産地事例 働き方改革

働きやすさ高め 子育て世代を働き手に

栃木県/絹島グラベル

栃木県宇都宮市の絹島グラベルは、54アールのハウスで冬春トマトを栽培する。労働力は経営者夫妻とパート従業員5人。最優先するのは従業員の働きやすさだ。パート従業員は全員子育て中のため、シフトや休みには融通をきかせ、働きやすい労働環境を整える。品種選定のポイントも、労働力の分散を担保する収穫適期の長さ。経験値に応じて肩書を与え報酬にも反映、意欲を高めている。

働きやすさを最優先する長嶋さん(撮影のためマスクを下げています)

水・養分制御に最適な砂地

鬼怒川の河原にあたるハウスの土は、土壌診断で保肥力を示す塩基置換容量(CEC)がJAで測定できる最下限。砂利のような栄養分が保てない土だった。しかし絹島グラベル代表の長嶋智久さん(43)は、「トマト栽培には逆に良い。水や養分をギリギリで作る『しめづくり』には最適」と自負する。養液土耕栽培だが、いわば天然の隔離ベッドのようなもの。ここに15棟54アールのハウスで、中玉を中心に栽培している。

JAうつのみやのトマト研究部に所属し、海外の中玉品種をメインに一部国産品種を栽培。今年は14品種だったが、来年は半分ほどにする予定だ。平均して5~6年で更新していく。昨年あたりから黄化病が出始めたため、独自に耐病性を見て次作の品種を選ぶという。

「働き続けたい」と言い切るパート従業員

働きやすさ重視 品種選びも

長嶋さんが品種選択で重視するのが、“収穫適期の長さ”と“栽培管理のしやすさ”だ。登熟してから1週間程度は、ぶら下げておけること。海外の果皮が厚めの中玉品種がメインの理由は、そこにある。すべては労働力を平準化し、従業員に過重な負担を掛けず、働きやすい労働環境を提供するという絹島グラベルの方針だ。

現在の労働力は、長嶋さん夫妻のほか、パート従業員5人全員が子育て中の女性だ。6年継続勤務している人や、産休で一度離れ復帰した人、最短の人でも3年目になる。

こうした子育て世代の働き手を労働力にする場合、最も求められるのは柔軟な勤務体制だ。子どもの急な体調不良などの突発的な対応で、欠勤や遅刻早退などを余儀なくされることもある。

絹島グラベルでは、従業員の事情に応じて就業時間を柔軟に設定できるフレックス制を導入。冬時間は午前7時45分から午後2時半。夏時間は各30分前倒しで設定。この間に従業員が始業・終業時刻や労働時間を決められる。

また原則、土、日、祝日は休み。収穫が集中しがちな休み明けの月曜は、従業員の負担を避けるため出荷をやめた。

従業員には「リーダー」「サブリーダー」など経験値に応じた役職を与え、報酬にも上乗せして意欲を高める。年2回、面談の場を設けている。小学生と中学生の子どもを持つ従業員は、「子どもの夏休み期間は休ませてもらったり、急な休みにも融通を利かせてもらっている。これからも働き続けたい」と言い切る。

従業員にはすべて役職や役割が与えられる

スマホで労務管理

労務作業は従業員がスマートフォンのアプリに、作業内容と開始から終了までの時間を記録。これを長嶋さんがパソコンで管理する。またスマホアプリに、選果基準や方法、病害虫情報などをアップし共有する。このように業務に個人のスマホを使うため、別途手当を支払っている。

ユニークなのは、作業中の従業員への連絡手段がトランシーバーを使うこと。連絡内容は全員に聞こえるため、一度に情報共有できるのが利点だ。

節油対策に地下水利用

節油対策として、ハウスに「ウオーターカーテン」を設置している。これはハウスの外張りフィルムと内張りカーテンの隙間に地下水を散布し、保温効果を高めるもの。地下水の水温は通年15度を保つため、外気温が氷点下でもハウス内は8度を下回らない。補助暖房機の燃油消費量も、通常の1、2割程度という。

長嶋さんは、「今は我慢のとき。アンテナを高くし新たな情報を仕入れ、時代に合わせて変化していきたい」と展望する。

甘酸バランスのいい中玉トマト。「ウマロッソ」と名付け直売所でも販売

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