NAFTA再交渉で譲歩 乳製品 TPP超え カナダ
米国、メキシコ、カナダが北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉で合意し、新たな協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」が誕生する。カナダは重要品目に位置付ける乳製品で、米国向けの新たな無税輸入枠を設定するなど譲歩。乳価の設定方法も見直した。カナダの乳製品の開放水準は、環太平洋連携協定(TPP)を超えるとの見方が強い。2国間交渉で譲歩を引き出すことに成功した米国の戦略は、対日交渉にも影響が出る可能性がある。
カナダは、これまで生産調整や生産者価格の設定、輸入品への関税割り当てなどを組み合わせた「供給管理制度」で国産の乳製品などを保護してきた。トランプ米政権は、こうした保護策を批判。メキシコと先に協議し、8月に合意後、残るカナダとの交渉では乳製品の扱いが焦点だった。
カナダは供給管理制度を維持した一方、乳製品など米国向けに品目別の無税輸入枠を設定。品目別の数量で生乳はTPP並みとなったが、クリームはTPPを大きく超えるなど、TPP以上の譲歩を許した部分もある。
これに加え、乳価設定の一部廃止を受け入れた。カナダはこれまで、チーズ生産者が国産原料を安く購入できるよう、原料向けの生乳には低い乳価を設定してきた。米国側は自国産の輸出減少につながると強く反発してきた経緯があり、カナダが応じた格好だ。発効後6カ月で廃止される。
米国メディアや農業団体などによると、USMCAの合意で、カナダの乳製品市場に占める米国産のシェアは3・59%増え、同3・25%のTPPを上回る。米国は2国間交渉でTPPを上回る成果を得たことになる。
日米は来年以降、物品貿易協定(TAG)の交渉を始める見通し。首脳会談の共同声明を踏まえ、日本政府は農産品での譲歩は、TPPの範囲が「最大限」としている。
一方、米国政府内からはTPP以上を求める声が早くも出ている。USMCAでカナダから乳製品でTPP以上の開放を獲得した米国は、日本にも同様の戦略に出てくる恐れがある。
2018年10月11日

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「一部品目 TPP超え」 与党困惑、野党批判強める 担当相発言に波紋
日米物品貿易協定(TAG)交渉の農林水産品の扱いを巡り、茂木敏充経済再生・環太平洋連携協定(TPP)担当相の発言が波紋を広げている。一部品目でTPP以上の譲歩を示唆。16日の閣議後会見でも含みを持たせる発言をした。与党には懸念が広がり、野党は批判を強めている。
茂木氏はテレビ番組で、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)を念頭に、品目によってはTPP以上の譲歩を「否定しない」と述べた。16日の会見でも個別品目を「どうするか今の段階で決まっていない」と述べた。
吉川貴盛農相は同日の会見で「農林水産品でそれ(TPP)以上の状況はない」とした上で、茂木氏の発言は「全体としての話をされた」と述べるにとどめた。
自民党TPP・日EU・日米TAG等経済協定対策本部長の森山裕国会対策委員長は「われわれの理解は、今までの経済連携協定を超える市場開放はないということだ」と強調した。乳製品などで、日欧EPA並みの市場開放を認めるなら、米国は日欧EPAと同様に除外しないといけないとして、「いいとこ取りはあり得ない」とくぎを刺す。
野村哲郎農林部会長は「党への説明はなかった。なぜこうした発言をするのか」と困惑。「政府がどう交渉を進めようとしているのか見えない。農家が不安にならないような交渉をすべき」と訴える。
立憲民主党の佐々木隆博副代表は、共同声明の文言を巡る政府の説明に対し、「目先のごまかしで乗り切ろうとした姿勢が今の事態を生んでいる。米国の圧力に、押し込まれる」と懸念する。
国民民主党の篠原孝元農水副大臣は、米国のパーデュー農務長官が日欧EPAの水準以上を求める考えを示したことを引き合いに出し、「閣僚の発言は重い。『EU相手のものよりも譲れ』と言う米国の圧力に屈し続けている証拠だ」と批判した。
2018年10月17日

