地域の仲間がよりどころ
空き家 託児所に
働き手は、同園代表で夫の明宏さん(39)と正社員の女性1人。芋の収穫や干し芋の製造には、20、30人のパート従業員の存在が欠かせない。
「働きに出たいが、未就園児を抱え、外に出られないママ友が多かった」ことが開所のきっかけ。保育士のママ友がいたことも運営をスムーズにした。
開園は干し芋を製造する11~3月の平日午前9時~午後2時。2人の保育士で0~3歳児を最大6人まで預かる。料金は1日数百円。最近は口コミで来る人が増え、今年は3人を新たに確保した。
季節仕事は定着が課題とされるが、同園は毎年、安定して人手を確保。「子どもが成長し、夏の収穫や業務時間を延ばす人もいる」(菜々子さん)と波及効果が生まれている。
家族連れが戦力
4月上旬、種まきを手伝いに宇都宮市から家族3人で訪れた渡邉美和さん(41)は「今回で2回目。休憩所があり、夏も安心して子どもと来られる」と笑顔を見せた。
フレミズを創設
メンバーは16人で半分が農家。食農教育や直売所の売り場提案など四つのテーマを活動の柱に置き、地域で存在感を高める。
片山さんの前職は大手企業のシステムエンジニア。ダイバーシティー推進を担当した経験も踏まえ、「地域の一員として心のよりどころとなる仲間が必要」とし、「そこに加わる敷居を低くしておくことも重要」と、組織に参画しやすい雰囲気づくりを訴える。
マインド改革を
農水省の「労働力確保体制強化事業」の事務局を務めるマイファーム(京都市)。西辻一真代表は女性が定着する条件として、①経営者のマインド改革②託児所やトイレなどハード面の整備③育児休暇や話し合いの機会を設けるなどソフト面の強化──を挙げる。
「女性が経営に関与する法人では、世界的に見ても時価総額が増加するというデータがある」と紹介し、経営者は「女性の定着が収益に直結すると考えるべきだ」と話す。
「体力差はアシストスーツや自動運転などのテクノロジーでカバーできる」。半面、ハード・ソフト両面の整備が必須とし、「出産や育児などライフステージに応じた制度の充実が雇用の定着につながる」と指摘する。
<取材後記>
男女別のトイレや更衣室、育児休暇に時短勤務、会社員の私にとって当たり前だと思ってきたことが、農業界では珍しい。裏を返せば、当たり前のことが人材確保の面で有利に働くともいえる。誰もが活躍できる社会の実現には、経営者だけでなく男性の意識改革を急ぐべきだ。
少し前に「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」との言葉がはやった。心のどこかに、「家事をやってあげている」「休日は子どもの面倒をみてあげている」との思いがないか。本格的に職場復帰した妻を見つつ、自身の行動を戒めたい。