中山間地域でがんばる 「矢原一心ファーム」の取り組み

鳥取・JA鳥取西部

JA鳥取西部管内「矢原一心ファーム」(代表理事木山篤志さん)は、鳥取県西部の日南町にあり、島根県東部側と岡山県、広島県の県境に近い中山間地域の農事組合法人です。179圃場(ほじょう)(24.86ha)を管理し、10a未満の水田が61圃場(3.54ha)と全体圃場数の約34%を占め、分散圃場が多いなか水稲を中心に作付けしています。特別栽培米やもち米、湛水直播栽培など意欲的に取り組む木山代表理事にお話を伺いました。

経営規模拡大で水稲除草剤コストに課題

「矢原一心ファーム」では、以前より水稲除草剤のコスト削減について課題を抱えていました。様々な栽培品種に合わせて水稲除草剤を試験し、なるべく安価でかつ効果の高い商品を探していました。 これまでの水稲除草剤は1kg規格が主流で、作付面積が広がれば広がるほど購入袋数とコストも増えていきました。法人を設立した2015年の水稲作付面積は約13haでしたが、21年は約19haとなり、コスト削減に加え水稲除草剤散布の労力軽減という新たな課題も出てきました。

担い手直送規格との出会い

木山代表理事㊧のもとに届いた直送規格農薬

木山代表理事(左)のもとに届いた直送規格農薬

そんな中、日頃から付き合いのあるJAのTAC(地域農業の担い手に出向くJA担当者)担当者と全農職員から「担い手直送規格」の紹介を受けました。商品の特長から申込方法、納品まで丁寧な説明があり、JA栽培暦に掲載されている商品、かつ散布労力の面から田植同時処理が可能な商品を購入しました。

初めて作業場に納品された「担い手直送規格」を見たときは驚きましたが、中に10kg袋が5袋入っており、持ち運びは非常に楽でした。現在の規格の40kg規格(20kg×2)になっても軽トラックに積み込むだけなので難なく作業ができています。田植日までに散布する使用量を計算し、当日散布機に投入する際は、専用バケツと計量カップを用いることで効率良く作業を行っています。

コスト削減と除草効果アップに成功

JA・全農からの提案なので安心して使えると話す木山代表理事(左)

JA・全農からの提案なので安心して使えると話す木山代表理事(左)

継続して「担い手直送規格」を購入し、特別栽培米の水稲除草剤で2020年産では「キマリテ1キロ粒剤」を使用し、10aあたり708円の削減、21年産では新商品の「プライオリティ1キロ粒剤」を使用し、10aあたり517円削減することができました。また、田植同時処理後の5日間止水に努めることで除草効果も良くなり、非常に満足しています。

「担い手直送規格」は、生産者にとって有益な取り組みであると同時に、JAのTAC担当者と全農が提案することで安心して使用できます。今後、様々な商品が登場してくると思いますが、生産者は栽培体系や品種に応じて除草剤を使い分けています。田植同時処理の際に、散布機のダイヤルを除草剤に合わせて調整する必要がありますので、除草剤の粒径が各農薬メーカーで統一できれば、より生産者は安心して使用できると思います。今後JA、全農に対して生産者の要望を「かたち」にした除草剤の開発を期待します。


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