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日米関税交渉 一部はTPP超えも 可能性否定せず 茂木担当相
茂木敏充経済再生・環太平洋連携協定(TPP)担当相は、日米物品貿易協定(TAG)の農林水産品の扱いを巡り、一部品目でTPPの水準を超える譲歩をする可能性について、「否定しない」との認識を示した。欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)で、TPPより譲歩した品目があることを念頭にした発言とみられる。日米共同声明にある農林水産品の譲歩の「最大限」の解釈を巡り、議論を呼びそうだ。
14日夜に放送されたテレビ番組のインタビューで述べた。TAG交渉入りで合意した日米共同声明では、農産品を巡る日本の立場について「過去の経済連携協定」の譲歩が「最大限」と明記しており、茂木担当相は「パッケージとしては、これまで以上のことはできないと明確に(米国に)伝えてある」と説明した。
「過去の経済連携協定」について、担当相は「率直に申し上げると、TPPが最大限ということは間違いない」と述べた。
一方、日欧EPAでは、TPPで関税を維持した品目でも輸入枠を設けて撤廃するチーズなど、TPP以上の譲歩といえる品目がある。
TAG交渉での個別品目について、担当相は「米国側と議論することは出てくると思う」と述べ、TPP以上の水準になる可能性をにじませた。共同声明に、TPPの表記がなかったのは「米側の好みもある。トランプ大統領はTPPという言葉が好きではないようだ」と述べ、米国側に配慮した結果との考えを明らかにした。
トランプ政権はTAGを巡り、米国を除く11カ国によるTPP11だけでなく日欧EPAを強く意識する。米国のパーデュー農務長官は、TAGで日欧EPA以上の譲歩を日本に求める姿勢を強調。ライトハイザー米国通商代表部(USTR)代表は茂木氏との閣僚級貿易協議(FFR)で多国間交渉を重視する日本側に対し、日欧EPAを引き合いに2国間交渉を求めてきた経緯がある。
2018年10月16日
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日米貿易交渉 過去の協定が最大 対欧は発効急ぐ 臨時国会首相所信表明
第197臨時国会が24日、召集された。安倍晋三首相は所信表明演説で「日本は自由貿易の旗手」として、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の早期発効を目指す考えを示した。環太平洋連携協定(TPP)並みの大規模な市場開放となるため徹底した議論が求められる。日米貿易交渉は、農産品の市場開放は「過去の経済連携協定で約束した内容が最大限」と強調。ただ、過去の協定では一部品目でTPPを上回る譲歩をしており、日米交渉でもその可能性がある。
政府は、臨時国会に日欧EPAの承認案を提出する。首相は日欧EPA発効で和牛やブリ、日本酒の輸出関税が即時撤廃され「日本の農林水産物にチャンスが広がる」とした。「農家の不安にもしっかり向き合い、安心して再生産ができるよう、十分対策を講じていく」とも語った。
日米は9月の首脳会談で貿易協定交渉入りに合意した。首相は演説の中で、この協定を「日米物品貿易協定」と呼び、国内に慎重論が強い自由貿易協定(FTA)交渉とは異なるとの立場を改めて示した。米国側は、従来の経済連携協定以上の市場開放要求をちらつかせる。生産現場からはTPPを下回る水準を求める声も多く、国会審議の焦点になりそうだ。
「農林水産新時代」を掲げ、米の取引価格の回復や輸出拡大、生産農業所得増加などを実績に挙げた。中国向け精米輸出施設の追加で合意したことを踏まえ、米の対中輸出拡大に意欲を示した。
西日本豪雨や北海道地震、台風などの被害が相次ぐ中、政府は復旧対策を盛り込んだ補正予算案を編成。「ハウスの再建や果樹の植え替えなどの営農再開に向けた支援」に力を入れるとした。
政府は外国人材受け入れ拡大に向けて、新たな在留資格創設を盛り込んだ入国管理法改正案を臨時国会に提出する方針。「即戦力となる外国人材を受け入れる」とし、生活環境の確保などに取り組む考えを示した。
農林業に続き、水産業の改革にも切り込む姿勢を示した。
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2018年10月25日