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トマトの安定供給に向けて生産現場が取り組むこと

千葉大学 学術研究・イノベーション推進機構 特任教授 中野明正

1 未来のトマトを予測する

Q トマトの生産環境はどうなるのでしょうか?
A 生産では「労働」「エネルギー」「環境制御」の3つがポイントとなる。まず、労働力不足への対応である。スマートフォンなどを活用した労務管理の情報通信技術(ICT)化による合理化が普及する。次に、トマトの主力は施設生産であるが、エネルギーに依存した生産体系という本質が問われている。既存施設のメンテナンスと徹底した省エネルギーへの取り組みが必須となる。長期的に見ると脱炭素の流れが加速される。旧来の化石燃料に依存した暖房によるトマト生産が、今後も社会的に受け入れられるか危惧される。省エネルギーの取り組みに加え「脱石油」など、今までにないようなパラダイムシフトを施設園芸でも起こす必要がある。最後に、環境制御であるが、高温化するハウス環境の制御が急務である。トマトに対してそして、熱中症など労働環境に対しても同様である。
Q トマトの消費はどうなるのでしょうか?
A 消費では「簡便化」については、既にトレンドとして表れているが、今後はさらに、「安心」への消費が伸びる。特に、有機栽培などへの取り組みが求められる。これについては、バイオスティミュラント、ロボット除草など、化学合成農薬に依存しない生産へのシフトが加速化する。日本においても、有機農業の生産面積を大幅に増加させるとの政府の方針も追い風となる。トマトは施設生産が多く有機農産物は少数派であるが、このような社会の大きなトレンドに無関係ではいられない。
Q もっと先の未来のトマトはどうなるでしょうか?
A 生産は収量予測も組み込まれた統合環境制御で無人化され、生産効率が最大化される。収量は日本でも10アール当たり100トン超えも出てくる。労働環境ではロボット収穫と運搬=写真=が主流となる。品質面では、良食味、“カスタマイズ”トマトが主流となり、生産履歴も同位体比(有機栽培などの目印となる、微量に含まれる元素の指標)などが導入され科学的に検証可能なシステムが利用される。このような多様な情報が生産物にひも付けされ、データ駆動型の生産・流通体系がトマトを先頭に実用化されるだろう。

2 今、安定供給に向けて取り組むべきこと

Q より品質向上が求められ、環境制御やそのための資材が必要でしょうか?
A 生産者の取り組みについて、やはり品質の向上は求められ、そのために多様な環境制御を使いこなす必要性が出てくる。まずは施設環境の「見える化」から取り組みたい。自己の経営の「改善」のためにも、仲間との議論のためにも、週ごとの収量の推移と環境データの突き合わせは必須となる。一方で、さまざまな技術があるが=図=、導入効果はせいぜいプラス10~30%と見積もって費用対効果を厳密に評価し「技術貧乏」にならないように取り組む。一方で環境制御を推進する経営者は「総合力」のメリットを発揮する。図に示すような「植物」「環境」「病害」を制御して総合力で安定多収を達成する。
Q より低価格と手軽さが求められているようです。効率よく低コストで安定供給を目指せるのでしょうか?
A 消費者のニーズへの対応について、商流を見ると、低価格というよりも、価格安定により重きが置かれる。手軽さについては、やはり調理の手間などが省ける点もあり、ミニトマトなどの商材が今後も伸びていく。オランダで主流である「房どりトマト」なども消費が伸びると予想される。日本らしい良食味の房どり品種が普及すると消費も変わる。 「効率良く低コストで安定供給」というのは究極の目標である。これには生産から流通までの一連の流れ(フードチェーン)で制御する。持続可能な開発目標(SDGs)で示される社会的要請もフードロスゼロなどの目標として対応を意識する。

参考文献:槇晋介、2020、野菜データの「見える化」、農林統計協会 

図:管理工程ごとの改善の積み重ね
実用化段階に入ったトマト収穫ロボット(提供:パナソニックプロダクションエンジニアリング)
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