愛媛で加速する農業DX! TRY ANGLE EHIME

 

 2022年から愛媛県でスタートした、優れたデジタル技術を一次産業や観光業、さまざまな分野の現場で実装し、地域課題の解決を目指すプロジェクト「TRY ANGLE EHIME(トライアングルエヒメ)」。

 農業の現場では、地域や生産者ごとに長年の経験をもとに培った栽培方法がある。しかし、その方法は細かいデータで残されていなかったり、生産者同士で比較検討をする機会がなかったりと、後継者や新規就農者に継承することが難しいのが現状だ。今回は、本プロジェクトで進む栽培ノウハウのDX化、そしてデジタルに強い生産者を育てる取り組みを紹介する。


120本のセンサーでリアルタイム把握!

品質を維持&落葉を減らすデジタルデータ灌水の実現





 最高級品質の「真穴(まあな)みかん」で知られる八幡浜市真穴地区は249㌶の栽培面積を誇る。日本でも有数の温州みかんの栽培適地であり、多くのベテランや若手生産者が生産を行う。真穴みかんは全国的に見ても需要が高く、現在も供給量が足りていない。栽培で最も大事な水管理(灌水)は地域に張り巡らされたスプリンクラー設備で行われているが経験や勘で運用されており、より良い灌水のタイミングや次世代への技術継承など伸びしろや課題も多い。

 これらの課題を解決するために、日本のインターネット業界のパイオニア「株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)」は、低消費電力かつ長距離通信が可能な「LoRaWAN(R) (ローラワン)」ネットワークを真穴地区全域に構築。土壌センサー120本を設置し、リアルタイムで土壌の状態を可視化することで最適な灌水制御の実現を目指す。

 一次産業向けクラウドアプリ「アクト・アップ」を展開する「株式会社アクト・ノード」は、さらに真穴の生産技術革新に取り組む。真穴のみかん生産者である黒田さんは10年前から「マルドリ方式」を導入し、毎年反収8トン超(地域平均の2倍以上)かつ高い品質という栽培技術を確立している。しかし新手法であるマルドリ方式は同エリアの生産者でも真似をするのが難しい栽培方法でもあった。そこでアクト・アップのスマホアプリ、センサー、AIカメラで黒田さんの技術をデジタルデータ化。同地域の生産者も黒田さんの圃場のデータや灌水や液肥のタイミングを見て比較や模倣し生産成績を上げている。


高品質なブランド産品の栽培・収量アップを目指す




 「愛」あるブランド産品として展開する「紅い雫(イチゴ)」と「伊予美人(サトイモ)」の圃場では、「株式会社セラク」の環境モニタリングシステム「みどりクラウド」を導入している。

 温湿度や水分量などを計測するセンサーと連携させた「みどりボックス」を圃場内に設置。IoTデバイスによって、圃場の環境を計測し、クラウドへ蓄積することで、圃場環境の異常検知と通知を行う。それにより、異常気象や気候変動による収量の大幅な増減を解決するだけではなく、過酷な労働環境による熱中症、発見しづらい病害虫の問題など、農家が抱える経営課題や労働環境の改善を目指す。AIによる栽培サポート機能も開発・実装中だ。



 愛媛県西予市のトマト「うるるんトマト」の生産現場で進められているのは、「PLANT DATA株式会社」が進める光合成蒸散リアルタイムモニタリングや画像診断、ウェブアプリを使って生産現場のデータを見える化し、ノウハウの暗黙知化、新規参入のハードルの高止まりなどを解決するプロジェクト。「光合成蒸散リアルタイム計測チャンバ」と「画像計測ロボット」で取得したベテラン農家のデータを参考に、新規就農者が「うるるんトマト」の栽培に初挑戦した。

 実際に、新規就農者の栽培するトマトを定期的に果汁調査した結果、半年も経たずして糖度14度を超えるトマトの育成に成功した。


「農業DX共創会」産官学連携で横展開!


 「TRY ANGLE EHIME」では、プロジェクトごとの地元の生産者や事業者を巻き込んだ勉強会の開催を必須としている。実装検証で得たデータやノウハウを共有し、生産者がお互いに生産管理の改善に取り組むことで稼ぐ力の向上、そして現場でデジタル技術を使えるようになることが目的である。また、生産者の声をフィードバックすることで、デジタル企業のプロダクト向上や地域にフィットしたサービスへの進化を促すことに繋がる。

 この取り組みから組成された「農業DX共創会」では、コーディネーターを務める愛媛大学 大学院農学研究科の髙山弘太郎教授をはじめ、大学や研究所、各プロジェクトのメンバーや生産者が集まり、各産業のモデル事業者が得たデータをもとに勉強会を行っている。

 このように「TRY ANGLE EHIME」では、同じ未来を目指す事業者、生産者、大学が手をとり愛媛県全体へのDX普及を加速させていく。

■お問い合わせ先
愛媛県庁企画振興部スマート行政推進課
愛媛県松山市一番町4-4-2
089-912-2285
https://dx-ehime.jp/



制作/日本農業新聞広報局


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