担い手直送規格で低コスト農業に貢献 組合員も高評価

北海道・JAひがしかわ

担い手直送規格の最大のメリットともいえる低コスト。この特長を活かした提案を行っているのがJAひがしかわです。東川町は北海道の中央に位置し、有名な大雪山の麓にある水稲栽培が盛んな地域です。JAひがしかわ経済部資材課の福井陽輔課長は、道内で担い手直送規格がデビューした最初期から、その価格メリットに着目していました。

導入メリットを明確に 喜んでもらえる提案を

丁寧な提案で実績を挙げる資材課メンバー(福井課長:左から2人目)

丁寧な提案で実績を挙げる資材課メンバー(福井課長:左から2人目)

「いつも利用いただいている組合員さんに、より喜んでもらえる提案をしたいですから」と語る福井課長は、すぐに担い手直送規格を組合員に提案することにしました。農薬は数多くあるため、せっかくのメリットが埋もれないように担い手直送規格だけをまとめたチラシを作成。素早く説明できるよう、シンプルな構成と価格メリットを分かりやすく示したチラシを使い、組合員への訪問時に提案を続けました。その際に福井課長が心がけたのが、個々の組合員にとってどれだけメリットがあるかを提示すること。チラシを渡した後に現在どの様な薬剤を使っているかをお聴きし、すぐに電卓を叩いて担い手直送規格に切り替えるとどれくらい価格が変わるかを計算。組合員が何町歩の水田を持っているかも聴き取って、最終的な差額もお伝えします。この様な分かりやすく丁寧な提案によって、JAひがしかわ管内では100以上の組合員に利用いただくまでに普及しました。これは道内でも随一の普及率となっています。さらに東川町管内の特長と言えるのが、未利用農家への広がりです。

JAの事業利用への切り口に

この様な提案は、普段はJAの農薬資材についてあまり関心のない組合員にも丁寧に進めています。福井課長は同じくチラシとともに電卓を使ってメリットを示します。価格低減ができるとなれば、関心を示してもらえるからです。

「もちろん農家組合員も理由があってそれぞれの薬剤をぞれぞれの供給元から買われていますので、その場はそのまま帰ってゆっくり検討いただきます」と配慮も忘れない福井課長。その後、一週間ほどしてからお伺いすると、相見積もりをしたり業者と交渉したりしていただけるようで、その中の何軒かはJAの農業資材に切り替えてくれる組合員もいます。

「もちろん提案した全てではありませんが、1/4ほどがこちらに振り向いてくれるというのは、メリットを感じて頂けるツールだと思います。今後も地道に提案していきたいです」

今後の展望

JAひがしかわ管内では水稲が盛んなため、「エンペラー」や「ベッカク」「アッパレZ」などの水稲除草剤の品目が普及しています。福井課長に、今後の担い手直送規格に望むことや考えをお聴きしたところ、「担い手直送規格全般の品目拡大を望みますが、特に水稲一発除草剤と併せて提案を行うことの多い水稲育苗箱施用剤のラインナップも期待します。また、剤型として道内はフロアブル剤を求める生産者が多いです。フロアブル剤が早く充実することを熱望しています。今後もさらなる提案を行い、組合員のコスト低減を目指したいと考えています」とのお答え。全農はこれらのご要望に応えられるよう、今後も品目拡大に努めていきます。

担い手直送規格普及は道内全域にも拡大中

道内全域での普及に取り組むホクレン・小川さん

道内全域での普及に取り組むホクレン・小川さん

北海道内ではJAひがしかわのように多くの地域で担い手直送規格を利用いただき、普及拡大が続いています。この流れを北海道全域に進めているのが、ホクレン農業協同組合連合会の肥料農薬部農薬課です。「ホクレンとしては、生産者のコスト低減、かつ、JAの配送作業負担軽減につながることから、担い手直送規格(道内では“直送大型規格”)の普及に向け今後も力を入れて取り組んでいきたいと考えています」と担当の小川夕希奈さん。たとえばホクレン旭川支所では、JAひがしかわ福井課長の取り組み事例を管内JA関係者が参加する会議で紹介してもらうなど、優良事例の水平展開などを行っています。


このような取り組みにより、北海道内での普及面積の拡大は続いています。2017年度に4品目から開始した道内の担い手直送規格も、21年度は32品目と普及面積が8,500haを越えるまでになっています。品目別では、特に「エフィーダ剤」などの水稲一発除草剤の出荷実績が拡大している傾向です。現在は水稲中心ですが、北海道は畑作、飼料作物が主となる地域も多数あります。近年、新規担い手直送規格として「ジェイエース」や「バスタ」などの園芸畑作品目も拡大してきていることから、畑作・酪農分野での品目展開も進めていき、生産者のコスト低減に努めるとともにさらなる北海道農業の発展を目指しています。


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