本紙モニター調査 米需給対策=4割「課題あり」 輸出5兆円=「対策次第」3割
2021年01月17日

日本農業新聞が12月中下旬に行った農政モニター調査で、主食用米の需給均衡に向けた農水省の対策について「課題がある」との回答が39%に達した。米政策の改善には「転作メリットの拡充」が必要との声が最多だった。農林水産物・食品の輸出額を2030年に5兆円にする政府目標の達成の成否は「対策次第」とみる回答が33%で最も多かった。
農水省は昨年12月、輸出・加工用米や麦・大豆などへの転換に10アール当たり4万円を助成する「水田リノベーション事業」をはじめ、転作支援の拡充や米の需要喚起に向けた対策を発表。調査では「評価している」は12%にとどまり、「課題があり見直しが必要」が39%、「どちらともいえない」が47%だった。
「米政策を改善するとしたら、どういった視点が必要になるか」との質問には、回答を二つまで選んでもらった。最も多かったのは「転作推進のメリット拡充」で36%、「生産費を補う所得政策の確立」が35%で続いた。「資材価格の引き下げ」と「米の消費喚起」も30%の人が選んだ。
売上高が最も多い品目に「水田農業」を選んだ人に限ると、米対策については「評価」が14%、「課題がある」が44%、「どちらともいえない」が42%だった。米政策の改善については、「所得政策」が42%、「転作メリット」が36%、「資材価格」が35%の順だった。
農水省は21年産の米生産を「正念場」(野上浩太郎農相)とし、需給均衡には過去最大規模となる前年産比6・7万ヘクタールの作付け転換が必要とみる。対策の実効性確保には、こうした農家の意見も踏まえ、理解を求める必要がありそうだ。
輸出5兆円目標の達成については「対策次第」が33%だった一方、「達成できない」が27%、「過大だ」が16%で、「達成できる」の6%を上回った。経営品目別に見ると、「達成できる」と考える割合が最も高かったのは肉用牛肥育で14%、低かったのは畑作物と養鶏でゼロだった。水田農業や花きは5%、施設園芸は3%にとどまった。
政府は昨年11月、輸出目標達成に向けた実行戦略を策定したが、輸出の拡大には同戦略に沿った十分な支援策とともに、農家の意欲喚起も求められそうだ。
調査は、農業者を中心とした本紙の農政モニター1133人を対象に昨年12月中下旬、郵送で実施。756人から回答を得た。
農水省は昨年12月、輸出・加工用米や麦・大豆などへの転換に10アール当たり4万円を助成する「水田リノベーション事業」をはじめ、転作支援の拡充や米の需要喚起に向けた対策を発表。調査では「評価している」は12%にとどまり、「課題があり見直しが必要」が39%、「どちらともいえない」が47%だった。
「米政策を改善するとしたら、どういった視点が必要になるか」との質問には、回答を二つまで選んでもらった。最も多かったのは「転作推進のメリット拡充」で36%、「生産費を補う所得政策の確立」が35%で続いた。「資材価格の引き下げ」と「米の消費喚起」も30%の人が選んだ。
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農水省は21年産の米生産を「正念場」(野上浩太郎農相)とし、需給均衡には過去最大規模となる前年産比6・7万ヘクタールの作付け転換が必要とみる。対策の実効性確保には、こうした農家の意見も踏まえ、理解を求める必要がありそうだ。
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政府は昨年11月、輸出目標達成に向けた実行戦略を策定したが、輸出の拡大には同戦略に沿った十分な支援策とともに、農家の意欲喚起も求められそうだ。
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農水省は来年度から、国産農産物の消費拡大を目指し新たな国民運動を始める。国産応援団の裾野を広げるため、農業・農村の価値と魅力を官民挙げて発信する。新型コロナウイルス禍で農業者は苦境にある。国産を選ぶことが食料安全保障の確立に貢献するとの理解を、速やかに浸透させるべきだ。
政府が昨年改定した食料・農業・農村基本計画は、食と農への理解を深める国民運動を、食料自給率の向上、輸出5兆円目標の達成と並ぶ主要な柱に位置付けている。
国内農業は生産基盤が弱体化する一方で食料需要が地球規模で増え、食料の安定供給へのリスクが高まっている。同省は、こうした現状を国民全体で広く共有し、消費者が国産を積極的に選ぶ機運を高めたい考えだ。2021年度政府予算案には、農家の奮闘する姿や農業の魅力をインターネット交流サイト(SNS)で発信したり、世代を問わず消費者との距離を縮める交流イベントを開催したりする事業を盛り込んでいる。
国民運動は、顕彰制度などを通じて地域内の農産品を掘り起こし、消費を呼び掛けるこれまでの取り組みから転換、農産物に込めた思いや創意工夫への理解を促し、食や環境、地域に貢献する農業の意義を実感してもらうことが主眼にある。
加えて、現場に障害者や高齢者雇用を受け入れる「農福連携」も含め、農業の多面的機能への理解も広げる。野上浩太郎農相も国会で「国内農業の重要性・持続性を確保するため、国民の各層がしっかり認識を共有していくことが重要だ」と述べ、実践に強い意欲を示した。
しかし新型コロナの感染拡大で、基本計画で想定した消費拡大のシナリオと現実が懸け離れた。東京五輪・パラリンピックをはじめとしたイベントやインバウンド(訪日外国人)を当て込んだ市場は消滅した。2度の緊急事態宣言による外出自粛、外食業者の時短営業も重なって業務用需要が減少。集客を伴う交流イベントも開けないなど、食と農の接点を増やす多くの機会が失われた。「巣ごもり」での家庭用需要の拡大とは裏腹に、安定供給が求められる外食向けなどの業務用産地は窮地に立たされている。
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2021年03月04日
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WG 所得増「数値目標を」
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次ページに農水省が示した農協改革の検討方向の表があります
2021年03月06日
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次ページに新戦略のポイントの表があります
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次ページに調査結果の表があります
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2021年03月05日
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次ページに骨子案のポイントの表があります
2021年03月05日

