TACによる水稲農薬担い手直送規格の推進提案で
農業経営を支援

佐賀・JAさが

農業大国佐賀県にあるJAさがでは、TAC(地域農業の担い手に出向くJA担当者)による水稲農薬「担い手直送規格」の提案が行われています。近年特に厳しい農業経営を支援する強力な提案メニューとなっています。今回は、佐賀市と諸富町(もろどみちょう)を管内にもつ佐城(さじょう)エリアのTAC福所誠(ふくしょ・まこと)さんに、佐賀における担い手直送規格の取り組みを伺いました。

TACによる担い手直送規格の提案

佐賀県の1/3を占める佐賀平野は九州一の大河・筑後川によって形成され、この広大な土地では、水稲をはじめとする土地利用型農業が盛んです。また水稲収穫後の麦や大豆、たまねぎといった裏作も盛んで、佐賀県の耕地利用率は140%にのぼり、全国一です。

JAさがは3エリア・6地区に分かれており、その地区それぞれに専任のTACが設置されています。これまでは、担い手に訪問して農業経営の課題を聴き取りその課題改善に取り組む専任TACと、営農部署や購買部署の担当者が訪問活動を兼務する兼任TACが混在していましたが、2020年度より経済事業渉外を中心とする農業経営支援全般を強化することを目的に県内のTAC専任化が進められました。

課題解決につながる取り組みが担い手に喜ばれていると語る福所さん

課題解決につながる取り組みが担い手に喜ばれていると語る福所さん

農業経営者に寄り添った提案

TACは日々の訪問活動によって、担い手ひとりひとりの営農上の悩みや課題を把握し、その課題を解決することを仕事にしています。JAさがのTACは担い手農家の経営に役立つメニューのひとつとして「担い手直送規格」を提案しています。

「全組合員へ配布する資材提案チラシだけでは、『担い手直送規格』のメリットはなかなか理解してもらえないと思います」と福所さんは話します。どの生産者がどれくらいの栽培面積で、どういった農薬をどれだけ使用しているかが分かるTACだからこそ最適なものを提案できるのです。 また、JAさがのTACは「担い手直送規格」の専用注文書を作成し、定期訪問先の担い手農家から直接注文を受けています。「昨年度の除草剤はコストも下がって良かった。また同じ薬剤があればいち早く紹介してほしい」と担い手農家からも好評です。

例年は栽培暦が決定すると、JAの購買担当者や営農指導員とともに担当地区の組合員を参集した座談会を企画します。「昨年度はコロナの影響もあって、例年実施している座談会が十分にできなかった。しかし、『担い手直送規格』は組合員の低コスト化になるメニューだからどうしても情報提供は続けたかった」と福所さんはコロナ禍でも情報提供を続けました。

九州の水稲農家は避けて通れないウンカとの闘い

ここ数年、九州全域で毎年のように豪雨や病害虫被害が発生しています。中には度重なる被害で経験したことのない減収や作況になっている地域もあると言われています。2020年は特にウンカによる被害が甚大でした。九州の水稲作ではウンカに卓効を示す「ピラキサルト」が入った、水稲育苗箱施用剤を使用することがスタンダートになってきています。

「毎年、担い手直送規格のラインナップが充実していくことは担い手農家に喜ばれています。『ピラキサルト』を含有する水稲育苗箱施用剤は、ウンカに対する効果が抜群で、その高機能がゆえに以前使用していた箱剤よりも高価になりがちです。しかし、担い手直送規格のスケールメリットを生かし、これまでの箱剤の標準規格の価格と同等で高性能な水稲育苗箱施用剤を導入することができました。これによりウンカ被害を軽減することができ、米の等級も下がらずに済みました。結果としてトータルコストが低減され、農家の手取り最大化につながりました」と福所さんは嬉しそうに話します。

クチコミの効果

これまで担い手直送規格を愛用していた生産者が、クチコミで「良い低コスト資材がある」と紹介することがたびたびあり、思わぬ結果に結びつくことも多いそうです。福所さんは「TACの強みはJAの関係部署と情報共有ができること。普段から担い手と深い付き合いがあるからこそ『JAには担い手直送規格がある』と生産者の間でクチコミが広がり、生産者からJA資材店舗への問い合わせが来る。ここでどの生産者から問い合わせがあったか、資材店舗担当者からTACに連絡が入る。TACが得意とする綿密な部門間連携によって、担い手の些細な情報も新たな顧客獲得や実績増につながっている」と語ります。


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