[どう変わる?基本法]⑤農村振興 「地域社会の維持」が柱
現行の食料・農業・農村基本法は、農村が「農業の持続的な発展の基盤」としての役割を果たすと規定する。だが、現行法の制定から四半世紀の間に人口減少や高齢化は進み、農村の存続が危ぶまれている。このため、改正案は「地域社会の維持」を基本理念に加え、地域ぐるみの共同活動の推進や、関係人口の拡大などの施策も位置付けた。
現行法は、基本理念で、農村が食料の供給機能や多面的機能を発揮するため、生産条件や生活環境の整備が必要と規定する。改正案では、これらの理念に加えて、人口が減少しても農村の「地域社会が維持」されるよう、対応が必要とした。
農水省は、中山間地域の農村人口が基本法制定前の1995年と比べて、2040年には半数に減ると推計。30万~70万ヘクタールほどの農地で、営農の継続が困難になるとみる。
このため、44条に新たに農地保全に関する「共同活動の促進」を規定。水路の泥上げなど、地域の共同活動を支援する多面的機能支払いを改めて位置付けた。
さらに45条には「関係人口の増加」を規定。中山間地域振興を定める47条には、農村型地域運営組織(農村RMO)による地域社会維持を念頭に「生活の利便性の確保」を追加した。
他にも、農福連携(46条)やジビエ(野生鳥獣の肉)の利用促進を含めた鳥獣害対策(48条)、農泊推進・二地域居住(49条)を明記。すでに補助事業などで進めている農村関連施策を網羅した。
だが新機軸は乏しく、衆院では農村政策の議論は少なかった。野党からは、条件不利を補正する中山間地域等直接支払いや多面的機能支払いを含め、直接支払の抜本強化を求める声が上がる。
(北坂公紀、本田恵梨、松本大輔、宮本卓が担当しました)