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2021年03月03日

[震災10年 復興の先へ] 「戻らない」5割 避難先での生活定着 復興庁など 福島県4町住民意向調査
東京電力福島第1原子力発電所事故の影響を受ける双葉、大熊、富岡、浪江4町の住民のうち、避難先から「戻らない」と考える人が5割を占めることが復興庁などの2020年度調査で分かった。19年度と比べて4町とも帰還した住民は増えているが、戻らない人の割合の方が依然高い。既に避難先での生活が定着し、帰還しにくい人が多いことが背景にある。
「戻らない」の割合を町別にみると、双葉町が62・1%、大熊町が59・5%、富岡町が48・9%、浪江町が54・5%。いずれも19年度調査とほぼ同じ水準のまま変わっていない。
帰還しない理由は、富岡町では「既に生活基盤ができている」が最多の60・1%。大熊、浪江各町も同様に最多だった。双葉町も「避難先で自宅を購入し、今後も住む予定」がトップだった。避難生活が長期化する中、仕事が定着したり、友人が増えたりしたことで、元の町に戻るのを見合わせるケースは多い。
一方、4町とも帰還するかどうか「まだ判断がつかない」が2割程度いた。帰還を判断するのに必要な条件として多く挙がったのが医療・介護施設の確保。「医療・介護の復旧時期のめど」が最多の56・8%だった浪江町を含め、各町とも同様の回答がトップだった。
避難指示が一部解除された大熊、富岡、浪江各町は、いずれも10%未満ながら「戻っている」との回答があった。最も高かったのは富岡町の9・2%で、前年度から1・7ポイント増えた。各町とも19年度を上回った。
帰還を決めた理由は「(帰還先の)生活は気持ちが安らぐ」が多く、浪江町は68・8%、富岡町は52・4%だった。大熊町は「役場機能が再開した」が最多の43・5%。故郷を思う気持ちに加えて、行政機関が機能していることが帰還の動機になっている。
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2021年03月03日
コロナ下販促支援 2次募集 7月末分まで対象に 農水省
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