[どう変わる?基本法]③環境との調和 世界的な規制視野に
地球温暖化など環境問題が深刻化する中、政府が食料・農業・農村基本法改正案で、新たな基本理念に位置付けたのが「環境との調和」だ。燃油の利用による温室効果ガスの排出など、農業が環境に与える負の面に着目し、環境負荷低減への対応が必要と明記。具体策として坂本哲志農相は、衆院の審議で新たな環境直接支払制度の導入を表明した。
現行法は、農業が持つ多面的機能として国土や自然環境を保全する役割を評価してきた。改正案では食料安全保障の確保に次ぐ第3条に「環境と調和のとれた食料システムの確立」を位置付け、食料供給が「環境に負荷を与える側面がある」と明記した。
背景には、世界的な環境規制の流れがある。日本も2022年に環境との調和を掲げる「みどりの食料システム法」を施行。今回、基本法改正案も足並みをそろえた形だ。
環境負荷低減に向けた基本的な施策は32条で位置付けた。農薬・肥料の適正な使用や、家畜排せつ物の有効利用など「必要な施策を講ずる」と規定した。
4月3日の衆院農林水産委員会で、坂本農相は、環境負荷の低減が「待ったなし」だと強調。27年度を目標に、環境負荷低減に取り組む農家を支援する新たな直接支払制度を導入すると表明した。今後は財源の確保や支払単価、交付対象をどうするかが焦点。多面的機能の発揮といった既存政策との関係をどう整理するかも課題となる。
一方、消費者の役割を定める14条では、消費者が環境に配慮した食料の「選択に努める」と明記する。野党からは、環境配慮などの費用がかさみ価格が上昇すれば「(消費者が)安心して買える価格ではなくなる」との指摘も出ている。