[論説]JAの広報活動 農業の価値伝える力を
広報大賞となったJA新潟かがやきは、22年度の合併を前に、「誰が」「誰に」対して、「何を」「どのように」発信するか、綿密な広報戦略を立てた。合併後はその戦略に沿って発信を続けている。発信したら終わりではなく、計画の立案から実行、評価、改善までの「PDCAサイクル」を実践。職員が店舗などで得た情報を広報部署に伝え、JA全体で共有し、改善につなげている点でも高い評価を受けた。
準大賞の長野県のJA松本ハイランドは広報誌、コミュニティー誌、交流サイト(SNS)、イベントなどにバランス良く取り組み、子育て世帯や消費者など、伝えたい層に確実にメッセージを届けている。持続可能な開発目標(SDGs)と、協同組合が親和性があることもアピール。JAの試みを多様な層に発信し、JAのファンづくりにつなげている。準大賞のJA金沢市は、独自のテレビ番組やコマーシャルを通して農の価値を発信。放送の予定は広報誌やSNSで告知し、多様な媒体を活用している。こうした優良事例を参考にしたい。
3JAに共通するのは、ホームページを工夫している点だ。JA新潟かがやきは、トップページで「生きることは食べること 支えあうこと」というメッセージを紹介した。JA松本ハイランドは、管内の四季折々の農の風景を発信。JA金沢市は金箔(きんぱく)などの伝統工芸をデザインに盛り込んだ。いずれも、食と農をつなぐJAの役割が感じ取れる内容となっている。
こうした産地発の生きた情報を幅広い層に発信するためには、JA幹部が、広報活動の重要性を理解する必要がある。広報担当の職員だけでなく営農や渉外、購買、直売所などあらゆる部署との連携を強化し、広報部署に情報が集まる仕組みをつくることも欠かせない。生産現場の声をJA全体で共有することで事業間連携につながり、風通しの良い組織が生まれていく。
広報部署が他の部署と連携し、組合員向け広報誌の部で審査員特別賞を受賞したのは、岐阜県のJAひがしみのだ。飼料高に苦しむ酪農家の声を営農部門経由で把握し、昨年4月の広報誌では酪農の危機を伝える特集を組んだ。地場産牛乳の消費拡大を呼び掛けた点も評価された。
農業が多難な今こそ、JA広報の発信力を高めよう。