田舎のトランプ熱 大統領選示した不満 特別編集委員 山田優

 「ようやく道化師がサーカスから追放されたよ」。主要メディアがバイデン氏が第46代大統領に当選を固めたと報じた8日、古い友人であるジェームズ・シンプソン米フロリダ大学名誉教授からメールが届いた。

 うそつきで傲慢(ごうまん)。人種差別主義者で自意識過剰のトランプ大統領は、月曜日の段階でまだ敗北を認めていないが、ホワイトハウスの主人には、バイデン氏が就任する見通しだ。

 何といっても米大統領は世界最強の権力者。核兵器の発射ボタンも押せるだけに、道化師が去ってくれることにほっとする。バイデン氏に投票した多くの有権者も同じ気持ちだろう。

 一方で、「なぜだろう」という疑問も抑えることができない。

 トランプ大統領は、敗者として過去最高の7000万票をかき集め、農村部ではバイデン氏を圧倒した。地方ニュースを扱う米デイリー・ヨンダー紙の地域別の投票分析では、田舎に行けば行くほど有権者はトランプ支持が当たり前になる。トランプ氏の集票率は主要大都市中心部では35%しかない(バイデン氏集票率は63%)ものの、一番田舎に分類される所では79%に跳ね上がる(同20%)。驚かされるのは4年前に比べ、田舎と分類される地域ではいずれもトランプ氏の集票率が少しずつアップしていることだ。

 農家を含めた地方在住者は、徹底した米国第一、保護主義を唱えたトランプ氏に期待を掛けた。巨額の農業補助金や減税などは間違いなく要因の一つだが、田舎のトランプ熱はそれだけではないような気がする。

 農家を回ると、企業の海外進出や廃業によって、安定した雇用の場所が失われ、町から活気が失われたという声をよく聞いた。巨大企業や都会の富裕層はますます豊かになり、田舎の疲弊が止まらない。雇用を奪う中国への反感は強い。グローバリゼーションを錦の御旗にする既存政治に対する不満が、トランプ氏を魅力的に映す背景になった。

 米国と日本の田舎が直面する課題には、共通するところがある。グローバリゼーションや規制緩和を振りかざす政治は問題の解決策ではなくて原因だ。米国の田舎は、米国第一を掲げた道化師を支持し続けることで自らの意思を示した。日本版トランプの登場は願い下げだが、日本の田舎も声を上げる時ではないだろうか。
 

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