牛肉生産量の4分の3を輸出に依存するオーストラリアでは、牛肉輸出工場はほぼすべてハラール認証を受けています。そうすることで世界のマーケットに輸出することが可能になるためです。以前私が働いていたクイーンズランド州のABC工場で、私は毎日ハラールのと畜を見ていました。パキスタン人のIさんがアッラーの神にお祈りしながら手際よく処理していきます。M工場長から「と畜の時、牛の頭はメッカの方を向いているんだよ」といわれ、「本当かな?」と思ったのですが、工場自体が北西を向いていることに気づきびっくりした覚えがあります。
今年に入ってから、熊本県と宮崎県でハラール認証を受けた新しいと畜場が稼働を始めましたが、我が国でハラール認証を受けたと畜場はまだまだ少数です。中東諸国や一部の東南アジア諸国への和牛輸出拡大のためには避けて通れない道です。それに加えて、我が国に住んでいるムスリムの方々は、ハラール認証の食品が限られているため、食材探しに苦労しているという話をよく耳にします。イスラム圏から来た外国人技能実習生や特定技能の方々が安心して実習や就労ができるよう、ハラール認証工場で働く皆さんに頑張っていただきたいと思います。
公益社団法人全国食肉学校
専務理事学校長
小原和仁