世襲でなく継承 地域ぐるみで支えよう

 農業の担い手・後継者不足が深刻な中、世襲ではない第三者への経営継承が広がってきた。血縁や地縁のない他者への継承は資産評価の折り合いをどう付けるかや、人間関係、住まいなど多くの課題が横たわる。経営のバトンリレーをJAや行政、住民ら地域ぐるみで支えたい。

 農地や農機、施設、販路や技術など有形、無形の資産のバトンを第三者に継承する潮流は北海道の酪農で先行し、現在は都府県にも広がり始めた。農業だけではない。農山村ではなり手がいないため店舗や加工場なども廃業が目立つ中で、移住者らに引き継ぐ「継業」が全国に広がる。離農する農家や小売店などをやめる経営者にとって、第三者への継承・継業は重要な選択肢になっている。新規就農者や移住者らの受け皿にもなる。

 日本農業新聞が16日まで掲載した「新たなバトン 世襲ではない継承へ」では、高齢や家族の死亡などを契機に離農してしまう農家が、悩みながらも移住者らに経営を引き渡す各地の取り組みと識者の見解を紹介した。

 親子でも難しい継承だけにうまくいかないケースが多い。西日本のある県では、マッチングできても、最終的に合意に至るケースは1割程度だという。

 資産評価も課題の一つだ。山口県周南市では高齢の農家が移住者に観光果樹園を引き継ぐ際に、資産の売買額を巡り意思疎通が難しくなった。当初合意した売買額について、引き渡す農家は農地と果樹だけの金額だと思い、一方、継承者は農機や作業所なども含む資産全てと認識していたためだ。最終的に継承者が金額を上乗せし決着。現在は農業経営に奮闘し、美しい果樹園を維持している。

 こうした課題を共有し、当事者間だけでは難しい継承を関係機関や地域ぐるみで支えることが第三者継承を進める鍵になる。長崎県のJAながさき西海や北海道浜頓別町は畜産の生産基盤の維持・拡大に向け、地域で仕組みを作り、支援する体制を整えている。こうした地域では継承後もJAやかつての経営者、地域農業のリーダーなどが新規就農者の農業を応援している。全国の先行地の工夫や課題解決の手法を参考にしたい。

 農家や地域が継承に向けた準備を計画的に行い、引き渡したい人と引き継ぐ人、地域が共に課題の解決策などを考える期間を設けることも一案だ。その際、教える側と教わる側といった“修業期間”ではなく、対等な関係で考えを言い合え、歩調を合わせる“並走期間”だということを誰もが意識することがポイントとなる。信頼関係が第三者継承の大前提だからだ。

 第三者継承は、農業も含めた地域の仕事を次世代につなぐさまざまな選択肢の一つ。農研機構の山本淳子上級研究員は「まずは地域で話し合ってほしい」と呼び掛ける。後継者がいない農業やなりわいをどう次世代に引き渡すのか。個人ではなく地域の問題として考えたい。
 

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