「価格形成」国が一定関与
今改正の柱の一つが「食料安全保障の確保」だ。現行法の「食料の安定供給」に代えて、基本理念の筆頭に位置付ける。世界的な人口増や気候変動、ロシアによるウクライナ侵攻などを背景に、食料の調達リスクが高まっていることを踏まえた。
2条で、食料安保を「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態」と定義。買い物困難者の問題も政策の範囲に入れた。
基本理念には、人口減による国内の需要減に備えて輸出も規定。価格形成を巡り「持続的な供給に要する合理的な費用」を考慮することも明記した。
1999年制定の現行法は、それ以前の価格政策から所得政策への転換を図り、価格は市場に委ねた。今回の改正案は需給と品質評価を反映した価格形成を重視しつつ、費用の明確化などで国が一定に関与する方針も盛り込む。生産資材高騰対策と合わせて、農業経営安定につなげる狙いだ。
野党や有識者は、物価上昇局面で価格転嫁を打ち出せば消費者の理解を得るのは難しいと指摘。所得補償など生産者への直接支払いの充実を求める声も上がった。政府・与党は需要に応じた生産を妨げるとして否定する。
改正案は環境との調和も柱とする。現行法は国土保全など農業の「多面的機能」を重視したが、改正案は農業の環境負荷にも着目。地球温暖化などを踏まえ、生産現場や食品産業に負荷低減を促す。
その他、農家の急減を踏まえ、担い手以外の「多様な農業者」による農地の確保やスマート技術の活用促進を規定。食料安保の状況を多角的に評価するため、食料自給率以外の目標を定めるとする。
