記者の目:本紙取材記者から見た夏秋トマトの課題と対策《流通動向》
昨今、温暖化による天候不順や、需要動向の変化による市場価格変動など、夏秋トマトにも課題が山積している。この状況にどう対応すればいいのか。本紙・営農生活部と農政経済部の取材記者それぞれの視点から解説する。
夏秋トマトは近年、産地構成に変化がみられる。北海道、東北産で全国出荷量の4割を占める一方、関東や中部、九州などの高冷地産が存在感を高めている。首都圏の卸売会社は「気温上昇で品質が不安定となる産地がある分、高冷地産は比較的品質が安定しており注文が入る」と指摘する。
相場動向はどうか。卸売会社は「夏秋は安く秋冬は高い、というかつての印象は薄れつつある」と話す。各地区大手7卸のデータを集計した日農平均価格では、夏秋期は販売量が多い分、価格は低い。それでも「近年は低迷しがちな秋冬作と比べ、夏秋作は堅調」(同)との見方が強い。
総務省「家計調査」によると、2020年のトマトの一人当たり年間支出額は2792円。月別では300円前後となる5、6月をピークに、夏秋期の4~9月は平均して約270円。秋冬期10~3月の約190円より4割多くなる。
旺盛な消費を背景に、卸は「期間を通した需給バランスはかみ合っている」と分析。7月下旬から8月盆前の最盛期には供給過多となりやすいものの、「最盛期後から秋口にかけては増産の余地がある」とも話す。
野菜の中で不動の人気を獲得するトマト。タキイ種苗が発表した「2021年度野菜と家庭菜園に関する調査」の「大人が好きな野菜」ランキングでは、13年間で12度目となる1位を獲得した。
支持の理由は、「おいしいから」が88%と最多。「夏秋作は酸味、冬春作は甘味をより求める傾向差はあるが、1年を通じた良食味の安定供給は大前提」(卸売会社)だ。
注目は、2位「健康によいと思うから」(62%)、3位「栄養があると思うから」(43%)と、健康志向に基づく項目が並ぶ点だ。トマトの販売戦略を練る上で、「健康」の重要性がうかがえる。
健康を可視化した形として、生鮮品の機能性表示食品が増えてきた。トマトは10以上の届け出があり、野菜では最も多い。高めの血圧の低下、一時的な精神的ストレス・疲労緩和が期待できるガンマアミノ酪酸(GABA=ギャバ)、血中LDLコレステロール低下が期待できるリコピンなどの表示例がある。
「ウィズコロナ」の中、コンビニエンスストアも健康を訴求した商品を強化する。今夏には、パンの代わりにトマトで具材をはさむ変わり種商品「トマトバーガー」も登場し、人気を博した。サラダにスープ、ソース、飲料と用途が幅広く、機能性も打ち出しやすいトマトは、健康市場の中で重宝されそうだ。