[どう変わる?基本法]②食料安全保障 輸出促し供給力維持
食料安全保障の抜本的強化を目指す食料・農業・農村基本法改正案。食料の安定供給の土台となる生産基盤の確保に向けては、「輸出」を新たに位置付けた。食料の価格形成では、持続的な供給のため「合理的な費用」が考慮されるよう明記。供給が不足する有事に備え、事態が発生する前の段階から対策できるようにもする。
改正案では、国内市場が縮小していくことを踏まえ、輸出を促進して海外市場を獲得し、食料供給能力の維持や農業者の収益性向上につなげるとした。海外の需要や規制に対応した生産や流通への転換といった輸出産地の育成などを進める。
農産物の生産コストなどが上昇する中、食料の価格形成では「持続的な供給に要する合理的な費用」を考慮するとした。生産から消費まで関係者が一体となって「合理的な費用」の明確化などを進める。
仕組みは「法制化も視野に」検討するとしているが、その内容はまだ見えない。農水省は、昨年から関係者を集めた協議会を設けて議論を重ね、「皆で協調していこうという理解が増えてきている」と合意形成に一定の手応えを示す。一方、野党からはコストを価格転嫁していけば消費が減退する懸念があるとして所得補償が必要とする声もある。
凶作や輸入途絶など不測の要因による食料不足の影響をできるだけ抑えるための措置も新設した。事態発生の兆候の段階から、政府一体で対策できるようにする。関連法として、今国会に「食料供給困難事態対策法案」を提出した。
生産拡大などの要請や指示に従うには経営リスクを伴うが、農家への補償をどう措置するかが焦点。実効性を担保するための罰則の在り方も論点だ。