産地紹介 

さんぶの夏ネギ

JA山武郡市 ネギ部会長 川島 勝彦さん

秋冬ネギ産地として知られる千葉県は、夏ネギの出荷量でも全国3位の大産地であり、2021年産の出荷量は6870トン。JA山武郡市管内では、秋冬・春取りの作型を中心としたネギ産地だが、初夏取りネギの導入でさらなる規模拡大を図っている。「さんぶの夏ネギ」や、近隣3JAで作る「九十九里ねぎ連絡協議会」のブランド「プレミアム夏ねぎ」で有利販売に取り組んでいる。

4月中旬~5月出荷分のみを「プレミアム夏ねぎ」として販売

夏ネギ面積10年で3倍

JA山武郡市ネギ部会の2022年産夏ネギを栽培する部会員は127人、栽培面積32ヘクタール、8月下旬までに16万ケース(1ケース5キロ)を出荷する計画だ。10年前に比べると、部会員は40人、栽培面積は3.1倍に増えた。

山武郡市、ちばみどり、長生の3JAは、「九十九里ねぎ連絡協議会」を組織し、夏取りのなかでも価格が高値安定している出荷端境期に当たる4月中旬?5月出荷分のみを「プレミアム夏ねぎ」とブランド化。シールや販売促進活動で市場関係者にアピールし、有利販売に結び付けている。

JA山武郡市では、夏ネギの価格が安定していることから、春ネギの生産者に終盤で品質が落ちる前に、夏ネギにシフトするよう勧めている。また、千葉県農業振興計画2016に基づき、農家所得向上に向けて、価格の良い夏ネギの新規生産者を募り支援している。

同JAでは、新規就農者や担い手支援策として18年から「農業塾(ネギ栽培編)」を運営。ネギ栽培に意欲のある生産者を支援している。ネギの栽培期間に合わせ、11月までに8回の講座を開く予定だ。

夏ネギの収穫作業

5~7月の3作型で作業バランス考慮

JA山武郡市ネギ部会で部会長を務める川島勝彦さん(61)は、2ヘクタールのネギ専業生産者。12年前、父の後を継ぎ就農した。以前は水稲と春ニンジンも栽培していたが10年ほど前、ニンジンの価格が低迷、JAの勧めもあって夏ネギに転換した。秋冬ネギ50トン、夏ネギ12.5トンを出荷する(10アール当たり収量は3トン)。

ネギ部会では3つの作型で栽培する(表)。5月中下旬に出荷する早出しの作型は、12月10日ごろ定植で2条トンネル。6月上旬からの出荷では12月20日ごろ定植で小トンネル。6月下旬から7月末出荷では、2月中旬からの定植で露地だ。川島さんは6月収穫からの2作型で栽培している。

就農初年度は40アールをトンネル栽培したところ、夏ネギの厳しさに直面したと川島さんは振り返る。「秋冬に比べ夏ネギは傷みやすいので、収穫は待ったなし。掘り取ったら、すぐに調製が必要だ。だから作業が重なってしまうと厳しい」。それからはバランスを考え、露地30アール、小トンネル10アールで作付けている。

また、夏場は温湿度が高く、病気も出やすい。特に軟腐病、白絹病が多発。秋冬より防除回数も多くなる。害虫ではネギアザミウマが多い。そして何より炎天下、暑さとの戦いとなる。

夏ネギは全長が短くなるため、土寄せ回数は秋冬の4、5回に対し、夏は3、4回と少なくなる。ただ砂を寄せ過ぎると傷みやすくなるので、注意が必要だ。それを踏まえ、夏ネギの軟白部の規格はLで25センチ、L以外は20センチとなっている。

品種はトンネル用2品種と露地用1品種がメイン。

機械収穫後は、皮むき機、根切り・葉切り機で調製し、箱詰めした段ボールとL等級はコンテナでバラ出荷する。JAの「やさいの里営農センター」で集荷し、L等級は作業員が結束して段ボール詰めする。

川島さんは収穫後、各圃場(ほじょう)を土壌診断し、結果を見て施肥設計。また連作障害回避のため、2年に1回は土壌消毒を実施している。

安定したネギ栽培に努める川島部会長
コンテナで集荷されたL等級のネギは、やさいの里営農センターで結束し出荷される

消費者目線で安定出荷目指す

川島さんは就農前、スーパーの店長だったことから、作物を常に消費者目線で見ている。「店先で葉の傷んだ作物を見ると悲しくなる」。それだけに、自身の作物にも厳しい目を注ぐ。

ネギ部会長として、「規格を統一して選別を徹底し、常に安定した品質のネギを出荷していく。他産地が創意工夫しながら励んでいる中、山武郡市ネギ部会も今の地位にとどまることなく努めていきたい」と前を見つめる。

コンテナに集荷された夏ネギ

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