思わぬメリットも見えた 法人の担い手直送規格導入

岩手・JAいわて中央

岩手県紫波郡にある農事組合法人大巻農産を訪ね、代表理事の伊藤正之さんにインタビューを実施しました。コスト、使い勝手などのさまざまな面から、「担い手直送規格」に関しての率直なご意見を語っていただきました。

地域の農地を守り 次世代へ受け継ぐ―大巻農産

農業機械の共同利用

農業機械の共同利用

大巻農産では、現在70haほどの水稲を栽培しています。他に、麦やそばも少し手掛けています。はじめは、同地区のJAいわて中央の発足と同じ1999年に立ち上げた法人です。もともと地域の作業受託を担い、構成員は90人ほどでした。これまで、作業受託だけでなく、徐々に小作面積も増やしてきました。

地区の栽培面積のほとんどを大巻農産が担っていますが、作業者の高齢化、後継者不足などで年々厳しい状況になっています。今年産は特に、各地で米の価格も下がりました。私たちも、今後農業を続けられるのか考えてしまうほど大きな影響を受けました。しかし、先代、またそれ以前から代々受け継いできた土地を守るという使命もあります。この地区を次世代に引き継いでいくためにも、今の栽培面積を維持するよう努力しています。

担い手直送規格で資材費を抑える

 元々JAとは、「農薬の大型規格があれば欲しい」と話していました。当時既にかなりの面積を栽培していて、作業効率化は必須の課題でしたから。問題の一つが水稲除草剤で、袋をいちいち開封するのが、非常に手間に感じていました。そこでJAから提案があったのが農薬の10kg袋の大型規格で、大巻農産でもすぐに導入しました。

ところが数年前、やはりJAから「もっと大きな規格が登場した」という連絡をいただきました。当時使っていたのは「ガンガン」だったと思いますが、このときも、すぐに導入を決めました。資材費をさらに抑えられることに加え、うちは格納できる倉庫があるため、直接配達してくれるというメリットもありました。

それから現在まで、ずっと担い手直送規格農薬を使っています。今使っているのは「アッパレZ」で、品目は変わっていくかもしれませんが、担い手直送規格は今後も使いたいと考えています。

担い手直送規格の思わぬメリットとは

効率的な農薬処理

効率的な農薬処理

ところで、今水稲除草剤は担い手直送規格を使っていますが、水稲育苗箱施用剤は別の規格を使っています。担い手直送規格を導入し、水稲除草剤と水稲育苗箱施用剤で違う大きさの袋を使うことで、思わぬメリットがあることも分かりました。

それは、作業指示を出したときに作業者が間違えにくくなるというところです。農薬は、ラベルを読めばどんなものであるか分かるようになっていますが、その日その日で作業者も変わります。大巻農産には数十人もの作業者がいるので、似たような見た目の農薬がいくつもあると、万が一の間違いも起きかねません。

ただ、担い手直送規格は、袋が大きく、ぱっと見ですぐに区別できます。作業指示を出す指示者も、電話などで「除草剤は大きな袋のほう」という言い方ができますので、伝えやすくなりました。

今後も使っていきたい

担い手直送規格は価格も安いし、今後も使っていきたいと考えていますが、作業者の高齢化が進むと、今度は田植え機のホッパーに小分けで入れるのが難しくなってきそうです。じゃあどうするかというと、なかなか難しくて、すぐに答えは見つかりませんが、是非今後も改善をしていってほしいと思います。


担い手直送規格は、販売開始以来普及面積が拡大し続けています。東北地区においても、ここ2年で151%も出荷実績が増え、多くの方に購入・リピートしていただいています。高性能剤を割安に導入できるという利点の他、袋を開ける手間が減った、包装の廃棄物削減ができて良かった、という声も多いようです。


他の取り組み事例もご紹介します