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保存版 防除特集

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イチゴ特集特設WEBサイト~防除のポイント、最新選果技術、役立つ資材をご紹介いたします!~企画・制作 日本農業新聞広告部
イチゴイメージ画像

イチゴ栽培における
主要病害虫の発生動向と防除のポイント

栃木県農業試験場 研究開発部 病理昆虫研究室 室長 野沢 英之

 イチゴには、多くの病害虫が発生し、安定生産上の大きな阻害要因となっている。各種病害虫の発生は、品種や作型、気象経過や栽培管理によっても大きく変化する。そのため、病害虫の発生しにくい環境づくりなど、防除のポイントをしっかり押さえて栽培することが重要である。そこで、発生が問題となっている病害虫を挙げて、その発生動向と防除のポイントを述べたい。

灰色かび病~天候の崩れに注意~

灰色かび病の被害果実
灰色かび病の被害果実

 本病の病原菌は活力ある生きた植物組織に直接侵入する力が弱いため、痛んだ部分から発生することが多く、主に葉柄・花弁・果実などに発生する。本病の発生は、気象要因に大きく影響され、天候の崩れにより発生が多くなりやすい。特に厳寒期に降雪や天候の崩れがあると、施設は換気ができず、閉め切った状態が続くことから多湿となり、本病の発生を助長する。また、発病果実などは伝染源となるため、早めに取り除き、施設外で適切に処分する必要がある。

 本病の防除薬剤には、系統の異なる薬剤が比較的多くそろっているが、薬剤耐性菌が発生している恐れがあることから、散布した薬剤の防除効果が低い場合は、その薬剤の使用を中止し、系統の異なる薬剤を選択し防除を行う。

うどんこ病~予防散布が鍵~

うどんこ病の被害葉
うどんこ病の被害葉

 本病は、糸状菌(カビ)の一種で、葉や果実などが白色のカビで覆われるのが特徴である。本病原菌は、イチゴの植物体上で生活環を繰り返し、気温20度前後に活動が活発となり、圃場(ほじょう)内にまん延する。本病は、乾燥、多湿のいずれの条件下でも発生するが、特に多肥などにより軟弱徒長した場合に発生が多くなる。

  本病は、多発してからでは十分な防除効果が得られないため、予防散布に重点を置いた薬剤防除を行う必要がある。

ハダニ類~日頃から観察を~

葉裏に寄生するハダニ類(ナミハダニ)
葉裏に寄生するハダニ類(ナミハダニ)

  イチゴで発生するハダニ類は、ナミハダニとカンザワハダニであり、特にナミハダニの発生が問題となりやすい。発生初期には主に葉裏に寄生・吸汁し、葉にかすり状の白斑を生じる。多発時は株が糸で覆われ、著しく生育が停滞する。体長は0.5ミリ程度と微小で、非常に増殖力が高いため、発生初期の確認が難しく、防除適期を逃しやすいので注意が必要である。

 日頃から圃場内をよく観察し、発生を確認したら薬剤を散布する。また、薬剤散布に当たっては、古い下葉は適宜取り除き、生息場所の葉裏によくかかるよう丁寧に行う必要がある。

  本害虫では、各種薬剤に対する抵抗性が確認されているため、近年では薬剤抵抗性発達リスクの小さい気門封鎖剤や天敵のカブリダニ類を用いた防除が主流となってきている。カブリダニ類を利用する場合は、放飼前にハダニ類の密度が高くならないよう注意し、必要に応じて天敵に対して影響の少ない薬剤を散布するか追加放飼を行うなどの注意が必要である。

アブラムシ類~天敵の活用が有効~

幼果に寄生したアブラムシ類
幼果に寄生したアブラムシ類

 本害虫が多発すると、吸汁害や果実汚れを引き起こす。一般に、本害虫をはじめとする害虫類の防除は、発生初期を見逃さないことが基本である。近年では、ハダニ類に対するカブリダニ類利用の増加に伴い、天敵に影響の少ない薬剤選択の観点から、アブラムシ類に対してもコレマンアブラバチ(天敵)の利用が増加傾向にある。特に本害虫発生前からバンカー植物(アブラバチ類を維持)を導入しておくことでアブラムシ類を効果的に防除することが可能だ。

アザミウマ類~増加前の防除を~

アザミウマ類による被害果実
アザミウマ類による被害果実

 本害虫は、早い作型では秋から問題となるが、一般的に春先以降に増加し、果実の着色異常を引き起こす。多発すると著しい品質低下となり、出荷不能となることもある。栃木県では、本害虫は11月頃までにハウス外から侵入し、施設内の残存個体が翌春にかけて増加して被害を引き起こすことから、飛び込み終了後の防除が重要である。花を定期的に観察し、低密度のうちに防除する。促成イチゴ栽培末期の4月以降は、ハウス外からの飛び込みも多くなるので注意が必要。


 病害では薬剤耐性菌の発生により、害虫では薬剤抵抗性個体群の発生により防除が困難となる恐れがある。薬剤散布に当たっては、これまでの薬剤散布履歴や防除効果を参考に薬剤を選択する他、系統の異なる薬剤のローテーション散布を行うよう心がける必要がある。また、圃場内での病害虫の発生状況の把握に努め、病害虫の発生しにくい環境づくりなどの耕種的な対策を前提とし、併せて適期防除を心がけることが重要である。

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