日本農業新聞主催の「第48回読者の写真コンテスト」の年度賞が決まりました。
課題写真の部最高位の農水大臣賞に、新潟県南魚沼市の富所上さんの「冬将軍が降りてくる‥」。ニュース写真の部最高位の日本農業新聞賞には、千葉県柏市の糸賀一典さんの「黄金色の大地」が選ばれました。
応募数は課題写真の部に788点、ニュース写真の部に276点の計1064点でした。年度賞の受賞者と作品を紹介します。
課題写真の部
テーマ「農村賛歌」
「冬将軍が降りてくる・・」
富所上
新潟県南魚沼市
このたびは栄えある賞に選んでいただきありがとうございます。
以前からこの写真コンテストに応募していましたが、本年度は並み居る応募者に負けないよう、ずいぶんと頑張ったかいがあり、目標だった年度賞をもらうことができました。
受賞作品は昨年12月3日の撮影です。前日の天気予報で夜に雪か雨が降って朝に晴れると知り、「本格的な降雪を前に野菜収穫作業を撮ろう」と心を弾ませて撮影に向かいました。当日は、想像以上の景観と作業風景に出会えました。
最近は大規模農業が主流ですが、この写真はささやかな農山村の一場面です。「農を基盤とした生活が息づくありさまを表現できたかな」と内心自慢の作品になりました。
このコンテストの写真をきっかけに、都会の読者の皆さんが農村を訪れ、生産者と消費者の交流につながればうれしいです。
「春の桃里」
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岩間正男
山梨県笛吹市
「こんなに大きくなりました!」
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大平美保
北海道足寄町
「夕暮れの棚田」
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丸岡早紀
福岡県糸島市
「権平さんのひととき」
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神久文江
埼玉県神川町
「早朝に補植」
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齊藤重利
埼玉県熊谷市
「ころ柿の里」
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陶山徳三
神奈川県川崎市
「じゃがいも畑」
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細沼千和子
長崎県佐世保市
「笑顔のワイン娘たち」
達下才子
岩手県奥州市
ニュース写真の部
「黄金色の大地」
糸賀一典
千葉県柏市
このたびの受賞は本当にうれしく、家族や実家の両親も驚きでいっぱいでした。ありがとうございました。
小麦の収穫の頃を「麦秋」と言いますが、秋と言う漢字にもかかわらず、小麦は初夏に収穫するので、俳句では夏の季語となり「その違いが面白い」と思いました。
北海道に住んでいた頃、道内にはさまざまな品種の小麦があり、太陽に照らされると、角度により金色に輝いて見えることから、麦秋の小麦畑を好んで撮影していました。
その数種の小麦粉をブレンドし、パンを作ったこともあります。品種の差、ブレンドする小麦粉の量で味や弾力、ふわふわ感が異なり「品種の違いで、こんなにも差が出るのか」と実感しました。道内産の小麦の魅力と奥深さを知った思い出です。
ぜひ道内産の小麦を味わい、金色に輝く麦畑を、眺めていただき、国産農作物の魅力を感じてもらいたいです。また、麦以外でも、農業に係る魅力を伝える写真を撮りたいと思います。
「一夜の悲しさ」
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鈴木弘信
鹿児島市
「熊よけトタン」
富所上
新潟県南魚沼市
課題写真の部は、「農村賛歌」がテーマ。日常の農作業や四季を感じる自然豊かな風景を切り取った作品が集まりました。農村行事の模様を収めた作品も目立ちました。新型コロナウイルス禍で自粛を余儀なくされた地域のイベントが3年ぶりに再開し、喜びと戸惑いが交錯する人々の表情が印象的でした。
最高位の農水大臣賞に輝いた「冬将軍が降りてくる‥」は、雪山にたなびく雲が里へ冬を連れてくる、物語のような構図に評価が集まりました。ひんやりと澄んだ空気、変わりやすい山の気候に作業の手が自然と早まる、そんな農家の心持ちも伝わってきそうです。
ニュース写真の部は、天候不順や外来生物や鳥獣害など、近年農家を悩ます事象が多く見られました。
そうした中で最高位の日本農業新聞賞に輝いたのは「黄金色の大地」。収穫期を迎えた、北海道の雄大な小麦産地。遠くに見える、ぽつんと赤い屋根がアクセントを添えます。しかし、審査員の目を奪ったのは、その2トーンの色使い。無事、収穫にこぎ着けた安堵(あんど)の風景とは裏腹に、理不尽な侵攻に平和を脅かされる国への憂いも秘めたように思えたからです。偶然ながらも今の時勢が作品に別のメッセージを付加するという貴重な機会に出会えた一枚でした。