「経済的な損失よりも精神的なショックが大きかった」。そう話すのは、厚岸町で酪農を営む小野寺孝一さん(68)。2年前にOSO18の被害を受けた。
森林に面している場所には全長1・7キロの電気柵と害獣防止用のフェンスを設置。さらに牛に鈴付きの首輪を装着させるなどの対策を講じている。それでも不安は尽きない。いつ、また牛を襲いに来るか――。
小野寺さんの妻、浩江さん(61)も「家族同然の牛を襲われた悲しみは今も残っている。一日でも早く捕まってほしい」と願う。
被害が頻発しているのは標茶町と厚岸町。いずれも酪農地帯だ。町やJAしべちゃ、JA釧路太田が運営する牧野でも乳牛が襲われるケースが続出。放牧の中断を余儀なくされている。
JAなどによると、屋内飼育に切り替えたことで飼料の給与量が増え、農家の経営を圧迫するなど、事態は深刻さを増している。
OSO18の捕獲に向けて両町と両JA、猟友会、ヒグマ専門家などで組織する「OSO18捕獲対応推進本部」は、行動地域の特定を進め、今年6月には自動撮影カメラで姿を把握することに初めて成功した。
警戒心が強く、人前に姿を現したことがないOSO18に対し、同本部は、襲われて死んだ乳牛を数日間置き、くくりわなに誘うなどの措置を取る。標茶町はOSO18の行動地域内の16カ所に自動撮影カメラと、体毛を採取するヘア・トラップを設置した。だが、いまだに捕獲は成功していない。
同本部の関係者は「捜索が困難で、危険度も高いため銃による捕獲は厳しい。設置場所を見直すなどして、わなでの捕獲を目指す」と話す。