農業を巡る環境は、現行の食料・農業・農村基本法制定時の25年前から様変わりした。日本は食料の多くを輸入に頼るが、調達力は低下した。国内農業は担い手不足で、持続可能性が危ぶまれる。従来通りの政策では食料供給が難しくなる。この状況を克服するための法改正だ。できるだけ早く成立させ、具体的な施策を講じたい。
今後は環境に配慮した農業を目指さなければならない。環境負荷の低減へ、新たな直接支払いの創設などが必要ではないか。有機農業は収量が課題になるとの声もあり、息の長い支援が求められる。
麦や大豆、飼料用作物などの国産化には、収入減少影響緩和交付金(ナラシ対策)や畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)、水田活用の直接支払交付金の充実が必要だ。農家が将来を見通せるよう、予算を確保しなければいけない。政府備蓄米は当面、100万トン水準を維持すべきではないか。財政負担を理由とした見直しには慎重であるべきだ。
食料アクセスの環境整備も重視している。地方では店舗の撤退などで食品の確保が難しい状況もある。所得の低い人も含めて食料が行き渡るようにするのが大事だ。厚生労働省などと連携し、フードバンクや子ども食堂の支援も議論したい。
食料の価格形成では消費者の理解が何より重要になる。農家への直接的な支援も必要ではあるが、消費者に理解してもらった上で労力に見合った値段で売れるというのが理想的な形ではないか。
担い手確保は最優先課題だ。意欲のある人が就農し、営農を継続できるようにしたい。法人の人材育成を支援して農業に携わる人を確保するのも一手だ。農村機能の維持に向けて、多様な人を呼び込む施策も求められる。