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新規就農者の力引き出す“育成先進地”

静岡県・JA伊豆の国 果菜委員会

 静岡県のJA伊豆の国管内は、ミニトマトの出荷量が県内6割のシェアを持つトップ産地。同JAの果菜委員会に所属する56人が生産に当たる。実はこのうち55人が異業種から新規就農した「ニューファーマー」。平均年齢も40代後半と活気のある産地だ。新規就農者でもすぐに経営を軌道に乗せる支援体制で、新規就農者100%の定着率を誇る。

就農者積極的に受け入れ

 JA伊豆の国は、果菜委員会の56人の生産者が14.2ヘクタールの栽培面積で、1830トンのミニトマトを出荷する県内トップ産地。しかし30年ほど前は、高齢化や担い手不足が深刻で、新規就農者ゼロが10年も続くなど、産地として危機的な状況だった。

 これを解決したのが、1993年に静岡県が始めた「ニューファーマー研修制度」。全国から就農者を募る同制度だが、同JA管内は果菜委員会がその研修生受け入れを担った。

 希望者は北海道や東京などからも訪れ、前職も銀行員や製造業、公務員、システムエンジニアなどさまざま。適性を見て受け入れる。

 一方で、新規就農に必要な「土地、技術、資金、販路」は、JAと行政などで組織する「JA伊豆の国ニューファーマー地域連絡会」とも連携した支援体制を整えており、ニューファーマーは技術研修に専念できる。

 同制度は現在「がんばる新農業人支援事業」という名称で継続しており、県全体でトマトやイチゴなどの生産に年間25人ほどの新規就農者を受け入れている。研修期間中は、研修手当が支給される。また資金面では、研修中に就農計画書を行政に提出し認定新規就農者としてスタートできるため、日本政策金融公庫の青年等就農資金を3700万円まで無利子で借りられる。

独立するまでシステム化

 果菜委員会委員長の井上俊夫さん(63)も同制度で2008年に新規就農した一人。商社勤めから心機一転、50歳を機に第2の人生を農業に求めた。現地視察会に参加し、在住していた横浜にほど近い静岡でのミニトマト栽培に狙いを定めた。面接では体力面を懸念されたが、趣味のマラソンをアピールし無事合格。合格率2、3割の難関をくぐり抜けた。

 まずは家族を置き単身で借家住まいしながら、受け入れ農家で研修。1年の研修期間中に土地探し、施設建設が並行して進み、研修終了後は苗も供給され、すぐに就農できるためロスがない。また全量JA出荷なので、収入面でも安心して栽培に専念できる。研修中に提出する就農計画書は、JAや受け入れ農家から教わりながら完成。無事、認定新規就農者となり就農資金も確保できた。

 新規就農者にとっての不安要素が極力取り除かれ、農家として独立するまでがシステム化されているところが、“育成先進地”といわれるゆえんだ。

 井上さんは、今は約20アールの4連棟の鉄骨ハウスで高品質なミニトマトを栽培している。

講習会開き技術を向上

 栽培技術向上のため毎年、講習会を実施。昨年は県東部農林事務所が主催したトマトセミナーで、デルフィージャパンのコンサルタントを招き環境制御を学んだ。

 また生産者のほとんどが土耕のため、青枯病や土壌病害対策が課題となっていることから、後藤逸男東京農大名誉教授を招き、青枯病対策講習会を継続的に実施している。後藤先生が生産者のハウスを視察し指摘した処方を、「Slack」という情報共有アプリにアップし、部会員の栽培技術向上に役立てている。

「骨を埋める覚悟」で

 産地では「伊豆ニューミニトマト」のブランドで出荷しているが、食味が良く、JAの最終出荷場できちんと規格ぞろえされることから、割れやカビなどの不良品がほとんどないのが自慢だ。

 井上委員長は、「新規就農者は皆、故郷を離れ、ここに骨を埋める覚悟で来ている。素人から始めているので、真面目に必死になって技術を高めようとしている。ぜひ、手に取って味わってもらいたい」と思いを語る。

果菜委員会の井上委員長
果菜委員会の井上委員長
果菜委員会のメンバー
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食味の良い「伊豆ニューミニトマト」
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後藤東京農大名誉教授の講習会
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スマートフォンで情報共有アプリ「Slack」を確認する
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「Slack」の画面
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