<ことば> 和牛甲子園
就農意欲の向上や、高校生同士のネットワークづくりを目的に、JA全農が主催する。1月に開かれた大会には、過去最多となる25道府県41校が出場した。
「肥育農家っていいな」(総合優勝・鹿児島県立鹿屋農高)
飼料高などで子牛価格が下落する中、「今こそ地域の未利用資源の活用で自給率を高めることが重要」と訴え、竹の有効利用に挑戦した鹿屋農高。枝肉の評価は「他の共励会のチャンピオンに劣らない」と絶賛され、出場7回目で初の頂点に輝いた。
「鹿児島黒牛研究部」の文字が刺しゅうされたそろいの服を着て、5人で上がった受賞インタビューのステージ。同高の森元陽哉さん(17)は全国の牛児を前に、「日本一の和牛農家になります」と力強く宣言。門原真央さん(17)は「世界一になります」、浦崎聖斗さん(17)が「宇宙一になります」と追いかけ、会場を沸かせた。
主要メンバーは全員2年生。1年時は同じ寮で過ごし、クラスも一緒という5人は、牛を中心に共に過ごす日々の中で、優勝の原動力となったチームワークを培ってきた。
入学後、ゼロから牛について学んだという長嶺葉月さん(17)は「休み時間にも牛のことを語って、教えてもらって、知識を培えた」と仲間に感謝する。山口蒼真さん(16)は「出荷まで見送って、最後までやり遂げられたという達成感を感じた。やっぱり肥育農家っていいなと思えた」と目を輝かせる。
「地域にある資源だけで牛を育て、鹿屋100%の和牛肉を食べたい」。和牛と向き合う日々の中で、いつかかなえたい夢もできた。
「愛情誰にも負けず」(取組部門最優秀・岐阜県立加茂農林)
飼料用米の活用で生産費を削減しつつ、スマート機器を活用した体調管理で牛を健康に育て上げ、取組評価部門の最優秀賞を獲得した加茂農林高校。3年の秋田凪生さん(18)は、出品した大好きな牛の「琥珀」と「ふくはれ」に、「誰よりも愛情を込めてきた」と胸を張る。
牛たちの命と向き合う日々は、「かわいい、楽しいだけではやっていけないことも多かった」(同高3年の橋本美桜さん)。それでも、最初は懐いてくれなかった牛たちが、ブラッシングするごとに距離を縮めてくれるようになり、愛情は増していった。
岐阜県が誇る「飛騨牛」として、2頭の枝肉を出品した和牛甲子園の共励会では、県内の仲間が一丸となり、拍手とかけ声で一緒にせりを盛り上げてくれた。「チーム岐阜」の一体感を感じ、その一員として「飛騨牛」を育て上げられたことに、うれしさと誇らしさが込み上げた。
先輩の取り組みを引き継ぐ2年の渡邉煌さん(17)は、「(2032年の)岐阜全共には自分の牛を出品したい」と夢を描く。