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施設園芸ハウスの脱炭素化のために

―ヒートポンプの利用方法の改善による効率化―

国立大学法人千葉大学環境健康フィールド科学センター
特定非営利活動法人 植物工場研究会
関山 哲雄

 園芸施設における暖房は、周年生産のために不可欠な技術ですが、脱炭素化のために2030年までに化石燃料を用いる暖房方式の約半数(2013年度比)を、2050年度までに二酸化炭素(CO2)ガスを排出しない方式に転換することが求められています。そのためにまず考えられるのが「ヒートポンプ」の活用です。ヒートポンプは、40年以上前から多くの関係者から省エネ効果が高いと注目されてきましたが、これまでのところ十分な機能を発揮していないこともあって普及率は5%程度と言われています。当研究会では、有識者による「農業用ヒートポンプ分科会」を設置し、2013年から2018年にかけて効率改善対策や実証実験などの総合的な検討を行ったところ、ランニングコストをこれまでの油だき暖房機(燃油代70円/リットル)の場合と同等な技術開発の可能性が得られたのでご紹介します。

改善策①/設備容量と台数などによる出力調整を行うこと

 ヒートポンプは、外気温と負荷率(=必要とする熱量/ヒートポンプの最大あるいは定格能力)の2つの使用条件の影響が大きいことが報告されています。ハウスの暖房用として使用する場合、外気温が低い時と低負荷時にエネルギー効率が低下することが分かりました。対策は、設備容量を外気温の変化に合わせて高い負荷率にする。もしくは、稼働台数を調整することです。

改善策②/氷結対策としての稼働を抑制すること

 現地では図に示したように、外気温が5~7度ほどで氷結対策としての稼働が見られ、ハウス内気温が暖房設定温度以下になっても、断続で稼働しています。これによってエネルギー効率は半減近くに低下します。対策は、ヒートポンプの半数を温湯出力型として昼間稼働させ温水として蓄熱し夜間に利用することです。ただ、太陽熱を利用するなど、昼間の蓄熱を夜間補助熱源として利用している場合は、その設定温度以下の残熱を活用することで対策ができます。

 実際に、試算結果からも氷結対策としての昼間の稼働、蓄熱する方法を加えることで、油代70円/リットルの場合と同等のランニングコストに抑制できる可能性を見いだしました。また、電力の負荷率が平準化され基本料金が半減される効果も示されそうです。

 今後の園芸施設の脱炭素化のためにヒートポンプの活用は必要です。ただ、ヒートポンプを普及・拡大するためにはエネルギー効率の改善が不可欠です。植物工場研究会では、現在検討中の方式を中心にさらに実証してまいります。

 なお、農業電化協会の機関誌「農業電化」本年3月号に、本研究について詳述しております。詳しくは、同協会(03-6202-7039)へお問い合わせください。

図 氷結対策稼働例(福島県)

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このページの情報は、日本農業新聞(2022年3月28日)に広告企画で掲載したものです。

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