ワインに「燻し」
宮城県石巻市の主婦、川添京子さん(76)は「いぶりがっこのスモーキーさがワインに合いそう」と、タルタルソースを購入した。
同店では4、5年前からいぶりがっこの加工品が増え、2022年の売り上げは前年比で4割以上伸ばした。特にタルタルソースは、帰省の土産物として定番になっているという。
健康志向の高まりで地方の発酵文化に注目が集まる中、いぶりがっこ自体の認知度も高まっている。同道の駅の高橋勇物産販売係長は「いぶりがっことチーズが合うのが浸透し、ワインのおつまみやおしゃれな食べ物になり客層が変わった。いぶりがっこの売れ行きも堅調」と話す。
伝統の味生かす
埼玉県小鹿野町の小川漬物は、秩父地方に伝わる漬物、しゃくし菜漬けを使ったタルタルソース「秩父タルタル」を販売する。さっぱりとした味付けでディップソースに向く。
「久世福商店」のブランドで和食の調味料などを販売するサンクゼール(長野県飯綱町)は、21年に「秋田で燻(いぶ)されたいぶりがっこタルタル」を発売。店舗と電子商取引(EC)サイトで年間25万個を売り上げる。
マヨネーズに負けない燻製(くんせい)香が強い秋田のいぶりがっこを使い、独自の万能だしで合わせた。しゃきしゃきとした“がっこ”の食感が、フライや唐揚げなどに合い、舌触りをさっぱりさせる。
「漬物のような伝統食をタルタルソースやパスタソースなどにアレンジし、需要の幅を広げたい」(同社リテール事業部)と期待する。
時代に合わせて「おしゃれ感」を
■東京家政大学大学院の宮尾茂雄客員教授の話
米の消費減に伴い、漬物の消費も減ってきたが、生産量は近年増加傾向にある。漬物を調理素材として使った加工品のラインアップが充実し、需要の開拓につながった。ネーミングの工夫でおしゃれ感を演出している。伝統漬物も、時代に合わせて提案を変える必要がある。