記者の目:本紙取材記者から見た夏秋トマトの課題と対策《生産技術》

昨今、温暖化による天候不順や、需要動向の変化による市場価格変動など、夏秋トマトにも課題が山積している。この状況にどう対応すればいいのか。本紙・営農生活部と農政経済部の取材記者それぞれの視点から解説する。

高温で生育障害多発・遮熱や遮光対策徹底を

日本農業新聞 営農生活部

地球温暖化で、夏秋トマトの栽培期間中に高温になる年が増えている。着花・着果不良や裂果、病害虫の多発など、高温はトマトの生育に悪影響を及ぼす。今後も高温傾向は続くとみられ、これまで以上に暑熱対策の重要性が高まっている。

トマトの高温障害として代表的な症状が、減収に直結する着花・着果不良だ。農研機構野菜花き研究部門によると、一般的に32、33度以上の高温が続くと花粉がダメージを受け、受粉しづらくなる。

農水省が都道府県の報告からまとめた「地球温暖化影響調査レポート」によると、2020年にトマトの着花・着果不良を報告した都道府県は17あり、前年より3増えた。同年の平均気温は全国的に平年より高く、6~11月の高温が影響したとみられる。同年は、高温によるトマトの不良果や生育不良、病害の多発、生理障害などの報告も目立った。

果実の花落ちの部分が黒くなる生理障害の「尻腐れ」も、品質低下の要因として問題になっている。同部門によると、高温で蒸散が促されるため、葉に水分が移動。果実への水分や栄養分の流入が少なくなり、カルシウム不足が原因で発生するという。

高温は、果実の裂果ももたらす。仕組みは解明されていないが、高温で果実の肥大が促される一方、果皮の成長が追いつかず、皮が裂けるとの見方がある。生育適温が高く、黄化葉巻ウイルスを媒介するタバココナジラミの発生地域の拡大も懸念されている。

一方、気候変動の影響で、今後も気温の上昇傾向は続くと予想されている。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は今年8月、世界の平均気温の上昇幅が今後20年間で1.5度に達する可能性を発表した。

トマトの栽培で利用される細霧冷房装置(埼玉県熊谷市で)
トマトの栽培で利用される細霧冷房装置(埼玉県熊谷市で)

こうした中、夏秋トマト栽培での高温対策はさらに重要になっている。既に多くの産地で遮光・遮熱ネット、循環扇といった資材の活用が進んでいる。地温の上昇を抑えるためのマルチ設置、摘葉による蒸散の抑制、摘果で着果負担を減らす対策なども行われている。

ハウス内で霧を発生させ、気化熱で冷却する細霧冷房も対策の一つ。温度低下だけでなく、湿度の上昇による蒸散の抑制にもつながる。その分、果実に水分・養分が行き渡るため、尻腐れ果など果実への影響も緩和される。

同部門施設野菜花き生産管理システムグループの礒﨑真英グループ長は、細霧冷房について「連棟ハウスなら、夏秋トマトを栽培する雨よけハウスなどでも一定の効果があるだろう」とみる。装置は、水の粒径が平均30マイクロメートル以下で、ノズルからのぼた落ちが少ない製品が望ましいという。

同部門では、ハウス内の温度や日射量などを基にしたトマトの収量予測の研究も進めている。高温対策資材の効果も予測の条件に加えられれば、資材の費用対効果の見極めに応用できる可能性があるとみる。

高温によるトマトへの主な影響についての都道府県からの報告数
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