北海道は、人や家畜に対するヒグマ被害が昨年多発したことを受け、残雪期の春に狩猟者を出動させて、ヒグマを捕獲する市町村への財政支援を新たに始める。農業現場では、乳牛を相次いで襲った通称「OSO(オソ)18」のようなヒグマが再び出現することへの懸念は根強い。狩猟者の出動経費などを助成し、熊の人里への出没抑制と人、家畜の安全確保に加え、次世代の狩猟者育成を目指す。
道によると、2023年度の道内のヒグマ被害者数は12月までで9人。うち2人は死亡している。被害者数は記録のある1962年度以降で2番目の多さだ。農業関連の被害規模は集計中だが、「OSO18」によって乳牛が殺されたり、飼料用トウモロコシが食い荒らされたりした被害が見付かっている。
道内の農家には「第二のOSOが出現するのではないか」(道東の酪農家)と懸念する声が多く出ている。
道は「冬眠明けの春以降も警戒しなければならない。安全確保のためにも個体数を管理する必要がある」(ヒグマ対策室)と判断。2023年度の追加補正予算で「春期管理捕獲支援事業」に1500万円を確保。近く申請を受け付ける。
狩猟者の日当や捕獲時の報酬に加え、経験の浅い狩猟者への事前研修や指導者の派遣経費などを半額まで補助する。
道は22年度から「春期管理捕獲」として1990年以降規制されていた残雪期の捕獲を開始。「ヒグマに警戒心を植え付ける」(同室)ため、人の生活圏からおおむね10キロ以内の区域で、親子連れの捕獲や冬眠中の個体を捕殺する「穴狩り」を認めており、23年度は、実行する市町村の経費を補助することにした。
人材育成も視野に入れ、同10キロ以上離れた区域では、ベテラン狩猟者と経験の浅い狩猟者が一緒に行動するよう求めている。
熊による被害が各地で相次ぎ、農家を含む地域住民の身の安全や財産を脅かしている。熊の暴威に直面した現場の肉声から、被害続出の背景を探った。