![※[農政の憲法]](/media/2024/03/22/l/20240322_gzznqkk5dcc3p9qrxzvz.jpg)
一般的に「基本法」は国の政策の基本方針を定める法律だ。その分野の他の法律や施策は、基本法の方向に沿って設計される。
農業分野で初の基本法は、1961年制定の農業基本法だ。高度経済成長で農業と他産業の所得格差が広がる中、農業従事者の所得増大を目標に掲げた。

一方、ガット・ウルグアイラウンド(多角的貿易交渉)農業合意を経て、世界貿易機関(WTO)農業交渉の開始に備える中で、99年に制定されたのが現行の食料・農業・農村基本法だ。政府が米価などの決定に関与する従来の「価格政策」から、所得を支える「所得政策」に転換し、価格形成は市場に委ねた、とされる。
今回の改正では、生産資材費や人件費が高騰する中で、再び価格に着目。生産コストの農産物価格への転嫁を目指す規定を盛り込んだ。岸田文雄首相は国会審議で、適正な価格形成の仕組みづくりへ「法制化も視野に検討していく」と表明した。
食料安全保障に次いで、新たに基本理念に加えたのが「環境と調和のとれた食料システムの確立」だ。地球温暖化など環境問題の深刻化を踏まえた。
食料自給率の位置付けも変わる。これまでの基本法では、食料・農業・農村基本計画で定める目標として、自給率目標を唯一明記。国内農業の向かうべき方向性を示す「指針」と位置付けていた。一方、改正後は自給率を数ある目標の一つとする書きぶりとなっており、「指針」の文言もなくなった。
現行基本法が重視してきた担い手以外の「多様な農業者」の役割を初めて位置付けた。
基本法が目標に掲げた食料自給率は99年度にカロリーベースで40%だったが、直近の22年度は38%に低下。生産額ベースでは72%から58%に下がった。30年度までに、それぞれ45%、75%に引き上げる政府目標との開きは大きい。
