広島・三次市の木村さん
「手をかけるほど味わい深くなっていくのは農業も音楽も同じ」
たわわに実った「シャインマスカット」が並ぶ畑で、休憩中にギターを奏でながら木村さんはそう話す。
広島市出身の木村さんは東京を拠点に10年間、音楽活動を続けた。妻の智子さんがボーカル・作詞を担当し、全国のライブイベントを回った。
農村地域の音楽ライブにも呼ばれ演奏する中、「農家さんとの交流や味わった農産物」が農業に興味を抱くきっかけになった。
転機は39歳の時。子どもが2歳となる中、「自然豊かな場所で子育てと音楽、農業がしたい」と一念発起。広島への移住を決めた。
三次市で新規就農希望者を育成するJAひろしま出資型農業法人の(株)JAアグリ三次の農業研修生に応募。ブドウ農家を志し、2年目は市内の農家で「シャインマスカット」の栽培を研修。今年3月に全課程を修了し、独立する予定だ。
作曲家として自然をテーマにした楽曲を手がけてきた。自らの手で剪定(せんてい)などの管理をしながら、実がついて大きくなっていくブドウと日々接することで「感性が刺激され、これまで以上に自然体で音楽と向き合えるようになった」と実感する。
研修の合間にCM楽曲の制作やライブ活動、音楽教室も開く。「音楽と農業の相乗効果を追求したい」と力を込める。
愛知県が特設サイト開設 具体例9組を紹介
「半農半X」を地域で農業に携わる新たな人材として増やしていくため、愛知県は「半農半Xな暮らしガイド」と題した特設サイトを県ホームページ内に作った。県内の先行事例や支援策などを発信。生活サイクルや移住の経緯といった実践者のリアルな情報を充実させている。神主やラッパー、ファシリテーター、庭師、カフェ……。サイト内で紹介する事例は現在9組で、農業と合わせて実践する「X」も多彩だ。
県は「専業農家の担い手だけでなく、概念が幅広い半農半Xを入り口に、多様な人材を地域に取り込みたい」(農業振興課)と構想する。
先行事例の紹介コーナーは「後に続く人が増えるような参考情報」(同課)を示すことを重視。年間スケジュールや活用した支援策などに加え、移住を決めた理由や、「農」と「X」をどう両立させているかなどのインタビューを掲載している。
サイト上で紹介する支援制度は、県内各市町村の情報を網羅している。就農サポートだけでなく、移住後に定着できるよう、空き家やリフォーム、子育てなどの生活面を含め幅広くカバーする。