【産地レポート】熊本県
トマト王国 黄化葉巻で対策
JAたまな 中央集荷センタートマト部会
部会長 倉野尾 英樹さん
トマト王国、熊本県。JAたまな中央集荷センタートマト部会は、部会員138人、作付面積58.8ヘクタール、「麗容」を中心に栽培する。2019年産は出荷量1万750トン、販売金額28億8000万円。20年産は7月上中旬まで収穫するが、10アール収量は18.5トンを見込んでいる。
スローガンは「たまな」の頭文字を取り、「丹精込めて まごころ込めて 納得のいくトマトを」に決めた。
部会員のほ場は、ほぼ土耕で作の初めに土壌還元消毒や太陽熱消毒を徹底し、土づくりをしっかり行う。根張りが良く病気にかかりにくい強い樹を目指している。
かつては全滅の危機 今は2、3%に
わが国のトマト栽培は、四半世紀にわたり黄化葉巻病に悩まされている。トマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)によって引き起こされるため、媒介するタバココナジラミ対策が肝要だ。
JAたまな管内では同病が猛威を振るった一時期は、全滅の危機にひんしたこともあった。これを踏まえ生産部会、県、JAなどが03年から、タバココナジラミを「入れない」「増やさない」「出さない」に加え、「つながない」をスローガンに防除対策を進めている。その結果、今年の同病の発生は2、3%に抑えられている。
基本を忠実に スローガンを励行
具体的な取り組みは次の通り。
「入れない」対策として、ハウス開口部に防虫ネットを設置。定植時期にフィルム展張。ハウス周りの除草の徹底─など。 「増やさない」対策は、粘着シートで捕殺し、発生予察して防除。県と地域の防除暦を作成─など。
「出さない」対策は、防虫ネットで被覆し外に出さない。作の終わりには植物体をすき込む。ハウス内を密閉し高温にして死滅させる─など。
「つながない」対策は、地域で作型の統一を図り、1カ月以上の栽培休止期を設ける事で感染植物をなくす─など。
JAでは、殺虫剤の特性と害虫世代間で同一薬剤を散布しないための「ブロック式ローテーション」、散布薬剤の残効などを考慮し、野菜振興協会玉名支部が作成した防除暦を、毎年更新している。
また種苗の選択などの耕種的防除や天敵昆虫による生物的防除など総合的に対処している。
倉野尾英樹部会長(55)は、「全国的にトマトの作付面積が拡大されてきた。生産者の技術が上がり収量が向上している中で、トマトの需給バランスが崩れかけている。消費者が求めるトマトづくりを試行錯誤していく」と前を見据える。